中国EV・車載電池企業のグローバル戦略全方位輸出戦略を取る中国企業
世界で存在感増す中国NEV企業(前編)
2024年12月12日
中国の自動車輸出台数は、2023年に日本を抜いて世界1位となり、2024年も2割を超える増加が見込まれている。新エネルギー車(NEV、注)輸出台数も拡大し続けており、欧米とは通商摩擦の様相を呈する一方で、グローバルサウスなど新興国は自国の産業振興を念頭に、総じて歓迎の姿勢を示している。過当競争が続く中国国内市場から、利益率の高いブラック ジャック トランプ やり方市場へ向かう、中国NEV企業の動きが本格化している。
本稿では、中国の自動車市場および輸出動向について統計資料などを基に分析するとともに、中国NEV企業のブラック ジャック トランプ やり方進出事例や相手国政府の対応状況などから、中国NEV企業のブラック ジャック トランプ やり方展開の実態を2回に分けて紹介する。前編では、中国国内市場および輸出状況につき深堀りする。
AI搭載のNEVが台頭する中国自動車市場
2023年における、ブラック ジャック トランプ やり方販売台数は3,009万台(輸出を含む)を超え、過去最高の販売台数を記録した。これは世界の自動車販売台数の32.5%を占める規模である。NEVは950万台と、総販売台数の31.6%を占め、世界4位の自動車市場である日本の全販売台数の約2倍となった。
世界最大の自動車市場となったブラック ジャック トランプ やり方販売台数は2024年も増勢を維持しており、1~9月は前年同期比2.4%増の約2,157万台、NEVは32.5%増の832万台と大きく伸びており、全体に占める割合は38.6%に達した。ただ、国内販売だけに目を向けると2.4%減の約1,726万台で、単月では4カ月連続で前年割れしている。輸出向けと買い替え促進策などでNEVの販売は伸びているものの、内燃機関車を中心に国内需要は低迷している(2024年11月27日付地域・分析レポート「日本の自動車企業が三重苦に直面(1)急激なNEV化が打撃」参照)。
その中にあっても、特に販売台数を大きく伸ばしているのがBYDである。BYDは2022年、2023年と2年連続でNEV販売台数、ならびに内燃機関車も含めた全乗用車販売台数においても1位となっている。NEVの販売台数では2年とも3割超のシェアを占めた。中国自動車流通協会乗用車市場情報聯席分会(CPCA)の発表によると、2023年は前年比50.9%増の239万台のNEV乗用車を販売し、シェアは32.7%に達した。2位のテスラ(60.4万台、36.8%増、シェア8.3%)、3位の上海通用五菱(45.2万台、1.2%増、6.2%)を大きく引き離している。2024年1~9月は、前年同期比32.2%増の274万台を販売しており、シェアは34.6%となった。2位はテスラ(67.6万台、3.3%減、シェア8.5%)、3位は吉利汽車(54.6万台、93.1%増、シェア6.9%)だった。
BYDの好調とともに、2024年の特徴として挙げられるのは、ファーウェイ(華為技術)と共同開発した自動車メーカーの躍進である。ファーウェイは、自動車設計やユーザーエクスペリエンス(UX)など、自社開発のOSやスマートコックピット、LiDAR、カメラ等のハードウェア等、複数の異なる技術要素を兼ね備えたスマートソリューションを自動車OEM(完成車メーカー)に提供している。例えば、賽力斯汽車(セレス汽車)とはNEVブランドの「問界(AITO)」を、奇瑞汽車とは「智界汽車(Luxeed)」をそれぞれ共同運営している。セレス汽車は、2024年1~9月の販売台数が、前年同期比279.0%増(約3.8倍)の29.5万台と急増し、全体で7位に躍進した。奇瑞汽車も、625.2%増(約7.3倍)の29.3万台で8位にランキングされた(表1参照)。
表1:メーカー別NEV販売ランキング
順位 | メーカー名 |
台数 (万台) |
前年比増減 (%) |
シェア (%) |
---|---|---|---|---|
1 | BYD | 239.0 | 50.9 | 32.7 |
2 | テスラ | 60.4 | 36.8 | 8.3 |
3 | 上海通用五菱 | 45.2 | 1.2 | 6.2 |
4 | 広汽埃安(AION) | 44.2 | 107.0 | 6.1 |
5 | 理想汽車 | 37.7 | 178.8 | 5.2 |
6 | 吉利汽車 | 31.2 | 97.7 | 4.3 |
7 | 長安汽車 | 28.0 | 42.6 | 3.8 |
8 | 長城汽車 | 20.7 | 93.4 | 2.8 |
9 | 蔚来汽車(NIO) | 16.0 | 33.1 | 2.2 |
10 | 小鵬汽車 | 13.4 | 10.9 | 1.8 |
順位 | メーカー名 |
台数 (万台) |
前年同期比 (%) |
シェア (%) |
---|---|---|---|---|
1 | BYD | 273.6 | 32.2 | 34.6 |
2 | テスラ | 67.6 | △ 3.3 | 8.5 |
3 | 吉利汽車 | 54.6 | 93.1 | 6.9 |
4 | 長安汽車 | 40.7 | 44.6 | 5.2 |
5 | 理想汽車 | 34.4 | 64.0 | 4.3 |
6 | 上汽通用五菱 | 34.2 | 40.0 | 4.3 |
7 | セレス汽車 | 29.5 | 279.0 | 3.7 |
8 | 奇瑞汽車 | 29.3 | 625.2 | 3.7 |
9 | 広汽埃安(AION) | 22.7 | △ 35.4 | 2.9 |
10 | 長城汽車 | 21.1 | 24.0 | 2.7 |
出所:中国自動車流通協会乗用車市場情報聯席分会(CPCA)
ファーウェイはこのほか、4位に入った長安汽車とも投資提携協定を締結し(2023年12月4日付ビジネス短信参照)、SDV(ソフトウエア定義型自動車、Software Defined Vehicle)を開発している。また、長安汽車傘下のNEVメーカーであるアバター・テクノロジーとセレス汽車は、ファーウェイが全額出資するスマートカー事業子会社である引望智能技術の株式をそれぞれ10%取得するなど提携を深めている(セレスと長安汽車、オンライン カジノ ブラック)。BYDも、高級車ブランド「ファン・チェン・パオ(方程豹)」でファーウェイとのスマート運転協力協定の締結を発表(関連ブラック ジャック ゲーム ルール)しており、ファーウェイは各社との提携により急速に存在感を高めている。
中国ではファーウェイに限らず、2024年の北京モーターショーで一躍話題となった小米をはじめ、スマートデバイスメーカーが自動車メーカーと提携をしながら、デジタル技術や人間と機械が相互にやり取りできる仕組みである、ヒューマン・マシン・インターフェース(HMI)に関して高度な取り組みを行うケースが目立つ。中国のNEV市場は、駆動がモータになり電気で動く車両だけではなく、SDVとして、内装とデジタル技術の融合であるスマートコックピットや自動・支援運転など、クルマとAI(人工知能)が融合した開発が急速に進んでいる市場である。これらスマート化の出来・不出来が、特に若い世代(20~30代)の購買を左右する。テクノロジーと新しいHMIに対する期待が高く、NEV市場の成長を牽引しているのがこの世代である。
グローバルサウスなど新興国向け輸出が大きく拡大
中国汽車工業協会(CAAM)の発表によると、ブラック ジャック トランプ やり方2021年以降、年間で100万台を超えるペースで急拡大しており、2023年は前年比57.9%増の491万台と、日本の442万台を抜き世界1位となった。NEVの輸出台数は77.2%増の120万台と大きく増加し、輸出台数に占めるシェアは24.5%と全体の約4分の1を占めるに至った。
2024年1~9月の自動車輸出台数は、前年同期比27.3%増の431万台となり、既に2023年通年の491万台に迫る勢いである。しかし、NEV輸出台数は12.5%増の92.8万台と増勢を維持しているものの、伸び率は大きく鈍化傾向にある。輸出台数に占めるシェアも21.5%に縮小した(図参照)。急拡大してきたNEV輸出やBYDに注目が集まる傾向が強いが、輸出の8割弱が非NEV(内燃機関車)であり、かつ順調に伸びていることに留意する必要がある。これら中国企業は輸出先市場の需要をみつつ、全方位(マルチパスウェイ)戦略をとっている。長安汽車、奇瑞汽車などはファーウェイとの提携を強化し、今後はSDVの輸出を強めてくることが想定される。MGブランドなどを有する上海汽車、ボルボなどを傘下に置くとともに複数ブランドを展開する吉利汽車など、伝統的な自動車メーカーの動向にも目を向けるべきであろう。
中国の税関統計を基に、乗用車全体、BEV(バッテリー式電気自動車)、PHEV(プラグインハイブリッド車)の輸出台数を見ると、2023年は乗用車全体(HS8703)が前年比47.9%増の539万台、BEV(HS870380)が2.4倍の155万台、PHEV(HS870360、870370)が71.4%増の14万台だった(表2参照)。輸出先の国・地域別では、乗用車全体は1位ロシア、2位メキシコ、3位米国、4位ベルギー、5位英国の順となった。BEVではベルギー、タイ、英国、PHEVではブラジル、ベルギー、ウズベキスタンが上位にある。
表2:中国の国・地域別自動車輸出台数(2023年)
順位 | 国名 | 台数 | 前年比(%) |
---|---|---|---|
1 | ロシア | 814,359 | 5.3倍 |
2 | メキシコ | 439,228 | 54.2 |
3 | 米国 | 403,798 | △ 12.3 |
4 | ベルギー | 228,222 | 7.7 |
5 | 英国 | 218,501 | 40.6 |
6 | オーストラリア | 203,594 | 36.5 |
7 | サウジアラビア | 186,776 | △ 9.6 |
8 | タイ | 183,568 | 78.8 |
9 | フィリピン | 160,334 | 19.5 |
10 | アラブ首長国連邦 | 154,790 | 68.6 |
合計 | 5,390,158 | 47.9 |
順位 | 国名 | 台数 | 前年比(%) |
---|---|---|---|
1 | ベルギー | 175,437 | 19.1 |
2 | タイ | 156,670 | 104.9 |
3 | 英国 | 125,314 | 31.3 |
4 | フィリピン | 115,666 | 71.6 |
5 | スペイン | 92,399 | 127.3 |
6 | オーストラリア | 86,437 | 140.7 |
7 | インド | 58,577 | 0.4 |
8 | オランダ | 55,002 | 261.8 |
9 | イスラエル | 50,541 | 67.0 |
10 | バングラデシュ | 49,957 | △ 1.8 |
合計 | 1,547,128 | 135.4 |
順位 | 国名 | 台数 | 前年比(%) |
---|---|---|---|
1 | ブラジル | 30,615 | 4.9倍 |
2 | ベルギー | 19,984 | △ 58.2 |
3 | ウズベキスタン | 14,720 | 409倍 |
4 | キルギス | 13,610 | 170倍 |
5 | 英国 | 12,074 | 107.6 |
6 | ロシア | 11,084 | 236倍 |
7 | ドイツ | 5,973 | 54.4 |
8 | フランス | 4,833 | △ 48.7 |
9 | スペイン | 3,339 | 186.1 |
10 | メキシコ | 3,279 | 298倍 |
合計 | 138,631 | 71.4 |
出所:中国税関統計からジェトロ作成
乗用車全体では、ロシア向けの輸出台数が前年比5.3倍と急増しており、2位のメキシコも54.2%増と高い伸びを示した。その輸出の大部分がハイブリッド車(HV)を含む内燃機関車となっている。4位のベルギー、5位の英国、8位のタイ、9位のフィリピンはBEVの割合が比較的高い。なお、3位の米国はゴルフカートなど(HS870310)の輸出が33.6万台と大部分を占めており、そのほかほぼ内燃機関車となっている。
BEVの最大輸出先であるベルギーは、前年比19.1%増と2割近い増加となった。輸入された中国製NEVは、同国から欧州各国へ輸送されている。2位はタイで約2倍に拡大、3位は英国で31.3%増だった。PHEVは、特に新興国向けの増加が著しい。ブラジルが3万台(4.9倍)を超えたほか、ウズベキスタン(409倍)、キルギス(170倍)、ロシア(236倍)、メキシコ(298倍)がそれぞれ急増した。2022年9月以降、「一帯一路」沿線国を結ぶ国際定期貨物列車「中欧班列」でのNEV輸送が開始するなど、欧州や中央アジア、ロシア向けには、海上輸送に加え、鉄道を使った陸路による輸出も大きく増えているものとみられる。
2024年1~9月については、PHEVが前年同期比2.5倍と大きく拡大したものの、乗用車全体とBEVの伸び率は鈍化しており、特にBEVの鈍化が顕著となっている(表3参照)。国・地域別にみると、乗用車全体ではロシアが引き続きトップで、4割近い伸びを示している。アラブ首長国連邦、ブラジルが急増したほか、米国向けは43.5%増と2位に順位を上げた。4月の内燃機関車を含めた関税引き上げを前に駆け込み輸出もあったものとみられるが、ゴルフカートなどの輸出台数が34.7万台と2023年通年を上回っていることが大きく影響したようだ。
BEVでは、引き続きベルギー向けがトップで、前年同期比45.3%増と2023年通年よりも伸びが拡大したほか、ブラジルとアラブ首長国連邦がそれぞれ約4倍、約2.4倍となるなど新興国向けは総じて順調だった。なお、トップ10には入らなかったものの、11位のインドネシアは4.5倍の4万台、13位のメキシコも4.5倍の3.5万台、14位の韓国が2.5倍の3.3万台と大きく伸長した。その一方で、2位のタイは、中国NEV企業の現地生産が進んでいること、国内の自動車市場が低迷していることなどもあって、25.8%減少した。オーストラリアやスペインは、2023年の急増の反動もあってか、3割前後の減少となった。
PHEVは、1位のブラジルが前年同期比3.8倍、次ぐメキシコが19.7倍、ウズベキスタンが83.5%増、キルギスが5.7倍など、上位10カ国ではベルギーを除き、全てが大きく増加した。特にブラジル、メキシコ、ウズベキスタン、キルギスは2023年に続き急増しており、ロシアやカザフスタンを含めた新興国向けにPHEVが継続して大量に輸出されていることが分かる。また、英国やドイツ、オーストラリア向けも高い伸びを示している。
表3:中国の国・地域別自動車輸出台数(2024年1~9月)
順位 | 国名 | 台数 | 前年比(%) |
---|---|---|---|
1 | ロシア | 781,350 | 37.3 |
2 | 米国 | 419,712 | 43.5 |
3 | メキシコ | 368,182 | 20.4 |
4 | アラブ首長国連邦 | 223,870 | 112.0 |
5 | ベルギー | 226,475 | 29.5 |
6 | ブラジル | 213,614 | 193.7 |
7 | 英国 | 164,114 | 5.6 |
8 | サウジアラビア | 153,191 | 10.0 |
9 | オーストラリア | 128,526 | △ 20.6 |
10 | フィリピン | 110,609 | △ 2.7 |
合計 | 4,958,285 | 29.1 |
順位 | 国名 | 台数 | 前年比(%) |
---|---|---|---|
1 | ベルギー | 195,366 | 45.3 |
2 | タイ | 85,383 | △ 25.8 |
3 | 英国 | 84,306 | △ 17.5 |
4 | フィリピン | 80,918 | 2.2 |
5 | ブラジル | 66,213 | 298.1 |
6 | インド | 60,695 | 19.4 |
7 | アラブ首長国連邦 | 50,585 | 136.4 |
8 | オーストラリア | 49,796 | △ 28.1 |
9 | スペイン | 43,475 | △ 32.9 |
10 | イスラエル | 42,247 | 29.1 |
合計 | 1,271,580 | 13.3 |
順位 | 国名 | 台数 | 前年比(%) |
---|---|---|---|
1 | ブラジル | 71,662 | 282.1 |
2 | メキシコ | 25,584 | 1871.0 |
3 | ウズベキスタン | 20,754 | 83.5 |
4 | キルギス | 13,625 | 470.3 |
5 | ロシア | 10,089 | 21.4 |
6 | 英国 | 9,985 | 44.8 |
7 | ドイツ | 9,297 | 130.0 |
8 | ベルギー | 8,277 | △ 56.3 |
9 | オーストラリア | 7,165 | 295.6 |
10 | カザフスタン | 6,754 | 707.9 |
合計 | 222,320 | 145.0 | |
出所:中国税関統計からジェトロ作成
中国自動車流通協会乗用車市場情報聯席分会(CPCA)のデータを基にジェトロで計算したところによると、企業別のNEV輸出台数は、2023年は1位のテスラが前年比24.0%増の33万7,401台、2位のBYDが4.5倍の24万8,012台、3位の上海汽車乗用車が58.0%増の21万7,979台、4位の易捷特新能源汽車(東風eGT)が25.0%減の4万7,957台、5位の吉利汽車が9.0%減の2万256台だった。これら上位5社が中国のNEV輸出全体に占める比率は7割を超えており、テスラ1社で約2割を占める。2024年1~9月では、BYDが29.4万台、テスラが21.6万台、上海汽車乗用車が6.0万台、奇瑞汽車が3.7万台、PoleStarが3.5万台などとなっている。
テスラの上海ギガファクトリーは現地調達率が95%以上、一次サプライヤーは約360社に上るといわれており、かなりの現地化を実現している。上海工場は欧州、ASEAN、オーストラリア向けなどへの輸出のハブとなっている。BYDは、2021年にノルウェー、ブラジルなど南米への輸出を開始、2022年は欧州やタイなどのアジアを中心に輸出販売に力を入れてきた。現在は70以上の国・地域に展開しており、日本でもATTO3などを中心に販売を進めている。上海汽車乗用車は、2007年に買収したMGブランドの販売ルートを生かし、欧州やインド、タイなどで販売を進めている。今後は、中東や南米を含む80カ国に展開していくとしている。
- 注:
- NEVとは、New Energy Vehicleの略。NEVには、バッテリー式電気自動車(BEV、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)、燃料電池電気自動車(FCV)が含まれる。
世界で存在感増す中国NEV企業
- 執筆者紹介
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ジェトロ調査部中国北アジア課長
清水 顕司(しみず けんじ) - 1996年、ジェトロ入構。日本台湾交流協会台北事務所、ジェトロ・北京事務所、企画部ブラック ジャック トランプ やり方地域戦略主幹(北東アジア)、ジェトロ・広州事務所長などを経て、2022年12月から現職。