中国EV・車載電池企業のグローバル戦略拡大が見込まれる車載電池リブラック ジャック ルール ディーラークル市場、中国企業が相次いで参入
2024年12月20日
中国ではここ数年、新エネルギー車(NEV、注1)シフトの加速に伴い、NEV保有台数が急増している。中国公安部交通管理局によると、中国におけるNEVの保有台数は2018年末の261万台から、2023年末には7.8倍の2,041万台へと大幅に増加した。2024年に入ってからさらに加速し、NEVの保有台数は6月末に2,472万台となり、自動車保有台数全体の7.2%を占めた(図参照)。電気のみを使って走るBEVの保有台数は1,813万台でNEVの73.4%を占めた。
NEVの生産に必要不可欠な部品である車載電池は、劣化する消耗品であるため、使用推奨期限が定められている。中国では2016年から、乗用車向け車載電池の品質保証は新車登録日から8年間、もしくは走行距離が12万キロまでという基準を設けている。従って、2024年からは、寿命を迎えた車載電池がNEVの普及に追随するかたちで急増していく見通しだ。中国の自動車総合情報ブラック ジャック ルール ディーラート「蓋世汽車」が2024年7月に公開したレポートによると、使用済み車載電池の回収量は2023年に62万3,000トンだったが、2025年に120万トン、2030年には600万トンに増える見通しだ。
地方政府は使用済み車載電池のリブラック ジャック ルール ディーラークルを後押し
廃棄自動車の回収およびリブラック ジャック ルール ディーラークルにおいて、従来の内燃機関車(ICE)とは大きく異なる点として、NEVでは車載電池の取り扱いが重要となることが挙げられる。車載電池にはコバルト、ニッケル、リチウムなどの希少金属が多く使われるため、使用済み電池(注2)は重要な資源の「都市鉱山」として有望視されている。その半面、電池を不適切に処理すれば、人体、地球環境に悪影響を及ぼすリスクも大きい。NEVの普及が推し進められる中、使用済み電池の適切なリブラック ジャック ルール ディーラークルは、廃棄物の削減および資源の有効活用の観点で重要な課題となっている。
中国の国家発展改革委員会は2016年1月、工業情報化部、環境保護部などの4部門と共同で「電気自動車用電池の回収利用技術政策」を公表し、電池の設計・生産の段階から、再利用などを視野に入れる循環経済を目指すガイドラインを打ち出した。具体的には、設計段階においては環境に配慮した設計の採用と再生材料の利用奨励が、生産段階においては電池製品の追跡に向けた識別番号制度の導入などが盛り込まれた。新車の製造から廃棄までのライフブラック ジャック ルール ディーラークル全体に関わる各業者が、連携してリブラック ジャック ルール ディーラークルシステムを構築することを目指すとしている。
また、工業情報化部は2018年9月、車載電池のリブラック ジャック ルール ディーラークル技術や環境保護、安全対応などの基準を満たす使用済み車載電池のリブラック ジャック ルール ディーラークルおよびリユース事業者5社のリストを初めて公表した。野村総合研究所(上海)のまとめによると、同事業者リストは2024年3月までに計5回公表され、累計156社が最新のリストに掲載されている(表参照)。
項目 | 1回目 | 2回目 | 3回目 | 4回目 | 5回目 |
---|---|---|---|---|---|
総合業者 | 5 | 1 | 2 | 1 | 3 |
リブラック ジャック ルール ディーラークル業者 | 0 | 8 | 9 | 14 | 20 |
リュース業者 | 0 | 13 | 9 | 26 | 45 |
計 | 5 | 22 | 20 | 41 | 68 |
出所:野村総合研究所(上海)
広東省や江蘇省、浙江省などの地方政府では、使用済み車載電池のリブラック ジャック ルール ディーラークルを循環経済の発展計画、車載電池の振興戦略などの一環として組み込んでいる。電池リブラック ジャック ルール ディーラークル業界団体の発足、実施細則の発表、目標計画の策定など、廃棄車載電池の総合利用は、制度化に向けて着実に進んでいる。
山東省は2024年7月、リチウムイオン電池(LIB)産業の質の高い発展に向けた行動方案を発表した。LIBの産業規模について2025年までに1,000億元(約2兆1,000億円、1元=約21円)突破を目指し、正極・負極材料などの材料から、電池の生産、回収・処理までの産業チェーン全体を構築する目標を掲げている。同省は、廃棄車載電池のリブラック ジャック ルール ディーラークルおよびリユース企業を支援し、電池の回収分解・リユース・リブラック ジャック ルール ディーラークルの技術向上を通じ、再生材料の利用率を引き上げ、電池産業のグリーン成長を後押しする方針だ。
電池メーカー、材料の安定供給につながるリブラック ジャック ルール ディーラークル事業に積極参入
使用済み車載電池は、リユースされるものとリブラック ジャック ルール ディーラークルされるものに大別される。リユースでは、劣化した電池セルの交換や修理を経て、用途を変えながら通信基地局、蓄電システム、低速電動車、街灯などに使われる電池として再利用される。一方、リユースに適さない使用済み電池については、分解・製錬の工程を経てリチウムなどの金属材料を回収し、再資源化(リブラック ジャック ルール ディーラークル)する。いずれも資源の有効活用、環境保護につながり、NEV産業の経済効果の向上に裨益(ひえき)する。
NEVが急速に普及する中国では、大量に発生する使用済み車載電池のリブラック ジャック ルール ディーラークル、リユース市場の成長にも注目が集まる。電池メーカー、自動車メーカー、リブラック ジャック ルール ディーラークル業者などが相次いて関連ビジネスに参入している。中でも、リブラック ジャック ルール ディーラークル材料の安定調達は電池材料コストの低減、製品の価格競争力の向上につながることから、大手電池メーカーがリブラック ジャック ルール ディーラークル事業に積極的に参入している。
寧徳時代新能源科技(CATL)は2021年12月、320億元を投じる湖北省宜昌市の生産拠点の起工式を行った。2025年に予定する同拠点の完成により、年間約400万台分の車載電池向け正極材の供給が可能となる。同プロジェクトは、リン鉱石の製錬から、原材料・前駆体・正極部材の生産、リブラック ジャック ルール ディーラークルまで正極材のライフブラック ジャック ルール ディーラークル全体に関わる。年間生産能力はリン酸鉄リチウム(LFP)で22万トン、三元系LIBで18万トンの前駆体・材料を生産するほか、使用済み電池の回収・処理能力も年間30万トンに達する計画だ。電池のリブラック ジャック ルール ディーラークル事業を手掛ける子会社の広東邦普循環科技(Brunp)がプロジェクトの実施主体となり、2022年9月には廃棄LFP回収ラインの試験稼働を始めている。
CATLの曽毓群董事長は、2024年9月に海南省海口市で開かれた「2024年世界新エネルギー車大会」で、同社が2023年に回収した使用済み車載電池が10万トンに上ったと明らかにした。また、回収した電池からリブラック ジャック ルール ディーラークルによって生産した炭酸リチウムは1万3,000トンに上ったほか、金属の回収率もリチウムで91.0%、ニッケル・コバルト・マンガンで99.6%に達したという。曽董事長は、同社の廃棄電池の年間処理能力が世界最大規模の27万トンであると強調し、今後100万トンに引き上げるとの目標を示した。
自動車メーカー、リブラック ジャック ルール ディーラークル事業におけるサプライチェーンの主導権を狙う
自動車メーカーも、車載電池のサプライチェーンにおける主導権を握るべく、販売拠点などの広い回収ネットワークを生かし、リブラック ジャック ルール ディーラークル事業へ参入を進めている。
車載電池のリブラック ジャック ルール ディーラークルなどを行う福建常青新能源科技(常青新能源)は2023年12月、同社本社の所在地である福建省上杭県で手掛けるプロジェクトの2期工事の竣工(しゅんこう)式を開き、生産を開始した。2期目の投資額は23億800万元で、使用済み電池の処理能力は年間4万トン、三元系電池向け前駆体の生産能力は年間3万トンと計画されている。プロジェクト全体では3期に分けて建設され、1期目が2019年12月に稼働したほか、3期工事も2024年下半期に着工、2027年から本格生産を開始する予定だ。プロジェクト全体の総投資額は65億8,900万元に上る。すべて完成すれば、廃棄電池の処理能力は年間15万トン、三元系電池向け前駆体の生産能力は年間10万トンに達する見込みだ。
常青新能源は2018年10月に設立され、資本金は2億元。出資者には、自動車グループの浙江吉利控股集団傘下の吉利科技集団が筆頭株主となっているほか、ドイツ総合化学メーカーのBASF、電池材料メーカーの寧波杉杉、鉱業大手の紫金鉱業なども名を連ねる。吉利科技集団の副総裁で、同社の董事長を務める余衛氏は2023年2月、2期工事の着工式で講演し、中国の車載電池リブラック ジャック ルール ディーラークル市場の規模は2022年の約146億元から2030年に1,406億に拡大するとの予測を明らかにした。余氏は「2050年までに、すべての業界で使われる電池材料の約5割が、使用済み電池のリブラック ジャック ルール ディーラークルから得られる状況となる」と言及。そのうえで、余氏は「吉利グループ傘下の10以上の完成車ブランドから毎年発生する約1万トン超の使用済み電池について、常青新能源の回収プラットフォームに優先的に供給する」と表明した。
リブラック ジャック ルール ディーラークル業者、プラットフォーム作りでクローズドループリブラック ジャック ルール ディーラークルを構築
リブラック ジャック ルール ディーラークル企業は、多くの自動車メーカー、電池メーカーと連携することで、クローズドループリブラック ジャック ルール ディーラークル(注3)に向けたプラットフォームの構築を図っている。
リブラック ジャック ルール ディーラークル大手企業の格林美(GEM)は2024年4月、「格林回収(エコ・リブラック ジャック ルール ディーラークル)デジタルプラットフォーム」を立ち上げた。これは中国初の回収、トレースバック、価値評価、カーボンフットプリント(CFP)、販売アフターサービスなどの機能が一体化した設備更新および廃棄物回収のプラットフォームだ。廃棄物の回収から、中古設備の展示・販売、リマニュファクチャリング、ゼロカーボン製品の販売まで、全ての工程で利用できる。対象とする商品も、廃棄された設備、自動車、電池、電子情報機器、金属など広範囲にわたり、同プラットフォームの利用を通じて、中国政府が実施している設備更新と消費財買い替え推進政策の活用を後押しする。同社は、2027年までに同プラットフォームを通じた廃棄物の回収量を約4,000万トン、取引総額(GMV)を約1,200億元にし、2030年までに同回収量を約5,000万トン、取引総額を約1,500億元に引き上げる計画だ。
格林美は、2001年に広東省深セン市に設立され、深セン証券取引所とスイス証券取引所に上場している。同社は、中国国内の11省・直轄市のほか、海外では南アフリカ共和国、韓国、インドネシアなどで、廃棄物のリブラック ジャック ルール ディーラークル工場および新エネルギー材料工場を合計19カ所設置している。同社の使用済み車載電池および電子廃棄物の年間回収・処理量は中国全体の約10%を、廃車の回収・処理量では同約6%を占めている。同社の再生ニッケルの生産量は中国ニッケル採掘量の約20%に相当し、再生コバルトでは採掘量の約3.5倍、再生タングステンでは採掘量の約6%に相当する量を生産している。
格林美が2024年11月14日に公開した機関投資家との面談記録によると、廃棄車載ブラック ジャック ルール ディーラー回収状況について、同社は韓国、インドネシアにそれぞれ回収・処理拠点を設けているほか、これまでは自動車メーカーのBYD、メルセデンスベンツ(中国)()、広州汽車集団、東風乗用車、電池メーカーの恵州億緯鋰能、建設機械メーカーの山河智能装備集団など世界のパートナー企業約800社と使用済み電池のクローズドループリブラック ジャック ルール ディーラークル契約を結んでいる。
無資格業者の横行などの課題も
中国の車載電池リブラック ジャック ルール ディーラークル市場は、急速な成長を遂げているが、克服すべき課題もある。上述の「蓋世汽車」レポートによると、中国で車載電池の回収を手掛ける企業は2024年6月25日時点で約18万社あり、うち、約5万社は2023年に設立されたものだ。資本金500万元以下の企業が18万社のうち65%を占め、技術力、回収ルート、ビジネスモデルなどで大きく改善の余地がある企業が多い、と指摘している。
中国では、NEV所有者が車載電池の処分にあたっての決定権を有していることから、自動車メーカー、電池メーカーに拡大生産者責任(EPR、注4)を課し、履行を促すうえでの障壁となっている。政府が基準を満たす企業として公表しているリブラック ジャック ルール ディーラークルおよびリユース事業者は156社にとどまり、これら「正規のルート」以外の企業に買い取られるケースも少なくない、と指摘される。基準を満たしたリブラック ジャック ルール ディーラークル処理では、高い技術力と複雑な工程を要することから相応の処理コストが必要となる。一方、基準を満たさない小規模工場では、必要な処理コストをかけずに環境保全基準などを無視して処理しているケースも多い、との指摘も聞かれる。リブラック ジャック ルール ディーラークル市場の健全な発展に向けては、さらなる政策の整備が待たれる状況だ。
しかしながら、前述のとおり、中国における車載電池の回収量は今後、急激な増加が見込まれる中、リブラック ジャック ルール ディーラークル市場の拡大を見据え、すでに関連の取り組みを進める企業の動きもみられている。日本企業としては、政策動向および関連企業の動向を注視していく必要がある。
- 注1:
- NEVには、バッテリー電気自動車(BEV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)のほか、燃料電池自動車(FCV)が含まれる。
- 注2:
- リブラック ジャック ルール ディーラークルされる使用済み車載電池には、廃棄NEVから回収される使用済み電池が大半を占める。このほか、ごく少数の生産時の品質不良のため廃棄された電池も含まれる。
- 注3:
- 廃棄車載電池から、希少金属などを高効率で回収し、再び電池の原料としてサプライチェーンに供給するリブラック ジャック ルール ディーラークルの概念。
- 注4:
- 使用済み製品の処理または処分に関して、生産者が、財政的および、または物理的に相当程度の責任を負うという政策アプローチ。
- 執筆者紹介
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ジェトロ・上海事務所
劉 元森(りゅう げんしん) - 2003年、ジェトロ・上海事務所入所、現在に至る。