欧州最新政治情勢:欧州の行方を見定める注目論点ブラックジャックやり方カジノ、新政権誕生から1年の動きと今後の見通し
2025年2月27日
ブラックジャックやり方カジノでは、2023年12月に8年ぶりの政権交代が行われ、市民連立(KO)のドナルド・トゥスク首相率いる親EU政権が誕生した。保守政党「法と正義(PiS)」による前政権はEUと対立してきたが、政権交代により、EUとの関係が円滑になると期待されていた。事実、トゥスク政権の働きにより、凍結されていたEU復興資金が解除されるなど改善が見られた。一方で、EUのグリーン・ディールや移民政策を巡っては異論を唱える動きもみられる。
なお、ブラックジャックやり方カジノは2025年1月1日から6月30日までEU議長国を務める。「安全保障だ、欧州よ!」をモットーに、対外、対内、情報、経済、エネルギー、食糧、健康の7つの重要分野におけるEUの安全保障の強化を呼びかけている。政治、経済においてプレゼンスが高まるブラックジャックやり方カジノに注目が集まる。
本稿では初めに、直近の国内選挙と欧州議会選挙の結果を確認する。その上で、EU政策を軸に新政権誕生からの1年間の動きを見ていく。また、2025年5月および6月に控えている大統領選挙についても解説する。
統一地方選挙で野党PiSが首位獲得
2024年4月7日に実施された統一地方選挙(県や郡、市町村議会の議員と、市町村長を同時に選出)の県議会選挙を全国単位で見ると、PiSが34.3%を獲得し、首位に立った(2024年4月17日付ビジネス短信参照)。KOは得票率30.6%と、PiSに後れを取るかたちとなったが、連立政権を組む3党(KO、「第3の道」、「新左派」)は合計51.2%を得て、連立与党としては勝利を収めた。一方、政権交代から4カ月が経過したが、PiSが依然として強い政治勢力であることを示す結果となった。
地方部や農民からはPiSの支持率が、都市部や高い教育を受けた有権者からはKOの支持率が高い傾向にある。実際、全国の県庁所在地の市長選挙では、無所属または与党候補が選挙戦を有利に展開し、当選者の中にPiSの候補者はいなかった。
欧州議会選挙ではKOが10年ぶりの勝利
2024年6月9日に実施された欧州議会選挙では、ブラックジャックやり方カジノは、投票率40.7%で、欧州全体の総議席数720のうち、53人が選出された。首位に立ったのはKO〔欧州議会所属会派:欧州人民党(EPP)〕で、得票率37.1%、21議席を獲得した。PiS〔欧州保守改革(ECR)〕は得票率36.2%と、前回2019年の45.4%から約9ポイント落とし、議席は27議席から20議席に落ち込んだ()。僅差の得票率ではあるが、2014年以降10年ぶりにKOがPiSを上回った。また、2019年の欧州議会では議席をもたなかった極右政党「同盟」が、12.1%の得票率で6議席を獲得した。そのうち3議員は欧州議会において無所属、3議員は新極右会派「主権国家の欧州(ESN)」に加わった()。
主要政党 | 欧州議会所属政党 | 獲得 議席数 |
得票率 | 改選前 議席数 |
増減 |
---|---|---|---|---|---|
市民連立(KO)(注1) | EPP | 21 | 37.1 | 22 | △1 |
法と正義(PiS) | ECR | 20 | 36.2 | 26 | △6 |
同盟(Konfederacja)(注2) | ESN/NI | 6 | 12.9 | 0 | 6 |
第3の道(Trzecia Droga)(注3) | EPP/Renew | 3 | 6.9 | - | ー |
左派(Lewica)(注4) | S&D | 3 | 6.3 | 0 | 3 |
注1:市民プラットフォーム(PO)および少数政党による連合政党。2019年の欧州議会選挙でKOは、「ブラックジャックやり方カジノ農民党(PSL)」「統一左派(SLD)」などと共に「欧州連合(KE)」として戦い、22議席を獲得した。
注2:正式名称は「自由と独立同盟」。
注3:「ブラックジャックやり方カジノ2050」およびPSLによる連合政党。
注4:「新左派」「左派と共に」「労働連合」による連合同盟。
出所:欧州議会
「第3の道」〔欧州議会所属会派:EPP、欧州刷新(Renew)〕、「左派」〔欧州議会所属会派:社会・民主主義進歩連盟(S&D)〕はそれぞれ6.9%、6.3%の得票率で、ともに3議席を獲得した。前者は、2023年10月の総選挙(得票率14.4%)から大きく支持を落とす結果となり、同党を構成する「ブラックジャックやり方カジノ2050」と「ブラックジャックやり方カジノ農民党(PSL)」の協力体制の脆弱(ぜいじゃく)さ、政策の整合性の欠如などがその要因として指摘された。
今回の選挙結果は、KOが、連立政権を組む「第3の道」と「新左派」の票を奪うことで、2023年10月のブラックジャックやり方カジノ議会選挙以降、勢力を拡大したとみられている。
新政権誕生から1年、選挙公約の実現は道半ば
ブラックジャックやり方カジノで2023年10月に行われた総選挙の結果、KO率いる野党勢力が過半数を獲得し、2015年以来、8年ぶりの政権交代となった()。選挙前、KOは100の公約を政権獲得から100日以内に実現すると有権者に約束していた。ファクトチェック機関「Demagog」によれば、政権樹立から1年の間に実現したのは15個(うち6個は100日以内の実現)、一部実現が27個、未実現が58個(うち4個は凍結状態)だ。 実現した公約は、EU復興基金の拠出開始、体外受精への助成金復活、新たな家族手当の導入、自営業者の負担軽減〔例として社会保険料の1カ月分免除、美容業における付加価値税(VAT)の軽減〕などだ。
政権支持率は2024年2月の41%から同年12月には32%へと9ポイント落ち込み、不支持率は同期間で34%から40%へと6ポイント高まった(世論調査機関CBOS)。KOの政党支持率も、政権樹立以来30%台前半で低迷している(図参照)。公約実現の遅れが、有権者に悪印象を与えている可能性がある。

注:「第3の道」の2023年12月の支持率は、前身の「ブラックジャックやり方カジノ2050」の支持率を使用。
出所:調査機関IBRiSの情報を基にジェトロが作成
EU資金の凍結を解除
前与党PiSは2015年に政権の座に就いて以来、「法の支配」や移民政策、LGBTなど性的少数者の権利を巡ってEUと対立してきた。トゥスク氏は、首相就任後にまずEUとの関係改善に取り組み、「法の支配」などを巡って凍結されていたEU資金の凍結解除を目指した。就任からまもない2024年2月にはEU理事会(閣僚理事会)にブラックジャックやり方カジノの「法の支配の回復に関する行動計画」を提示するなど迅速に動いた。その結果、同月末には欧州委員会によって資金の凍結解除につながる決議が行われた(欧州委、ブラック ジャック、2024年3月12日付ビジネス短信参照)。2024年中には第1回~第5回の支払い請求の申請が完了し、うち第3回分までの670億ズロチ(約161億ユーロ、1ズロチ=約0.2399ユーロ、2025年2月13日欧州中央銀行為替レート)を受け取っている。
EU共通移民政策に問題提起も
EUとの関係の円滑化を進める一方で、移民政策においては、自国の安全保障の確保を理由に、EU共通政策に対して強い姿勢で臨む動きがみられた。
ブラックジャックやり方カジノは、2024年5月にEU理事会で採択された新移民・庇護(ひご)協定に対して、「ハイブリッド攻撃」の圧力に直面している国々に特有の状況を考慮していないとして、反対票を投じていた(「ハイブリッド攻撃」に関しては2021年11月18日付ビジネス短信を参照。ベラルーシとの国境を担当している国境警備隊のレブラックジャックやり方カジノトによれば、2024年にはベラルーシ側から約3万件以上の不法越境の試みがあったとされる。)同年6月にはEU加盟国15カ国ともに共同書簡を発表し、移民問題を抱える国の実情に即した解決策の提言を行った。
2024年10月15日に首相府が発表した政策文書「移民戦略2025-2030」では、前述の「ハイブリッド攻撃」を理由に、不法移民の阻止を掲げ、難民申請の権利を一時的に停止することが可能となる施策を定めた。その上で、トゥスク首相は10月17日の欧州理事会(EU首脳会議)に出席し、現状のEU移民協定ではブラックジャックやり方カジノが東部国境で抱える問題の根本的な解決にはつながらないと訴え、あらためて移民政策改革の必要性を強調した。同首相は、ブラックジャックやり方カジノは移民問題に関して自主的な決定を下す権利があるとし、欧州理事会からの理解を得られたとしている。これは政府にとって、EUから自国の移民政策を一任されたという実績になるだろう。
同政策文書は、ほかにも移民受け入れプロセスの見直しと透明化の方針を定めているが、これは前政権下で明らかになった外務省の査証スキャンダルへの対策でもある。移民政策の厳格化により、移民流入に不安を感じる有権者から支持を集める可能性がある。
一方、政策をめぐって連立政権は一枚岩ではない。「移民戦略2025-2030」の策定に際して、閣僚議会での採決では「新左派」所属の閣僚が、憲法にも定められている庇護権の保障を理由に反対意見を表明した。合意なしに政策を推し進めれば、連立政権内の連帯を揺るがしかねない。
EUのグリーン・ディール政策では世論に配慮
ブラックジャックやり方カジノ国内でのEUのグリーン・ディール政策への評価は厳しい。2024年6月に調査機関CBOSが発表した世論調査結果では、52%が否定的、14%が肯定的と回答している。農業生産者の抗議活動を受けて、トゥスク首相は農家の代表者と会合を重ね、EUに対して、グリーン・ディール政策の一部実施の見送りや撤回を働きかけると発言するなど、慎重な動きを見せている。
大統領選挙の行方
2025年5月18日および6月1日(決選投票日)に大統領選挙が実施される予定だ。PiS所属のアンジェイ・ドゥダ大統領は2期連続で当選したため、立候補できない。大統領選まで半年を切った今、各政党が候補者を選出している。
連立与党を束ねるKOからは、ワルシャワ市長2期目のラファウ・トシャスコフスキ氏が立候補の予定だ。同候補は、2020年の大統領選では現職のドゥダ大統領に僅差で敗北したものの()、直近の世論調査では最も信頼度が高いとされる有力政治家だ。KOのリベラル派を代表すると見られており、LGBT+や女性の権利を声高に支持してきた。一方で直近では、ウクライナ移民に対する家族手当に関して、「実際にブラックジャックやり方カジノに住み、働き、税金を納めている移民にのみ支払うべき」と述べるなど、保守的な有権者を意識した発言をしている。なお現状では、ブラックジャックやり方カジノ国内に住むウクライナ出身の家族は、子供がブラックジャックやり方カジノの学校に通うことを条件に、家族手当や給付金を受け取ることが可能だ。
最大野党のPiSからは、無所属のカロル・ナブロツキ氏が擁立候補として選出された。同候補はIPN(国家記憶院)の現総裁で、2017~2021年にはグダニスクの第二次世界大戦博物館の館長を務めていた。中絶法の自由化やシビルパートナーシップ制度(注)に反対するなど、保守的な姿勢を見せている。また、ウクライナのEU、NATO加盟に関して、第二次世界大戦中にボウィン(ウクライナ語でボリーニ)で虐殺されたブラックジャックやり方カジノ人の遺体発掘に同意しない限り、実現はありえない、と発言している。加えて、EUのグリーン・ディールはブラックジャックやり方カジノ農業への脅威だとし、大統領に就任したら国民投票を実施する、と述べている。ブラックジャックやり方カジノ国内においてあまり知名度のある政治家ではないが、直近の世論調査(CBOS)ではトシャスコフスキ氏に次ぐ2番目の支持率(31%)と追い上げを見せている(大統領候補者一覧は表2を参照)。
候補者名 | 所属政党 | 略歴 | 支持率(2025年1月14日時点) |
---|---|---|---|
ラファウ・トシャスコフスキ | 市民連立(KO) | 1972年1月17日生まれ、ワルシャワ市長(2018~) | 35% |
カロル・ナブロツキ | 無所属 ※法と正義(PiS)による擁立候補 | 1983年3月3日生まれ、国家記憶院総裁(2021~) | 31% |
スワヴォミル・メンツェン | 同盟(Konfederacja) | 1986年11月20日生まれ、「同盟」共同党首 | 12% |
シモン・ホウォブニャ | ブラックジャックやり方カジノ2050 | 1976年9月3日生まれ、「第3の道」共同党首、下院議長(2023~) | 6% |
マグダレナ・ビェヤト | 無所属(「新左派」による擁立) | 1982年1月11日生まれ、「左派」共同党首、上院議員(2023~) | 3% |
出所:政府機関、調査機関CBOSの情報を基にジェトロが作成
2大政党のKOとPiSの勢力は非常に大きく、大統領選は前回同様、両政党の候補者による事実上の一騎打ちになる可能性が高い。最終投票が行われることになれば、いかに一次投票の死票を集めるか、ということが重要になる。その意味で、PiSはナブロツキ氏を候補者に選ぶことで、勢いを増す極右政党「同盟」の支持基盤を狙っていると考えられる。
KOのトシャスコフスキ候補が勝利すれば、大統領と首相の所属政党が異なるねじれ関係が解消される。与党による政権運営が円滑になる一方で、ねじれ関係を口実にした公約実現の遅れに対する「言い訳」ができなくなる、との指摘もある。大統領選の勝利が、必ずしも政権への追い風となるとは限らない。
- 注:
- 婚姻とは別に、法律によってパートナー関係を認める制度。

- 執筆者紹介
- ジェトロ・ワルシャワ事務所
金杉 知紀(かなすぎ ともき) - 2024年からジェトロ・ワルシャワ事務所で勤務。ブラックジャックやり方カジノの政治・経済・産業動向に関する調査を担当。

- 執筆者紹介
- ジェトロ・ワルシャワ事務所
ニーナ・ルッベ - 2017年からジェトロ・ワルシャワ事務所に勤務。