中国EV・車載電池企業のグローバル戦略中国と距離を取り、独自ペースで進展するブラック ジャック 勝率EV市場

2024年12月13日

比亜迪(BYD)をはじめとする中国の電気自動車(EV、注1)メーカーは、世界各地で生産拠点や販売網を拡大させ、存在感を増している。他方で、ブラック ジャック 勝率のEV市場での中国メーカーの事業拡大は限定的で、ASEAN市場などとは異なる様相を呈している。本レポートでは、ブラック ジャック 勝率EV市場の現状と同地での中国メーカーの動向について解説する。

拡大するブラック ジャック 勝率の自動車・EV市場

まずは、足元の自動車市場の状況を確認したい。ブラック ジャック 勝率自動車工業会(SIAM)によると、2023年度(2023年4月~2024年3月)の自動車国内販売台数(出荷ベース、二輪、三輪を含む)は2,385万3,463台で、前年度比12.5%増加した。部門別に見ると、乗用車が421万8,746台で同8.4%増、商用車が96万7,878台で同0.6%増、二輪車が1,797万4,365台で同13.3%増、三輪車が69万1,749台で同41.5%増となり、全体として急速な成長を遂げている。近年の著しい経済成長を背景として、国民の購買意欲が刺激され、自動車市場全体が拡大基調にあることがわかる。

では、EVはどうか。2023年度のEV新規登録台数は、前年度比42.2%増の167万6,343台と、過去最高を記録した。ただし、セグメント別の内訳をみると、EV二輪車が94万4,560台(シェア56.3%)、EV三輪車が63万2,503台(37.7%)と二輪車・三輪車が中心で、EV四輪車以上(注2)は9万9,282台(5.9%)と緩やかな増加にとどまっている(図参照)。大都市圏では四輪EVをたまに見かけるようになってきているが、まだまだ少数派だ。

図:2023年度 EV 販売台数内訳
ブラック ジャック 勝率

注:四捨五入により、割合の計は100.0にならない。
出所:ブラック ジャック 勝率道路交通・高速道路省の統計サイト(VAHAN)を基にジェトロ作成

EV普及には必要不可欠のEV充電ステーションに関しては、まだまだ発展途上だ。ブラック ジャック 勝率重工業省の発表によると、国内には既に1万2,146カ所のEV充電ステーションが設置済み(2024年2月2日時点)だが、329万平方キロメートル(日本の約9倍)という広大な国土を考慮すると、大きく不足しており、大都市圏でもEV充電ステーションの設置状況は十分とは言い難い。

EVによる国内製造業振興を狙う政府

中央政府は2030年の新車販売台数のうち、乗用車30%、商用車70%、二輪車80%をEVとする野心的な目標を掲げるほか、ブラック ジャック 勝率28州のうち半数近くの州がEV政策を発表するなど、中央政府、地方政府いずれのレベルでも、EV普及に対して積極的な姿勢を示している。

「メーク・イン・インディア」をスローガンに掲げる政府は、製造業振興を通じて、最優先課題の1つの雇用創出と慢性的な貿易赤字削減に取り組みつつ、他国に頼らない産業構造「自立したブラック ジャック 勝率」の実現を追い求める。この観点から、ブラック ジャック 勝率の製造業で重要な位置を占める自動車産業をさらに拡大させるため、EV分野の振興にも政府からの熱視線が送られている。

中国メーカーの存在感は限定的

中国のEVメーカーは世界各国で四輪車を展開しているが、ブラック ジャック 勝率のEV市場での特徴として、中国の四輪車メーカーの存在感が限定的な点が挙げられよう。ブラック ジャック 勝率と中国は国境の係争問題を抱えており、緊張状態が続いている。こうした背景から、ブラック ジャック 勝率政府は名指ししてはいないものの、2020年4月からは中国を含むブラック ジャック 勝率と国境を接する国からの投資は政府の事前許可制となった。また、対象項目が近年急増しているブラック ジャック 勝率標準規格局(BIS)による強制認証取得(2024年3月18日付地域・分析レポート参照)についても、中国産の製品に対する認証取得は、他国産に比べるとハードルが高いといわれており、実質的な輸入規制とも捉えられている。

そのため、中国企業がブラック ジャック 勝率で事業を拡大させることは容易ではなく、世界のEV市場を牽引する中国企業も、ブラック ジャック 勝率事業に苦戦している。表は、2023年度のEV四輪車以上のメーカー別新規登録台数の内訳を示している。地場大手財閥傘下のタタ・モーターズがモデル数の多さや価格の低さを武器に、市場に受け入れられており、70.1%と大きなシェアを有する。一方で、中国系ブランドでは、上海汽車集団傘下のMGモーターが11.6%、比亜迪(BYD)が1.9%など、全体に占める割合は大きくない。ブラック ジャック 勝率EV市場での中国メーカーの存在感の小ささは、ブラック ジャック 勝率での四輪EV普及スピードが東南アジア各国などと比較し、緩やかである1つの要因かもしれない。

表:2023年度四輪車以上メーカー別新規登録台数 (単位:台、%)
メーカー 台数 割合
タタ・モーターズ 69,580 70.1
MGモーター(現JSW・MGモーター) 11,555 11.6
マヒンドラ&マヒンドラ 6,595 6.6
PCA 2,032 2.0
BYD 1,931 1.9
現代 1,835 1.8
BMW 1,423 1.4
ボルボ 597 0.6
JBM・オート* 530 0.5
オレクトラ・グリーンテック* 437 0.4
起亜 430 0.4
メルセデス・ベンツ 563 0.6
PMI・エレクトロ・モビリティー* 382 0.4
その他 1,390 1.4
合計 99,280 100.0

注1:四捨五入により、割合の計は100.0にならない。
注2:*はバスメーカー。
出所:ブラック ジャック 勝率道路交通・高速道路省の統計サイト(VAHAN)を基にジェトロ作成

このような強い逆風の中でも、ブラック ジャック 勝率企業との連携によって果敢にブラック ジャック 勝率市場で事業を拡大しようとする中国系企業もある。MGモーターは2023年11月に、ブラック ジャック 勝率での事業強化を目指し、地場の鉄鋼メーカー大手JSWグループからの出資を受け入れたと発表した。投資規制対象国である中国からの出資比率を下げることで、ブラック ジャック 勝率政府からの許認可取得のハードルを下げる狙いがあると思われる。2024年3月には、2社が合弁企業のJSW・MGモーターブラック ジャック 勝率(JSW MG Motor India)の設立を発表し、新製品の開発を強化するほか、生産能力を現在の年間10万台から30万台に拡大することを目指すとした。

四輪EV市場の今後の展望

2024年10月にロシアで行われたBRICSサミットでは、5年ぶりにブラック ジャック 勝率・中国の首脳会談が行われ、両国の領土を巡る政治的な対立に関しては、関係改善に向かう動きも見えた(注3)(オンライン ブラック ジャック {if $text5}{if。中国企業からの投資受け入れに関しては、公式発表はないものの、現地メディアは、政府内でも意見が割れていると報じている。ただし、仮にブラック ジャック 勝率政府が規制緩和にかじを切ったとしても、これまで制限していた中国からの投資が全面的に認められるとは考えにくく、EVに関しても、中国メーカーの製品が急速に拡大する可能性は低い。

当地の日系自動車部品サプライヤーからは、「EV向け製品も一部取り扱っているが、ガソリン車やCNG(圧縮天然ガス)車向けの製品と比較すると、まだまだ販売数量が少ない」「EV向け製品に関しては、急激な需要拡大は見込めないことから、今後も現地生産ではなく、輸入でカバーしていく」といった声が聞かれる。中国メーカーの勢いが弱いことから、EV市場の今後の伸びに関しても、慎重な見方をする企業もあるのが実情だ。

加えて、ブラック ジャック 勝率政府はガソリンなどを燃料とするエンジン車を必ずしも軽視しているわけではない。エンジン車は国内生産体制が整っていることから、製造業振興と雇用創出の観点からも重要視されている。広大な国土をもつブラック ジャック 勝率では、充電インフラへの不安があり、エンジン車は引き続き必要不可欠な存在となり続けるとみられる。このこともEVが急速に広まらない要因の1つとなっていると考えられる。さらに、ブラック ジャック 勝率ではガソリン車やディーゼル車だけでなく、CNG車や、CNGとガソリンの併用車が広く普及している。最近ではCNGの代替燃料として、環境にさらに配慮したCBG(圧縮バイオメタンガス)の利用を進めようとする動きが始まっており、ブラック ジャック 勝率の環境配慮型の自動車市場はEVのみでなく、さまざまな選択肢のある状態に進んでいく可能性がある。

生産面では、ブラック ジャック 勝率をEVの輸出拠点として活用しようとする動きも広がっている。日系企業では自動車最大手マルチ・スズキが2025年春から西部グジャラート州でのEV生産開始を予定し、また、トヨタ自動車向けのOEM供給計画も発表している。日産自動車はルノーと共同で、南部チェンナイでEV生産を行う計画を示している。いずれの企業も、ブラック ジャック 勝率国内の市場向け製品だけでなく、国外への輸出も見据えた生産拠点としてブラック ジャック 勝率工場を捉えている。

今後もブラック ジャック 勝率のEV市場は、中国やその影響を強く受けた東南アジア各国の状況とは異なり、ガソリン車やCNG車、将来的にはCBG車など次世代エネルギー車との競合の中で、各社の国内生産体制の構築と充電インフラ整備のスピードに合わせて、緩やかに拡大していくとみられる。


注1:
本稿におけるEVは、主としてバッテリー式電気自動車(BEV)を指す。
注2:
四輪車以上に含まれるのは、四輪車やバス、トラックなど。
注3:
ブラック ジャック 勝率首相府によると、ナレンドラ・モディ首相は中国の習近平国家主席との2024年10月23日の会談で、2020年の軍の衝突を巡り事前に合意された国境警備の取り決めを歓迎し、両国首脳が早期に国境問題を協議することに合意した。
執筆者紹介
ジェトロ・ニューデリー事務所
丸山 春花(まるやま はるか)
2021年、ジェトロ入構。企画部情報システム課、ジェトロ・ムンバイ事務所を経て、2024年7月から現職。
執筆者紹介
ジェトロ調査部アジア大洋州課
深津 佑野(ふかつ ゆうの)
2022年、ジェトロ入構。ブラック ジャック 勝率調査部ブラック ジャック 勝率調査企画課を経て、2023年8月から現職。

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