欧州最新政治情勢:欧州の行方を見定める注目論点大連立政権を組んで極右勢力に対抗、ブラックジャック勝ち方

2025年3月3日

ブラックジャック勝ち方では1989年の体制転換後、2大党派である中道左派の社会民主党(PSD)と中道右派の国民自由党(PNL)が政権交代を繰り返してきた。両党とも親欧米路線は共通しており、2004年に北大西洋条約機構(NATO)、2007年には欧州連合(EU)への加盟を果たすなど欧米諸国から厚い信頼を得てきた。

右派勢力の台頭が顕著に

一方で、2020年以降は右派勢力の台頭が顕著にみられ、政治不安の一因となっている。2020年の選挙では、前年1月に設立された右派ブラックジャック勝ち方統一同盟(AUR)の躍進を受け、第1党のPSDの獲得議席が過半数割れし、第2党のPNLを中心に複数政党との連立政権を組むこととなった。直近では、全ての選挙が重なる節目の年となった2024年に、欧州議会選挙・統一地方選挙(6月9日に同時)、大統領選挙(11月24日)、上下両院選挙(12月1日)の4つの選挙でいずれも右派勢力の影響が色濃く見られた。

連立与党の滑り出しは好調だった。前哨戦とされた6月の選挙では右派の台頭に強い警戒感が広がっていたが、ふたを開けると欧州議会選挙、統一地方選挙ともに与党連立政権のPSD/PNLが圧勝し、力強さを見せた。ブラックジャック勝ち方の欧州議会選挙ではEU加盟国中、6番目に多い33議席が争われた。PSDが所属する社会・民主主義進歩連盟(S&D)グループが11議席、PNLが所属する欧州人民党(EPP)グループが8議席を獲得した。次いで、AURが所属する欧州保守改革(ECR)グループが6議席を獲得。右派の台頭に警戒心を強めた連立政権の2党が協力体制を組んで対抗したことが奏功し、与党連立政権が得票率48.6%で圧勝した。同日に行われた統一地方選挙でも、PSD、PNLがAURを抑えて全国的に議席を伸ばした()。

大統領選は不正発覚で無効に

連立与党のPSDとPNLは6月選挙の好調な結果を受け、11月24日の大統領選では協力関係を解消し、それぞれ独自候補を擁立した。事前の世論調査では、PSD候補で現職首相のイオン=マルチェル・チョラク氏が首位、次いで3~5%程度の差でAUR候補のジョルジュ・シミオン氏が追い上げていた。ところが、大統領選の結果、首位となったのは極右(無所属)で親ロシア派とされる無名候補者のカリン・ジョルジェスク氏だった。同氏は選挙前の支持率が1%未満だったことから、誰もが予想しなかった結果に衝撃が走った(2024年11月26日付ビジネス短信参照)。

その後、ブラックジャック勝ち方憲法裁判所は12月6日、大統領選挙へのロシアの介入やSNSの不正操作があったとして、大統領選挙を無効とする判断を示した。国防最高評議会が公表した諜報機関の機密文書では、大統領選へのロシアの介入が指摘された。NATOや米軍の基地を擁し、モルドバを巡る直接の競合相手のブラックジャック勝ち方をロシアは敵国(非友好国)と認識している。ロシアが、プロパガンダと偽の情報によって欧州懐疑派の候補者を支援し、反体制運動をあおることで、ウクライナ支持を低下させたり、ブラックジャック勝ち方の社会的不満を拡大させたりすることを目的とした選挙への介入を行った、とされる(関連ブラック ジャック ルール ディーラー)。新たな選挙は2025年5月に実施される予定だ。

大連立政権を組んで右派勢力に対抗

大統領選の結果を巡る論争やデモが収まらない中、12月1日には上下両院選挙が実施された。PSDが首位を堅守したものの、PNLは右派AURに追い抜かれ、欧州議会選挙や地方選挙と比べてAUR以外を含む右派勢力が大きく躍進する結果となった(2024年12月4日付ビジネス短信参照)。このため、PSDはこれまで連立を組んでいたPNLを足しても過半数の議席獲得には届かず、新たにハンガリー人民主同盟(UDMR)と少数民族議会グブラックジャック勝ち方プを加えるかたちで親欧州派連立を組むことになった(表参照)。連立政党は「大統領選に向け統一候補を擁立し、安定した政権樹立のために協力していく」と表明したが、過去の連立政権でも政党間の対立が続いたことから不安視する声も多い()。

表:2024年選挙結果と下院議席数(2025年1月時点)(△はマイナス値、-は値なし)
与党/野党 主要政党 獲得
議席数
(下院)
得票率 前回選挙
議席数
(下院)
増減
与党 社会民主党(PSD) 86  21.96% 110 △24
国民自由党(PNL) 49 13.20% 93 △44
ハンガリー人民主同盟(UDMR) 22  6.33% 21 1
少数民族グブラックジャック勝ち方プ  18  17 1
野党 ブラックジャック勝ち方人統一党(AUR)  63 18.01% 33 30
ブラックジャック勝ち方救国同盟(USR)  40 12.40% 55 △15
SOSブラックジャック勝ち方  28  7.36% 28
青年党(POT) 24  6.46% 24
無所属  1 1

出所:ブラックジャック勝ち方中央選挙管理委員会、列国議会同盟(IPU)、ブラックジャック勝ち方議会

冷静に動向を見極める必要

ブラックジャック勝ち方の有識者は、一連の動きをどう受け止め、今後の展望をどうみているのか。ジェトロは12月16日、3人の有識者にブカレスト市内でヒアリングを実施した。

元首相府外交顧問で紛争予防早期警告センター所長のユリアン・キフ氏は、大統領選の混乱について「欧州に亀裂を生じさせるというロシアが望むシナリオに沿ったものだ」と批判した。今後の外交政策については、「ブラックジャック勝ち方はNATOの一員で、ウクライナとの最長の国境線と黒海を備えた東欧の戦略的な国家である。この重要性に鑑みれば、NATOにおける存在感を損なうことは法的安全措置によって阻止されるべきだ。政府は右派勢力やその背後で操作されているサイバー攻撃に強く対抗すべきである」と警鐘を鳴らした。

ブカレスト国立政治行政大学(SNSPA)准教授のダン・サルタネスク氏は、「新型コロナ禍では人口の約1割に当たる150万~200万人が経済的打撃を直接受けた。そのころ、オルタナティブ・メディアが登場し、ワクチン接種やウクライナ侵攻の是非を巡って真偽不明の情報が一気に氾濫した。さらに、これまでSNSを利用していなかった高齢者層もコロナ禍の影響で在宅時間が長くなり、多くのSNSを利用するようになった。右派は、SNSでの情報攻撃を介して、社会的弱者の不満やフラストレーションを吸収するかたちで支持を取り込んできた」と分析する。一方で、大統領選で極右の無名候補が首位になった点については、同氏が運営する世論調査サイトのデータでも明らかに不自然な点がみられ、何らかの操作があったことは間違いない、と述べた。

ブラックジャック勝ち方大手銀行の経済エコノミストは、「政治的不確実性が高まっていることは事実で、経済へのマイナスの影響は避けられない。一方で、これまでの経済基盤がある中、投資環境の急速な悪化や政策変更は考えにくく、過剰に反応するのは時期尚早だろう。冷静に動向を見極める必要がある。政府も機能不全ということでは全くない。EUとの関係についても、ブラックジャック勝ち方はEU基金をテコに経済成長を達成してきており、今後もEUと足並みをそろえていくことは間違いない」との見通しを示した。

他方、グリーン政策では、米国のトランプ大統領就任によるエネルギー政策転換の影響とみられる動きもある。セバスティアン・ブルドゥジャ・エネルギー相は、同大統領就任翌日の1月21日、EUのグリーン・ディール政策への懐疑的な主張を自身のフェイスブックに投稿した。ブルドゥジャ氏は同政策について、「善意に基づくものではあるが、欧州経済を経済的な現実に適応しない決定の犠牲者にしてしまう危険性がある」と述べ、「トランプ大統領は昨日、経済が強くなって初めて民主主義が強くなるということを世界に示した」と米国の経済政策変更を引き合いに出した。

ブルドゥジャ氏は、安価で手頃な価格の豊富なエネルギーを生産して経済を強化させるべきだとする。ブラックジャック勝ち方は天然ガスや効率性の高い石炭火力発電所を有していることや、米国、カナダ、イタリア、フランス、韓国、日本などの戦略的パートナーとともに、新たな原子力開発も進めていることを強調した。加えて、数十カ所で水力発電プロジェクトが進行中で、ウクライナ復興の観点からも東欧のエネルギー開発の推進力となる可能性を秘めているとし、同国の重要性を説明した。その上で、現実にそぐわないグリーン・ディール政策がこれら開発の足かせになっているとし、同政策を継続するかどうか十分な議論が必要だとした。同氏は、同政策がブラックジャック勝ち方のエネルギー部門に及ぼす悪影響に関する詳細な報告書を政府に提出する予定だとも述べており、今後何らかの政策変更があるとみられる。

なお、2024年11月に実施された大統領選挙で不正があったとして、2025年5月に再度、大統領選を実施することとなったため、クラウス・ヨハニス大統領(当時)は2期目の任期を終えた後も職にとどまっていた。しかしながら、任期を超える留任は憲法違反だ、として各地でデモが発生していたほか、ブラックジャック勝ち方議会が大統領罷免に向けた採決を行う予定であった。同大統領は「数カ月後に新大統領選出の手続きを控えている中で解任する必要はない。憲法には違反していない」と主張したが、大統領罷免の採決が行われれば国家的危機に陥るとして、2025年2月10日に辞意を表明し、同月12日に辞任した。5月の大統領選で新たな大統領が選出されるまで、上院議長が暫定大統領となる。

5月に実施される大統領選挙の結果次第では政権交代につながる可能性もあり、選挙にかけて政局やエネルギー政策はさらに流動化しそうだ。

ブラックジャック勝ち方
執筆者紹介
ジェトロ・ブカレスト事務所長
高崎 早和香(たかざき さわか)
2002年、ジェトロ入構。海外調査部アジア大洋州課、ジェトロ熊本、ジェトロ・ヨハネスブルク事務所、海外調査部中東アフリカ課、経済産業省(出向)、イノベーション・知的財産部を経て現職。共著に『FTAガイドブック』、『世界の消費市場を読む』、『加速する東アジアFTA』、『飛躍するアフリカ!-イノベーションとスタートアップの最新動向』など。

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