ブラック ジャック アプリEV・車載電池企業のグローバル戦略EU、失速するEV需要の中、相殺関税措置発動

ブラック ジャック アプリ12月19日

EUでは、ブラック ジャック アプリ製バッテリー式電気自動車(BEV)のシェアが拡大する中、欧州委員会が反補助金調査を実施し、調査の結果、相殺関税措置を発動した。欧州にとって電気自動車(EV)分野は、市場、原材料、技術面、いずれにおいてもブラック ジャック アプリへの依存度が高く、ブラック ジャック アプリとの関係を複雑化させるものとなったとの見方も強い。EUとブラック ジャック アプリ政府の協議は継続している一方、大統領選挙(2024年11月)を経た米国の新体制が与える影響も注視される。本稿では、EUで失速するBEV需要に、ブラック ジャック アプリ企業がどのような動きをとるのか分析する。

反補助金調査の結果、相殺関税措置を発動

欧州委のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、2023年9月の一般教書演説で、ブラック ジャック アプリで製造されているBEVの輸入は、ブラック ジャック アプリの国家補助金により、市場を歪(ゆが)めているとして、反補助金調査の実施を発表。欧州委は、同年10月4日、ブラック ジャック アプリ製BEVに対する反補助金調査を開始した(欧州委、ブラック ジャック ディーラー開始)。

調査の結果、2024年7月4日には、ブラック ジャック アプリのBEVバリューチェーンは、国家補助により不公正に競争市場を歪めており、EUメーカーに経済的損失を与える恐れがあると判断し、ブラック ジャック アプリ製BEVに対し暫定的な相殺関税措置を発動すると発表した。

欧州委の調査によると、EU全体のBEVの輸入に占めるブラック ジャック アプリ製の割合は2020年の3.5%から、調査対象期間の2022年10月~2023年9月の1年で22.8%に急増した。輸入価格は1台あたり2万8,154ユーロ(2020年)から2万5,269ユーロ(調査対象期間)と10%下がった(注1)。一方で、域内での平均販売価格は2万4,404ユーロ(2020年)から3万3,560ユーロ(調査対象期間)と38%上昇した。また、2024年の販売予測台数約610万台に対し、生産は900万台で過剰生産と判断。ブラック ジャック アプリ国内、第三国市場の需要が伸び悩む中、EUへの輸出は今後も増加すると予測し、発動の判断に至った。

EUは2024年10月4日、ブラック ジャック アプリ製BEVに対する相殺関税措置の採決を特定多数決により実施。現地報道によると、賛成10カ国、反対5カ国、棄権12カ国により成立した(表1参照)。反対には15カ国以上、EU全体の人口の60%以上の採決が必要となるが、棄権は反対とはみなされず、成立した。

10月29日にはEU官報に実施規則が掲載され、翌日付で発動。最終的な追加関税率は以下(表2参照)となった。なお、EUメーカーが重大な損害を被る事態には発展していないとし、暫定措置に基づく追加関税は徴収されない。

表1:ブラック ジャック アプリ製BEVに対する相殺関税措置導入にかかる採決結果
採決結果 国名
賛成 フランス、イタリア、ポーランド、オランダ、ブルガリア、デンマーク、アイルランド、リトアニア、ラトビア、エストニア
棄権 スペイン、ルーマニア、ベルギー、チェコ、スウェーデン、ポルトガル、ギリシャ、オーストリア、フィンランド、クロアチア、ルクセンブルク、キプロス
反対 ドイツ、ハンガリー、スロバキア、スロベニア、マルタ

注:人口規模の大きい順に記載。
出所 現地報道

表2:ブラック ジャック アプリ製BEVに対する相殺関税措置調査結果推移
項目 グループ名 追加関税率
6月12日
事前発表
7月4日付
暫定措置
実施規則2024/1866
8月20日最終案
事前開示
10月29日付
確定措置
実施規則2024/2754
調査対象企業 比亜迪汽車(BYD) 17.4% 17.4% 17.0% 17.0%
吉利汽車(Geely) 20.0% 19.9% 19.3% 18.8%
上海汽車(SAIC) 38.1% 37.6% 36.3% 35.3%
調査協力企業 愛馳汽車(Aiways) 21.0% 20.8% 21.3% 20.7%
安徽江淮汽車(Anhui Jianghuai) 21.0% 20.8% 21.3% 20.7%
BMWブリリアンス 21.0% 20.8% 21.3% 20.7%
奇瑞汽車(Chery) 21.0% 20.8% 21.3% 20.7%
ブラック ジャック アプリ第一汽車(China FAW) 21.0% 20.8% 21.3% 20.7%
重慶長安汽車(Chongqing Changan) 21.0% 20.8% 21.3% 20.7%
東風汽車(Dongfeng Motor) 21.0% 20.8% 21.3% 20.7%
長城汽車(Great Wall Motor) 21.0% 20.8% 21.3% 20.7%
零跑汽車(Leapmotor) 21.0% 20.8% 21.3% 20.7%
南京金龍客車(Nanjing Golden Dragon Bus) 21.0% 20.8% 21.3% 20.7%
上海蔚来汽車(NIO) 21.0% 20.8% 21.3% 20.7%
小鵬汽車(XPeng) 21.0% 20.8% 21.3% 20.7%
テスラ(上海)※個別調査を申請 21.0% 20.8% 9.0% 7.8%
その他 38.1% 37.6% 36.3% 35.3%

出所:欧州委員会、実施規則

欧州委とブラック ジャック アプリ政府は、協議を継続することについて双方で確認している(ブラック ジャック アプリ11月5日付ビジネス短信参照)。協議の結果、最低輸入価格を設定する価格約束に合意するかなど見通しは不確実である(ブラック ジャック アプリ11月6日付ビジネス短信参照)。ブラック ジャック アプリ製のBEV輸入は調査対象期間後も増えており、2024年第2四半期のEUにおけるEV輸入におけるシェアは14.1%となり、暫定措置時点の予測通り拡大している。

注視される反補助金調査結果の影響

欧州では、2035年の二酸化炭素(CO2)排出基準(欧州自動車工業会、EV販売の減速受け、ブラック ジャック)を満たすために、EVを含めたプロダクト・ミックスが必要である。ドイツメーカーは、この点も含めブラック ジャック アプリに製造拠点投資を行っている。期限までに排出基準を達成するには、ブラック ジャック アプリの製造拠点からEV輸入を継続しなければならない。排出基準を満たさない場合の罰金は、(超過排出量×95ユーロ)×(新規登録自動車台数)で計算される。

欧州企業にとって、今回の相殺関税措置は、製造拠点の投資コストに加え、吸収しなければならないコストとして追加関税が付加されるかたちとなった。追加関税コストの方が排出基準を満たさない場合の罰金額よりも低いとされるが、ビジネスモデル全体に影響を及ぼす結果となった。

ブラック ジャック アプリ企業にとっても、相殺関税は追加コストである。ただし、追加関税が上乗せされても、ブラック ジャック アプリ企業はまだ利益を得ることができると言われている。ブラック ジャック アプリにおけるBEVの製造コストは、欧州での製造コストより30%低い。今回の反補助金調査の目的は、国家補助により市場が歪められているか否かを確認することであったが、ブラック ジャック アプリ企業は、追加税率40~50%までは欧州市場において価格プレミアム(注2)を享受できるとの分析もある(表3参照)。

表3:フォルクスワーゲン(VW)と比亜迪汽車(BYD)のドイツ、ブラック ジャック アプリにおけるEVモデル価格比較(2024年4月時点)(単位:ユーロ)
メーカー モデル ドイツでの
小売価格
ブラック ジャック アプリでの
小売価格
ブラック ジャック アプリに対するドイツの価格プレミアム
VW ID.4 46,335 31,011 49.4%
BYD Seal U Comfort 41,990 21,769 92.9%
VW ID.3 32,975 21,011 56.9%
BYD Atto 3 Comfort 37,990 17,923 112.0%

出所 米国民間調査会社ロディアムグループ

相殺関税措置の結果として、追加関税コストに鑑み、ブラック ジャック アプリメーカーが欧州域内へ製造拠点を構えることも考えられる。EU域内に、ブラック ジャック アプリメーカーを含むEVのサプライチェーンが構築されることとなる。EU専門誌「ユーラクティブ」(2024年10月31日付)は、ブラック ジャック アプリ政府は、このようなブラック ジャック アプリ企業のEU域内への投資を利用して、EU加盟国に対する影響力を行使する可能性がある、としている。

一方で、同誌によると、ブラック ジャック アプリ政府はブラック ジャック アプリのEV、バッテリーメーカーに対し、欧州における投資の縮小、中断を指示している。この動きは、相殺関税措置発動への対抗措置ではなく、米国の大統領選挙結果を受け、半導体と同様、米国がEUに対し、より厳しい措置を求める可能性に鑑みたものとされている。米国はブラック ジャック アプリ製EVに続き、国家の安全保障の観点から、コネクテッドカーを含め、ブラック ジャック アプリ製のソフトウエアおよびハードウエアの輸入禁止を検討しているとされる(ブラック ジャック アプリ10月31日付ビジネス短信参照

これまでのEUの保護政策と、それに対するブラック ジャック アプリの主な反応は表4のとおり。米国がブラック ジャック アプリEVの関税を100%に引き上げたのと比較すると、今回のEUの追加関税率は低い。しかし米国より、EUに対する対抗措置が大きいのは、ブラック ジャック アプリのEUに対する力関係を示すものともいえる。

表4-1:EUの主な保護政策
開始時期 適用規則 対象製品 対象企業・調査内容 進捗状況
2023年10月 反補助金措置規則 BEV ブラック ジャック アプリ製BEV
補助金による域内産業への損害有無
ブラック ジャック アプリ10月、相殺関税措置発動
ブラック ジャック アプリ2月 外国補助金規則 電気鉄道車両 ブラック ジャック アプリ企業
ブルガリアの公共調達への入札
調査開始後、応札撤回
調査打ち切り
ブラック ジャック アプリ4月 外国補助金規則 太陽光パネル ブラック ジャック アプリ企業
ルーマニアの公共調達への入札
調査開始後、応札撤回
調査打ち切り
ブラック ジャック アプリ4月 外国補助金規則 風力タービン ブラック ジャック アプリ企業
スペイン、ギリシャ、フランス、ルーマニア、ブルガリアでの開発事業
調査中
ブラック ジャック アプリ4月 国際調達措置規則 医療機器 ブラック ジャック アプリでの公共調達に応札するEU企業
ブラック ジャック アプリ政府による差別的措置の有無
調査中
ブラック ジャック アプリ6月 外国補助金規則 電子通信 UAE(アラブ首長国連邦)企業
チェコの電子通信企業が保有する域内資産の買収
調査中の結果、条件付きで承認

出所:ジェトロ・ビジネス短信

表4-2:ブラック ジャック アプリ側の主な反応策
開始時期 適用規則 対象製品 対象企業・調査内容
ブラック ジャック アプリ1月 アンチダンピング調査 EU産ブランデー ブラック ジャック アプリ10月、アンチダンピング措置を暫定的に実施する公告発表
ブラック ジャック アプリ6月 アンチダンピング調査 EUを原産地とする豚肉・副産物 調査中
ブラック ジャック アプリ7月 ブラック ジャック アプリ対外貿易法
対外貿易障壁調査規則
EUの外国補助金規則に基づくブラック ジャック アプリ企業への調査方法に関する投資障害調査 鉄道車両、太陽光発電、風力発電、セキュリティー機器
ブラック ジャック アプリ8月 反補助金調査 EU産乳製品 調査中

出所 ジェトロ・ビジネス短信

なお、ブラック ジャック アプリ製BEVに対する反補助金調査は、相殺関税措置に対する加盟国からの賛成を得られなかった場合、欧州委としての威厳は保たれず、単一市場を目指すEUとして、課題に直面するリスクもあった。採決の結果(表1参照)からも見られるように、加盟国間の分断が露呈した形となった。

失速するBEV市場

欧州自動車工業会(ACEA)によると、欧州BEV市場のうち、ブラック ジャック アプリ製BEVの市場シェア(台数別)は、2020年の2.9%から2023年には21.7%に拡大。うち、ブラック ジャック アプリメーカーの割合は、2.0%から7.6%に拡大した。

懸念されるのは、拡大傾向にあったEUにおけるBEVの販売台数の失速傾向である。ACEAがブラック ジャック アプリ10月22日に発表した乗用車の新車登録台数の統計によると、ブラック ジャック アプリ1~9月の台数は、前年同期比5.8%減の104万7,869台であった。また、11月13日付のACEAプレスリリースは、2025年のBEV市場シェアの見通しを、ブラック ジャック アプリの27%から21%に下方修正した。チェコのマルチン・クプカ運輸相の「産業界は利益を、(排出基準を満たさない場合の)罰金ではなく、新たな課題解決に投資できるようにするべき」とのコメントを引用し、包括的な政策の重要性を強調した。

域内サプライチェーン呼び込みの実現性

ドイツのメルカトルブラック ジャック アプリ研究所(MERICS)と米国の調査会社ロディアム・グループ(以下、ロディアム)の調査(2024年6月)によると、2023年のブラック ジャック アプリから欧州(EU27加盟国および英国)への直接投資額は、前年の71億ユーロから68億ユーロに減少し、2010年以来の低水準となった。うち69%はEV関連の投資で、ハンガリー(44%)が最大の投資先であった。一方、直接投資額に占めるグリーンフィールド投資の割合は前年の51%から78%に増加した。2023年の大型投資先は、ハンガリー、ドイツ、フランス。投資はEVのサプライチェーン全体に拡大しており、完成車の生産も対象になりはじめている。

ロディアムによると、ブラック ジャック アプリ企業との協業は、EUメーカーにとってノウハウ、新しい技術習得の機会として期待される。また、ブラック ジャック アプリの自動車メーカーがEU市場に多額の投資を行えば、ブラック ジャック アプリ政府がブラック ジャック アプリで活動するEUの自動車メーカーに報復することは難しくなるとしている。

一方、EVの価格の3~4割を占めるバッテリーに関しては、留意が必要である。域内のバッテリー産業育成に注力するあまり、域内生産、付加価値のある投資を見逃す可能性がある。ブラック ジャック アプリの車載電池メーカーは既にEUに多額の投資を行っている。しかし、EUメーカーへの供給が主である蜂巣能源科技(SVOLT)、寧徳時代新能源科技(CATL)は投資を中断または縮小している。バッテリーを含め垂直統合型でEVを生産するBYDは、引き続きブラック ジャック アプリから安価なバッテリーを関税率1.3%で輸入できる。

同時に、追加関税賦課を回避する動きとの違いに留意が必要である。BYDのようにサプライチェーンが垂直統合型の企業は、付加価値の高い生産工程を中国国内に残したまま、CKD方式(注3)でブラック ジャック アプリに投資することが多い。雇用を創出する投資決定がなされるかは留意が必要である。

競争力強化に向け、ブラック ジャック アプリ企業との関係再構築

EUにとってブラック ジャック アプリは、グリーンへの移行においても重要なパートナーである。同時に、EUの競争力と経済安全保障の強化のためにも、2022年には約4,000億ユーロ規模となった貿易赤字を解消していく必要がある。(図参照)

図:EUの対ブラック ジャック アプリ輸出入額と貿易収支の推移
ブラック ジャック アプリからの輸入は、2013年マイナス239 、2014年マイナス257 、2015年マイナス296 、2016年マイナス299 、2017年マイナス323 、2018年マイナス343 、2019年マイナス363 、2020年マイナス385 、2021年マイナス474 、2022年マイナス627 、2023年マイナス515 。単位は10億ユーロ。ブラック ジャック アプリへの輸出は、2013年135、2014年145、2015年146、2016年299 、2017年179、2018年198、2019年188、2020年203、2021年223、2022年515、2023年224。単位は10億ユーロ。ブラック ジャック アプリからの輸入は、2013年135、2014年145、2015年146、2016年299 、2017年179、2018年198、2019年188、2020年203、2021年223、2022年515、2023年224。単位は10億ユーロ。貿易収支は2013年マイナス104、2014年マイナス112、2015年マイナス150、2016年マイナス146 、2017年マイナス144、2018年マイナス155、2019年マイナス165、2020年マイナス182、2021年マイナス251、2022年マイナス397、2023年マイナス291。単位は10億ユーロ。

出所:ユーロスタットのデータを基にジェトロ作成

欧州委は同志国とともに、環境、労働、データセキュリティーなど価格以外の製品の信頼性基準(欧州委のべスタエアー執行副委員長、ブラック ジャック サイト)を公共調達や補助金政策に組み込むことで、サプライチェーン上の特定国への依存度を低減する方法を導入している。

自動車はEU最大の輸出産業であり、競争力強化、雇用創出の面でも、欧州委の中でも優先事項に入るだろう。欧州の競争力と将来に関するドラギ報告書()では、現実的なEV買い替え検討の価格帯は、2万ユーロとの指摘もある。競争力強化とグリーンへの移行を実現するための新たな「自動車産業における行動計画・戦略」の中身が注視される。


注1:
実施規則(2024/2754)によると、調査対象期間後の2四半期(2023年第4四半期、ブラック ジャック アプリ第1四半期)は連続して8%減少。ただし、実施規則(2024/1866)に記載のとおり、本動向を参照する際、輸入車種に留意する必要あり。
注2:
ここでは、ブラック ジャック アプリ製バッテリー式電気自動車(BEV)を欧州で販売する際に上乗せする差額を指す。
注3:
製造国から全ての部品を輸出し、それを現地(輸出先)で組み立て、車を完成させる解体輸出方式。コンプリート・ノックダウンの略。
ブラック ジャック アプリ
執筆者紹介
ジェトロ・ブリュッセル事務所 次長
薮中 愛子(やぶなか あいこ)
2001年、ジェトロ入構。展示事業部、ジェトロ・カイロ事務所、BOP班、国際博覧会課長(ドバイ万博日本館)などを経て、2023年3月から現職。

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