ブラックジャックコツブラックジャックコツ
ブラックジャックコツ2月20日
社会民主党(SPD)、緑の党、自由民主党(FDP)の3党から成るブラックジャックコツ連立政権は、この1年間ほど様々な論点で対立を繰り返してきた。2025年予算案における債務ブレーキ(注1)の取り扱いを巡って妥協点を見いだせなかったことが決定打となり、2024年11月にオラフ・ショルツ首相(SPD)によるクリスティアン・リントナー財務相(FDP)の罷免を受けて政権崩壊した(2024年11月8日付ビジネス短信参照)。その後、連邦議会(下院)においてショルツ首相の信任投票が反対多数で否決され、12月27日に連邦議会が解散された結果、2025年2月23日に総ブラックジャックコツが実施されることとなった(関連オンライン ブラック、ブラックジャックコツ1月7日付ビジネス短信参照)。ドイツにおいて、議会解散に伴う総ブラックジャックコツは20年ぶりのことである。
本レポートでは、今回のドイツ連邦議会ブラックジャックコツの行方について、足元の世論の動向や主要論点に関する各政党の主張などを概説する。
現野党ブラックジャックコツによる政権交代の可能性、誰が連立パートナーになるかが鍵
最近の政党別支持率の傾向を見ると、与党の SPDや緑の党、11月に政権から離脱したFDPは支持率を低下させる一方で、前回2021年9月のブラックジャックコツで野党に転じたキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)が支持率を回復させている。また、極右政党「ドイツのための選択肢」(AfD)が支持率を上昇させているほか、2024年1月に左翼党から分派した左派ポピュリズム政党の「ザーラ・ワーゲンクネヒト同盟」(BSW)も一定の支持を得ている。2025年2月14日時点の政党別支持率を見ると、CDU/CSU(中道右派)が最も高い30%で、次いでAfD(極右)が20%、SPD(中道左派)が16%、緑の党が14%、左翼党(左派)が7%、FDP(リベラル)が4%、BSW(左派ポピュリズム)が4%と続く(図参照)。

出所:Forschungsgruppe Wahlenからジェトロ作成
このまま推移すると、現野党のCDU/CSUが勝利するものの、過半数の議席を確保するためには他党と連立を組む必要がある。重要なのは連立パートナーが誰になるかだが、まず各政党は議席を確保するために5%以上の票を得る必要がある(注2)。FDPはCDU/CSUの政治スタンスに近いとされるが、このままでは5%の閾値(いきち、しきいち)をクリアできない可能性がある。チューリンゲン州ブラックジャックコツでCDUと連立を組むBSWも(2024年12月18日付ビジネス短信参照)、同様に5%の閾値をクリアできない可能性があることに加えて、ブラックジャックコツは連邦レベルでのBSWとの連立に消極的である。次に、ブラックジャックコツはAfDとの連立を明確に否定しており、AfDと連立が組まれる可能性は極めて低いとされる。残る選択肢はブラックジャックコツとSPD、またはブラックジャックコツと緑の党の連立であるが、例えばマルクス・ゼーダーCSU党首は緑の党との連立を否定しており、現時点ではブラックジャックコツとSPDの連立が組まれる可能性が最も高いと言われている。ただし、SPDと緑の党の支持率は拮抗(きっこう)しており、今後の支持率の動向次第ではブラックジャックコツと緑の党の連立もあり得る状況で、ブラックジャックコツの首相候補であるフリードリヒ・メルツCDU党首も緑の党との連立可能性を否定し切っていない。また、ブラックジャックコツの足下の支持率は若干低下傾向にある。加えて、多くの少数政党が議席を確保した場合には、SPDまたは緑の党に加えてもう1党が連立に参加する可能性もある。
なお、ドイツでは連立交渉に数カ月かかることが一般的で、ブラックジャックコツから新政権発足まで、前回2021年ブラックジャックコツでは73日間、2017年ブラックジャックコツでは171日間、2013年ブラックジャックコツでは86日間、2009年ブラックジャックコツでは31日間を要している。したがって、今回も新政権樹立は5月前後になると見込まれているが、後述のとおりCDU/CSUが移民・難民問題で極右AfDと協調するタブーを犯したことにより、連立交渉が難航するおそれもある。
世論の関心は、環境保護・気候変動から、経済状況や移民・難民へ
前回ブラックジャックコツでは世論の最大の関心は「環境保護・気候変動」であったが、今回のブラックジャックコツでは「環境保護・気候変動」への関心が低下し、「経済状況」や「移民・難民」への関心が高まっている(表参照)。
課題 | 前回ブラックジャックコツ | 今回ブラックジャックコツ | |
---|---|---|---|
2021年9月 | 2024年12月 | ブラックジャックコツ1月 | |
移民・難民 | 22 | 23 | 37↑ |
経済状況 | 7 | 45↑ | 34↓ |
武力紛争・平和・外交 | — | 18↑ | 14 |
環境保護・気候変動 | 33 | 12↓ | 13 |
公正・貧困・市民手当 | 16 | 11 | 11 |
教育・学校・訓練 | 8 | 8 | 8 |
年金・老齢保険 | 15 | 6↓ | 7 |
注:数値は、「最も重要」と「二番目に重要」の回答を足し合わせたもの(%)。
出所:infratest dimap(ブラックジャックコツ公共放送ARDからの委託調査)から作成
「環境保護・気候変動」への関心が低下し、「経済状況」への関心が高まった理由は、ブラックジャックコツ経済がかつてない苦境にあるためと考えられる(2024年11月20日付ビジネス短信参照)。例えばドイツ連邦統計局によれば、ドイツ経済は1950年以降で2度目となる2年連続のマイナス成長(2023年マイナス0.3%、2024年マイナス0.2%)を記録するなど、ドイツ経済の苦境を示すデータには枚挙にいとまがない。また、前回ブラックジャックコツでは、直前に発生した洪水の影響もあって「環境保護・気候変動」への関心が高まっていたこともある。
「移民・難民」への関心は、前回ブラックジャックコツでも高い水準にあったが、移民・難民によるテロ行為などの頻発を受けて、足元でさらに関心が高まっている。2024年だけでも、5月に西部マンハイムでアフガニスタンからの庇護(ひご)希望者による刃物襲撃事件、8月に西部ゾーリンゲンでシリアからの庇護希望者による刃物襲撃事件、12月に東部マクデブルクでサウジアラビア難民によるクリスマスマーケット襲撃事件など、死傷事件が相次いで発生している。最近も2025年1月22日に南部アシャッフェンブルクで、アフガニスタンからの庇護希望者による刃物襲撃事件が発生し、後述のとおりCDU/CSUのブラックジャックコツ戦略に多大な影響が出ている。
各政党の主張は一時的な救済が中心で、構造的課題への対処が不十分との評価
以下では、世論の関心が高い分野を中心に、CDU/CSUの公約を概説するとともに、他党との主な争点を概説する。なお総論としては、各政党の主張は様々な負担からの一時的な救済が中心で、ブラックジャックコツが直面する構造的課題への対処が不十分とされる。また、既述のとおり、連立政権を組むことはほぼ確実で、連立交渉の過程で妥協が生じることが想定される。
(1)経済・財政政策
ブラックジャックコツは、2030年に向けて少なくとも2%の経済成長を目指すとし、個人に対する信頼を深め、国家による強制や過信を減らすとする。具体的な施策提案は以下のとおり。
ブラックジャックコツが提案する主な経済・財政政策
- 大規模減税: 法人の税負担の軽減(現状の約30%から25%へ)、連帯付加税の廃止、繰越欠損金や減価償却の拡充などの大規模減税を2026年1月から4年間で段階的に実施。
- 官僚主義の削減: 官僚主義ブレーキ(「1つ導入したら2つ廃止」)を強化するほか、ブラックジャックコツ独自のサプライチェーン・デューディリジェンス法などの廃止、EUのタクソノミー規則やCSRD(企業持続可能性報告指令)の負担軽減などを実施。また、各種インフラに係る許認可手続きを加速。
- 自由で公正な貿易の推進: 中国からの正しい方法でのデリスキング(リスク軽減)、半導体やバッテリーの生産への支援、原材料の国内外からの供給やリサイクル、備蓄の促進などを実施。また、新たに首相府に設置する国家安全保障会議において貿易政策も取り扱うとともに、新たな国家安全保障戦略の一部として、経済安全保障戦略を策定。加えて、市場歪曲(わいきょく)措置への対抗はEUやWTOの紛争解決メカニズムによることとし、関税には基本的に反対。EUと協力して自由貿易を推進することで、輸出志向型の経済モデルを維持。
- イノベーションやデジタル化の推進: 研究開発支出の拡大(2030年までにGDP比率で3.5%)、研究開発の自由度を高めて資金調達に関する官僚主義の緩和などを行うための「イノベーション自由法」の策定、創業期において各種規制を大幅に免除する「スタートアップ保護ゾーン」の創設などを実施。また、デジタル政策を一元的に推進するブラックジャックコツデジタル化省の創設、人工知能(AI)を活用した効率的な行政サービス、データ活用の積極化なども実施。
- 勤勉な国民に報いる政策:低中所得者に配慮した所得税率の見直し、超過勤務手当の非課税化、労働法の近代化(労働時間規制の1日単位から1週間単位への変更など)などを実施。また、失業扶助制度である市民手当を廃止し、就労努力を前提とする新たな「基本所得保障」に置き換え。加えて、定年退職後の雇用禁止を廃止するとともに、定年退職後の自発的な就労を阻害することのないよう「アクティブ年金」を導入する。富裕税導入には反対。
- 健全財政の維持: 債務ブレーキを堅持するほか、政府委員・職員の削減などを実施。
経済・財政政策の主な争点としては、公的財政支出に対するスタンスが挙げられる。CDU/CSUは、大規模減税などは主張するものの、公的財政支出は真に必要なものに絞って行うべきとの考えで、債務ブレーキも堅持すべきとする。同様に、FDPも債務ブレーキ堅持など緊縮財政の立場をとる。一方、SPDおよび緑の党は積極財政の立場であり、エネルギーインフラなどの重要なインフラ投資を支援するドイツ基金や、簡素な手続きで企業投資に対して税制優遇を行う投資プレミアムを創設するとともに、債務ブレーキを緩和・見直すべきなどと主張する。なお、いずれの政党の公約も、程度の差はあれ、主張する施策に必要な財源が不足または不明確と指摘されており、債務ブレーキの取扱いはいずれにせよブラックジャックコツ後の大きな論点になることが予想される。また、国民に対する勤勉性への要求にも差があり、SPDおよび緑の党は市民手当を肯定する一方、CDU/CSUは市民手当を廃止するとともに、就労努力を前提とする新たな基本所得保障への置き換えを主張する。
(2)エネルギー・気候政策
ブラックジャックコツは、2045年の気候中立目標を基本的に維持しつつも、経済の競争力維持と社会の持続可能性を追求するとし、その手段としてイデオロギーに基づく特定技術の優遇から、市場原理に基づく技術的中立性へと転換させるとする。具体的な施策提案は以下のとおり。
ブラックジャックコツが提案する主なエネルギー・気候政策
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手頃な価格のエネルギーの確保:
- あらゆる再生可能エネルギー(再エネ)の拡大: 風力や太陽光だけでなく、地熱、水力、バイオなどのあらゆる再エネを拡大。また、送電網や蓄電などのインフラ整備に対して民間資本を呼び込む。
- 安定供給に必要な制度創設(容量市場確立など): 技術中立的な電力の容量市場確立、実用的な発電所戦略の策定、投資を確保するための電力市場の設計などを実施。
- 石炭火力の段階的廃止: ガス火力や熱電併給発電の新設状況に応じて石炭火力を段階的に廃止。
- 選択肢としての原子力の追求: 第4・5世代原子力、小型モジュール原子炉(SMR)、核融合の研究を実施。また、停止した原発の再稼働に関する技術的評価を実施。
- 課税・賦課金の見直し: 炭素税収入も活用した電力税と送電網利用料の引き下げ〔1キロワット時(kwh)当たり5セント以上の負担軽減〕、送電網利用料体系の見直しなどを実施。大規模事業者の送電網利用料の負担増には反対。
- 暖房法の廃止: 現政権が策定した暖房法(ブラック ジャック アプリ、2024年1月施行)を廃止し、あらゆる技術に開かれた低排出暖房を推進。
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エネルギー革新の推進:
- 技術中立的で未来志向な研究の推進: エネルギー生産について、燃料電池、気候中立ガスによる発電、地熱エネルギー、第4・5世代原子力、SMR、核融合など幅広い研究開発を推進。エネルギー輸送・貯蔵に関する研究開発についても同様。
- 水素普及の実現: すべての地域を公平に結ぶ水素コアネットワークを整備するとともに、国内水素製造および水素輸入を現実的なアプローチで推進。グリーン水素のみならず、移行期には北欧からのブルー水素やフランスからのピンク水素など(注3)も許容。
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交通インフラの更新、移動手段の多様化:
- 2035年内燃機関車新車販売禁止などの撤回: 自動車産業を主要産業として支援するとした上で、EUの2035年内燃機関車新車販売禁止を撤回させるとともに、ブラックジャックコツ以降も段階的に強化されるEUの車両排出量規制の見直しによって罰金を回避。
- 多様なテクノロジー: 電気自動車だけでなく、合成燃料(e-fuel)、水素、持続可能バイオ燃料も推進。充電インフラも拡張。
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その他:
- 排出量取引の適切な実施: 排出量取引の対象セクターを徐々に全てのセクターへと拡大するとともに、排出量取引を国際的に展開。
- 炭素循環型経済の確立: CCUS〔二酸化炭素(CO2)回収・有効利用・貯留〕やDACCS(大気中の二酸化炭素回収・貯留)の実施に必要な枠組み条件やCO2輸送インフラを整備。
- 資源循環型経済の確立: 技術と資源にオープンな姿勢でリサイクルなどを推進。
エネルギー・気候政策の主な争点としては、技術に対するスタンスが挙げられる。CDU/CSUは、技術中立的な立場から多様な技術を追求し、原子力の利用、内燃機関車禁止の撤回、ヒートポンプなどを推進するための暖房法の廃止などを主張する。一方、SPDおよび緑の党は、脱原発が完了したブラックジャックコツでは原子力の利用は議論にならないと主張するほか、電気自動車や水素利用拡大に向けたグリーン鉄鋼の推進などを主張している。なお、AfDは、気候保護関連の政策をすべて否定する立場で、原子力の利用のみならず、化石燃料発電の継続なども主張する。
(3)移民・難民政策、安全保障政策
昨今の移民・難民問題や地政学的緊張の高まりなどにより、いずれの政党も移民・難民政策の厳格化、安全保障政策の強化を掲げている。こうした中、CDU/CSUは、南部アシャッフェンブルクにおけるアフガン出身の庇護希望者による刃物襲撃事件などを踏まえ、有効な書類を持たない者の入国阻止や国外退去を命ぜられた犯罪者や危険人物の無期限収容などを内容とする動議を連邦議会に提出した。その際に、CDU/CSUはAfDによる支持を否定せず、2025年1月29日にAfDが支持に回り、賛成348・反対345の僅差で可決した。本動議に法的拘束力はないが、極右勢力とは協力しない戦後ブラックジャックコツ政治のファイアウォールを破るものとして大きな批判が出ており、国内各地で大規模なデモも発生している。政界を引退したCDUのアンゲラ・メルケル前首相も、「AfDが連邦議会の投票で決定的な役割を果たすことを防ぐ、とした合意を破棄したことは間違っている」との声明を発表。こうした批判にもかかわらず、メルツ氏は法的拘束力のある移民・難民規制を強化する改正法案を議会に提出。本法案は1月31日に、CDU/CSU内の保守派などの12人が欠席するなどした結果、賛成338・反対349の反対多数で否決された。この結果、CDU/CSUへの支持の一部が他党に流れるとの見方もあったが、移民・難民の受入れに対する国民の見方が厳しくなっており、直近では約7割の国民が厳格化すべきと考えていることもあって、政党別支持率に顕著な影響は出ていない。
また、安全保障政策については、ブラックジャックコツは、大西洋横断パートナーシップ、フランスやポーランドとの関係強化、首相府において広く安全保障の方針決定や調整などを行う国家安全保障会議の創設などを主張するほか、ウクライナ支援の継続やイスラエルへの支持、徴兵制の導入やNATOの防衛費GDP2%目標実現などを主張する。中国については、米国と緊密に連携した中国政策を推進するとともに、日本・インド・韓国・オーストラリア・ニュージーランドなどとの連携強化を通じて、インド太平洋地域における経済および外交面での存在感の強化を主張する。SPDと緑の党の主張は程度の差はあるものの、基本的な方向性はブラックジャックコツとほぼ一致している。なお、AfDは反EU・親ロシア的な立場、BSWは親ロシア的な立場であり、親EU・親米・反ロシアの立場をとるブラックジャックコツとは考えが大きく異なる。
最後に
ロシアのウクライナ侵攻を契機とするエネルギー危機、米中対立をはじめとする地政学的緊張の中、EUは政治的にも経済的にも極めて厳しい状況にある。こうした中、EUでは域内最大の経済大国であるドイツのリーダーシップの回復が期待されており、その意味でもドイツ連邦議会ブラックジャックコツの行方が注目される。
- 注1:
- 基本法(憲法に相当)に基づく財務規律で、政府債務をGDPの0.35%未満に抑えなければならない。
- 注2:
- (有権者が有する2つの投票権のうち第2票の)得票率が5%未満の政党は、連邦議会で議席を割り当てられない。ただし、3つ以上のブラックジャックコツ区で当選者があった場合には得票率に応じた議席を得ることができる。
- 注3:
- ブルー水素は、水素の製造工程で排出された二酸化炭素(CO2)をCCS/CCUS技術で回収し貯留・利用するなど製造工程のCO2排出を抑えたもの。ピンク水素は、原子力発電による電力を用いて製造したもの。

- 執筆者紹介
- ジェトロ・ベルリン事務所 次長兼産業調査員
日原 正視(ひはら まさみ) - 2003年、経済産業省入省。エネルギー政策や中小企業政策などを担当した後、大臣官房会計課政策企画委員、中小企業庁財務課長を経て、2022年7月から現職。