カジノ ゲーム 無料
財政政策のプラス効果発現にはタイムラグ
2024年11月25日
2024年11月の大統領選挙で勝利した共和党のドナルド・トランプ次期大統領は選挙期間中、家庭向け・企業向けに多岐にわたる財政政策を発表した。本レポートでは、その中身を振り返るとともに、政策の実現可能性や実現した場合の影響について検証する。なお、あくまで執筆時点で把握できた内容を基に、筆者が想定しているシナリオを記載しているが、トランプ新政権における財政政策の先行きについては不確定事項が極めて多く、相当の幅をもって見る必要があることに留意いただきたい。
選挙中に掲げられたトランプ氏の主な財政政策
(1)家庭向け施策
家庭向け施策として注目されるのは、2025年末に期限を迎える、いわゆるトランプ減税(2017年に成立した税制改革法:TCJA)の延長・恒久化だ。TCJAに含まれる個人向け減税の中で、最も注目されるのは所得税減税とみられる。所得税率の7階層のうち、5階層で所得税を軽減するもので、高所得者層も含めて対象となっている(表1参照)。
階層 | 課税所得(ドル) | TCJA下での税率 | 延長されない場合の税率 |
---|---|---|---|
1 | 0~11,600 | 10.0% | 10.0% |
2 | 11,600超~47,150 | 12.0% | 15.0% |
3 | 47,150超~100,525 | 22.0% | 25.0% |
4 | 100,525超~191,950 | 24.0% | 28.0% |
5 | 191,950超~243,725 | 32.0% | 33.0% |
6 | 243,725超~609,350 | 35.0% | 35.0% |
7 | 609,350超 | 37.0% | 39.6% |
注:課税所得は、いずれも単身世帯の場合(2024年課税年度)。
出所:議会調査局(CRS)
このほか、TCJAの下、標準控除を約2倍にする措置(単身世帯の場合、2018年時点で6,500ドルから1万2,000ドルに引き上げ)、児童税額控除の引き上げ(年間最大1,000ドルから2,000ドルに引き上げ)、住宅ローンの利息上限の引き下げ(年間100万ドルから75万ドルに引き下げ)カジノ ゲーム 無料が実施されている。これらの措置は、相対的に高所得者層への恩恵が大きい内容となっており、延長が実現すれば高所得者層による第2住宅への投資カジノ ゲーム 無料に効果を発揮する可能性がありそうだ。
TCJA以外で注目される施策は、年金カジノ ゲーム 無料社会保障給付への課税免除、チップや残業代に対する課税免除が挙げられる。社会保障給付への課税免除については、現行では単身世帯で年収2万5,000ドル以上の社会保障給付を受給する者に対して50~85%の課税が実施されているが、これらの課税を廃止することを提案している。チップ課税は、給与所得として課税対象となっているチップ収入を全額対象外とすることで、レストランカジノ ゲーム 無料で働く労働者に恩恵を与えるものだ。残業代に対する課税免除に関しては、所得による線引きや上限カジノ ゲーム 無料制度設計に関する具体的な情報はなく、どの程度の免除となるのか不明だ。
(2)企業向け減税
企業向け施策として、最も注目されるのが法人税の引き下げだ。在米日系企業からも、直接的に収益の向上につながり得るものとして期待が高い。選挙戦中に言及された案では、法人税率を現行の21%から20%に引き下げるとともに、米国内で製造する企業に対しては特別に15%まで引き下げるとした。「米国内で製造する企業」が新たに米国に製造拠点を移した企業全てを指すのか、あるいは米国内生産に一定程度のシェアが必要になるのかカジノ ゲーム 無料は明らかになっていない。もっとも、2017年のTCJA導入前には、同じように製造業の国内回帰を進める目的で、米国内で製造、生産、栽培、抽出することで得られた所得について最大9%の控除を認める国内生産活動控除(Domestic Production Activities Deduction)という仕組みが存在しており、これが1つのひな型となる可能性がありそうだ。
次いで、企業の期待が高いのは、TCJAの下で実施されていた設備投資の100%即時償却の復活やパススルー課税に関する特例措置の延長カジノ ゲーム 無料だろう(特集:トランプ政権の1年を振り返る2017年トランプ政権最大の成果、ギャンブル)。特に設備投資の即時償却に関しては、新たな設備投資を検討する企業にとって初期のキャッシュフローを改善させることになるため、人工知能(AI)や自動化カジノ ゲーム 無料への投資を志向する企業にとっては有利な環境となり得る。ただし、こちらも法人税と同様に「米国内で製造する企業」に限定される可能性もあり、具体的な制度設計の動向を注視する必要がある。
財政的制約
こうしたさまざまな減税措置がうたわれているものの、現実にはこれら全てを実行できる可能性は低いと考える。仮に上記で挙げたような施策を全て実施した場合に、どの程度の追加的な財源が必要となるのかを複数のシンクタンクが試算している。その中の1つである「責任ある連邦予算委員会(CRFB)」の試算によると、選挙期間中に掲げられた政策を全て実行する場合、今後10年間で約7兆~16兆ドルの追加的な財政負担が必要になる。これに対して、歳入強化・歳出削減策として掲げられている、(1)対中関税率の60%への引き上げカジノ ゲーム 無料の関税引き上げ、(2)「グリーン・ニューディール」の廃止、(3)政府支出における無駄・不正の撤廃、(4)教育省や環境保護庁(EPA)カジノ ゲーム 無料一部政府機関の縮小・廃止カジノ ゲーム 無料で賄える額は、2兆6,000億~5兆5,000億ドル程度にとどまる、と試算されている。この結果、現時点でトランプ氏が示している計画では必要な財源の3分の1程度しか確保できない見込みとなっており、残りの部分は財政赤字の拡大で賄うこととなる。なお、トランプ氏の選挙陣営は、この試算に対して、トランプ減税カジノ ゲーム 無料による企業業績の改善に伴う法人税収の増加や、企業が雇用を増やすことで生まれる雇用税の増加カジノ ゲーム 無料の効果が十分に織り込まれていない、と主張している。しかし、第1次トランプ政権ではトランプ減税に伴う雇用の増加は限定的であり、トランプ陣営の主張は容易に織り込み難く、CRFBの想定はおおむね妥当と言えるだろう。
試算には幅があるにせよ、トランプ氏の政策を実施するためには今後10年間で追加的に10兆ドル弱の国債発行を許容する必要がある。ここで問題となるのが連邦債務上限だ。米国では、発行できる財政赤字の規模(債務上限)が法律で定められており、現行の上限は31兆4,000億ドルとなっている。現在は2023年6月に成立した財政責任法に基づいて一時的に適用が停止しているものの、同法は2025年1月1日に期限を迎えるため、それ以降は債務上限が復活する。なお、2024年11月時点の債務残高は35兆ドル超だ。このため、債務上限の引き上げ、ないし適用停止のためのスキームを構築しない限り、さらなる財政赤字の拡大は不可能となる。しかし、10兆ドル弱の債務上限の引き上げは、新型コロナウイルス禍における債務上限の引き上げ総額に匹敵する規模であり、新たな財政支出のみを理由として、これだけの大規模な引き上げが連邦議会で許容されるかは大いに疑問だ。上院では、財政調整措置と呼ばれる手続きにより、債務上限や歳出に関する法案はフィリバスター(議事妨害)を回避して過半数で可決できるため、債務上限の引き上げ自体は可能とみる向きもある。一方、トランプ氏が掲げる財政政策には、社会保障給付への課税免除カジノ ゲーム 無料、財政調整措置の適用外とみられる施策も含まれている。これは、社会保障に関する変更カジノ ゲーム 無料を財政調整措置に含めることを禁止する「バード・ルール」があるためで、これに該当する施策を含めて債務上限引き上げを実施する場合に必要な票数は、通常の法案と同じく60票となる。2025年1月に始まる新議会で上院における共和党の議席数は53議席となる見通しで、同党だけでは60票に届かない。そのため、超党派での合意が必要となり、共和党は一定の妥協を迫られる可能性が高い。バード・ルールに該当する施策を切り離す場合には単独可決も可能だが、その場合は財政支出の規模は縮小する。
また、共和党は下院で過半数を確保したものの、下院共和党内には「フリーダムコーカス」と呼ばれる、これまで歳出削減を強硬に主張してきた、保守強硬派のグループが存在しており、彼らが反対する場合には、2024年度(2023年10月~2024年9月)歳出法案やつなぎ法案の採決と同様、法案可決に民主党の協力が必要となる状況も想定される。また、仮に議会で可決されたとしても、金利の大幅な上昇や米国債の格付けの引き下げカジノ ゲーム 無料は免れ得ないだろう。こうしたハードルが存在することを踏まえると、与野党が合意できる政策の範囲内で財政拡大は実施されるものの、その規模は当初の計画から縮小される可能性が高いとみる。
財政政策の枠組みはいつごろ明確化されるのか
前述のように厳しい制約が伴うこともあり、財政政策の全体像が明確化するにはしばらく時間が必要となりそうだ。2025年2月ごろに示される2026年度予算教書において新政権が想定する財政政策の枠組みが示された後、初夏ごろと想定されるポスト財政責任法の策定作業を通じて実現可能な財政政策の上限が確定し、2026年度歳出法案の審議の中で各施策の概要が固まっていく流れになると予想される。
なお、いまだ成立していない2025年度予算については、内容の大幅な組み換えは困難と思われるものの、例えば、かねて共和党からの批判が強いフードプログラムを含む農業関連予算カジノ ゲーム 無料、現時点で可決されていない歳出法案を中心に小幅ながら変更を加えて、トランプ新政権の政策を先行的に実施することも考えられる。そのほか、関税政策や移民政策の運用変更カジノ ゲーム 無料大統領令で可能な事項も存在するため、こうした施策は2026年度予算を待たずに実施される可能性がありそうだ。とはいえ、基本的にはトランプ次期政権の財政政策が本格的に反映されるのは2026年度予算が最初になると思われ、その姿は早くても2025年夏までは明確にならない可能性が高そうだ(表2参照)。
年月 | イベント |
---|---|
2024年12月20日 | 2025年度つなぎ予算期限(2025年3月まで延長?) |
2025年1月1日 | 財政責任法の期限、債務上限復活 |
1月20日 | トランプ新大統領就任(大統領令による一部施策の先行実施) |
2~3月 | 予算教書、税制改革案の骨子発表(政策のアウトライン発表) |
3月末? | つなぎ予算期限? |
4月30日 | 2025年度予算成立期限(財政責任法に伴う予算の強制削減発動) |
春~初夏ごろ? | 債務上限交渉期限→2026年度予算上限設定 |
10月1日 | 2026年度スタート→制度設計のアウトライン確定 |
出所:米国財務省資料カジノ ゲーム 無料からジェトロ作成
2026年度予算が検討されていく中で、同時に財源確保の一環として、共和党政策綱領でも言及されたグリーン・ニューディールの廃止、特にインフレ削減法(IRA)の見直しカジノ ゲーム 無料についても検討されることとなる。新議会では、共和党が大統領職、上下両院を制する「トライフェクタ」を実現しているため、理論上はIRA自体の廃止も決議し得る状態にある。しかし、IRAに関しては、未執行の助成金(EPAが運用する気候変動対策基金カジノ ゲーム 無料)の廃止については共和党内で大きな異論は見られないものの、クリーンエネルギー生産カジノ ゲーム 無料に対する税額控除については見解が大きく割れている()。このため、IRAの全廃に必要な票数を集めることは困難とみられ、マイク・ジョンソン下院議長(共和党、ルイジアナ州)もIRAについては「大槌(おおづち)ではなく、メスを使うべき」と発言するカジノ ゲーム 無料、規則の見直しがベースラインとなりそうだ。規則の見直しについては、クリーンエネルギー生産に対する税額控除である内国歳入法(IRC)45Yや、太陽光パネルや風力発電用ブレードの生産・販売に対する税額控除であるIRC45X、クリーン水素の生産・販売に対する税額控除であるIRC45Zカジノ ゲーム 無料の扱いが焦点となろう。特にIRC45Xに関しては、「太陽光パネルを製造する中国企業に対して米国民の税金が投入されている」という批判が出ており(関連ブラック ジャック ルール ディーラー)、例えばIRAにおいて電気自動車(EV)の購入に対する税額控除(IRC30D)で既に導入されている「懸念すべき外国の事業体」の概念をIRC45Xにも導入することカジノ ゲーム 無料が提起されることになりそうだ。他方で、IRC45Xに関しては、共和党州で地元から歓迎されているプロジェクトも多く(インフレ削減法に伴うクリーンエネルギー投資、ブラック)、見直しには産業界や各地域からの反発も予想される。IRC45Xに関する規則は、2022年8月に法律が制定されてから規則案を発表するまでに16カ月、規則案に対する産業界カジノ ゲーム 無料からの意見を踏まえた調整にさらに10カ月を要しており、見直す場合も同様にかなりの時間を要する可能性が高い。このため、変更後の具体的な姿が見えてくるのは早くとも2025年後半以降となりそうだ。
新政権の財政政策が実体経済に与える影響
トランプ新政権による財政政策は、米国の実体経済にどのような影響を与えるだろうか。まず、おおむね2025年上半期までの短期的な影響についてみると、(1)産業政策の行方がしばらくの間明確にならないこと、(2)財政悪化への懸念がくすぶり続けることや、関税や移民に関する施策の早期実施が期待インフレ率に影響を及ぼすことカジノ ゲーム 無料を背景として、金利が高止まりすることカジノ ゲーム 無料が特に影響する要素となると考える。これらの要素は2025年上半期における住宅投資のほか、IRAに関連する業種の設備投資も下押しするだろう。もっとも、設備投資についてはカテゴリーによってバラつきが見られると思われ、AIカジノ ゲーム 無料知的財産分野への投資や、既に稼働が決まっている工場への機器の導入カジノ ゲーム 無料はさほど影響を受けないかもしれない。
2025年下半期を含めた中期的な影響としては、(1)上述のとおり財政の枠組みが明確化し、現実的な路線に落とし込まれることで、債券市場が落ち着きを取り戻すとともに、(2)税制改革の姿が明確になることで、企業が新たな設備投資判断を下しやすくなり、(3)高所得者層への恩恵が大きい各種の減税措置が延長される見通しがはっきりすることで、これらの層による不動産や金融資産への投資が活性化する、カジノ ゲーム 無料のプラスの効果が発現し始める可能性があると考える。他方で、先行的に実施された関税措置カジノ ゲーム 無料の影響が徐々に発現する可能性があり、一部ではインフレ率の上昇が見られ始めるかもしれない。ゴールドマン・サックスは、平均関税率が1ポイント引き上げられた場合、これに応じてコアインフレ率も0.1ポイント上昇するとしており、対中関税率の引き上げだけでも平均関税率を3ポイント弱程度押し上げると試算している。また、移民政策の変更の影響も出始め、労働供給の増加が大きく鈍化する可能性もある。もっとも、労働市場の緩やかな減速傾向が継続する中にあっては、インフレ率への影響は限定的かもしれない。
2026年度予算が執行され始めた場合の長期的な影響については、現時点では不確定要素があまりに多く何とも言えないが、設備投資の特別償却や法人税減税カジノ ゲーム 無料が実現すれば、第1次トランプ政権時にみられたのと同様、ソフトウエアや研究開発カジノ ゲーム 無料知的財産分野への投資が活性化し、設備投資を牽引するとともに、生産性の向上も期待される。他方で、関税政策や移民政策カジノ ゲーム 無料が全面的に実装されることに伴うマイナスの影響も顕在化しそうだ。ピーターソン国際経済研究所は、(1)移民を830万人国外追放する、(2)中国に60%、その他の国々に10%の一律関税を適用し、他国が報復措置を講じる、(3)連邦準備制度理事会 (FRB)に対する大統領権限を強化する、という3つのシナリオが全て実施された場合、2026年までにインフレ率を最大7.4ポイント押し上げ、2028年までにGDPを最大9.7ポイント押し下げるとの試算結果を発表している。やや極端なシナリオの観もあり、筆者はこの全てが実現するとは考えていないものの、部分的にこうしたシナリオが実現するリスクは念頭に置いておく必要があるだろう。また、本レポートではトランプ氏が主張する規制緩和や政府機関の効率化カジノ ゲーム 無料による効果は盛り込んでいないが、実際にはこれらの要素が2025年における政策の下押し圧力を一部軽減する可能性もあるだろう。
- 執筆者紹介
-
ジェトロ ニューヨーク事務所 調査担当ディレクター
加藤 翔一(かとう しょういち) - 2009年、内閣府入府。骨太の方針の策定や世界経済の分析、子育て支援に従事したほか、内閣官房や農林水産省、消費者庁カジノ ゲーム 無料に出向し、地方活性化に向けた施策等を担当。2023年7月から現職。