ドイツ連立政権が崩壊、首相が財務相を罷免し、年明けに首相信任投票
(ドイツ)
ベルリン発
2024年11月08日
ドイツのオラフ・ショルツ首相は11月6日、記者会見を開き、自由民主党(FDP)出身のクリスティアン・リントナー財務相の罷免を大統領に要請したと発表した。翌11月7日、フランク=バルター・シュタインマイヤー大統領は正式に罷免を承認した。ショルツ首相によるリントナー財務相罷免を受け、FDPの議会会派長のクリスティアン・デュール氏は同党出身閣僚全員の辞表提出を表明した(地元紙「シュピーゲル・ポリティク」11月7日)。
ショルツ首相は会見でリントナー財務相罷免に至った理由について、「経済・財政政策を巡り妥協点を探ったが、妥協を拒み無責任な行動を取っている。首相として、それを許すことはできない」と述べた。社会民主党(SPD)、緑の党、FDPによる連立政権はこのところ、政策や次年度予算案を巡り度々対立。妥協点を探るため、連立党首による会合が複数回行われていた。FDPは連立離脱を繰り返し示唆し、一部報道によると、11月6日の政権会合においてもリントナー財務相は年明けの議会解散・総選挙を提案したという。また、連立間で債務ブレーキ(注)に対する見解が異なっており、緩和派のショルツ首相に対し、堅持派のリントナー財務相が妥協に至ることはなかった。
ショルツ首相は、年明けの2025年1月15日に連邦議会で信任投票を行うと発表した。信任投票の結果、過半数に達しない場合、大統領は首相の提案により議会を解散することができる。解散する場合は、3月中に総選挙が実施される見込み。
議会解散まで少数与党となるため、審議中の個々の法案について賛成多数を確保するためには、野党の支持を得る必要がある。ショルツ首相は、米国大統領選挙の結果も踏まえ、経済と防衛について最大野党であるキリスト教民主同盟(CDU)の党首フリードリヒ・メルツ氏に建設的な協力関係を申し出たいと表明し、責任ある野党としての対話を求めている。他方、報道によると、メルツ氏は、来週にも信任投票を行うよう要求している。
11月7日には、財務相の後任に、首相官邸次官のイェルク・クキース氏が就任した。同氏はショルツ首相の腹心としても知られる。一方、FDPのフォルカー・ビッシング・デジタル・交通相は、FDPを離党して閣内にとどまる旨を宣言した。FDP出身の閣僚は、リントナー前財務相のほか、マルコ・ブッシュマン司法相とベティナ・シュタク=バツィンガー教育・研究相の2人が辞任する。司法相と教育・研究相は、それぞれ現行の閣僚が兼務で引き継ぐこととなった。
(注)連邦政府の債務をGDPの0.35%未満に抑えるという財政規律のルール。
(打越花子、中山裕貴)
(ドイツ)
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