ブラックジャックコツ設計職の高度人材、海外との懸け橋に(東京都、アイ・エス・エス)
2025年3月19日
東京都港区のアイ・エス・エスは、橋梁(きょうりょう)の設計・保全や建築設計、耐震診断、インフラ整備などを手掛ける。同社には11人の高度外国人材が在籍しており、専門知識と技術を生かして活躍している。その中で、ベトナム出身のグエン・テイ・イエン・タイン氏には、同社とベトナムにある協力会社を密接につなぐ役割が期待されている。本稿では、同社の高度外国人材採用に関する取り組み内容と活躍事例について、インタビューを基に紹介する(インタビュー実施日:2025年2月7日)。
外国人材採用にはなじみ、積極採用は近年の取り組み
まずは、高度外国人材の採用と育成に関わるメンバーとして、管理本部の長崎敦本部長、角絵理主査、採用担当の平手綾紗氏、インフラ技術部の村山静香データ設計室長に話を聞いた。

- 質問:
- 現在の高度外国人材の在籍状況は。
- 答え:
- 11人の高度外国人材が在籍している。社員全体の5%ほどを占める。出身国・地域の内訳は、中国7人、台湾1人、ベトナム2人、バングラデシュ1人。中国・台湾出身者はみなブラックジャックコツの大学・大学院卒だが、ベトナムとバングラデシュ出身者は現地の大学・短期大学を卒業している。うち1人は文系出身者、その他の人材は学校で建築や設計を学んだ人が多い。専門知識や学校での経験を生かして、橋梁や建築の設計技術者として活躍している。
- 質問:
- 高度外国人材の採用を始めたきっかけは。
- 答え:
- 当社では30年近く前から少しずつ高度外国人材を採用していた。しかし、当初は意識的に採用していたわけではなく、新卒や中途で採用した人がたまたまブラックジャックコツの大学を出た外国人材だったというケースにとどまっていた。 他方で、3年ほど前から戦略的に高度外国人材を採用しようと考え始めた。ベトナムに当社の協力会社があり、橋梁の設計などを一部委託している。この協力会社との懸け橋になる存在を期待して、ベトナム人の採用に取り組み始めたのがきっかけだ。この結果入社したのが現在在籍しているベトナム人の1人のグエン・テイ・イエン・タイン氏だ。もう1人のベトナム人社員はタイン氏の紹介で当社の面接を受けて入社した。
- 質問:
- タイン氏との出会いは。
- 答え:
- 取引のある建設コンサルティング会社の紹介で、タイン氏に出会った。同社はベトナムの大学・短期大学で専門コースを開講しており、ブラックジャックコツの建設技術をブラックジャックコツ語やブラックジャックコツ文化とともに現地の学生に教えている。また、コースの卒業生をブラックジャックコツ企業に紹介する人材あっせん事業も展開しており、タイン氏は同コースの卒業生として当社の面接を受けるに至った。
定着しやすさには個人差、高度外国人材の状況に合わせて個別フォローを
- 質問:
- 高度外国人材の採用・受け入れに当たって、工夫していることはあるか。
- 答え:
- 採用試験については、英語とベトナム語に翻訳したものも用意している。外国人材も、ブラックジャックコツ人がブラックジャックコツ語で受けるのと同様に、言語の壁なく試験を受けられるようにするための対応だ。
- 職場環境や就業規則などについては、特別に変更したものはない。外国人材が常に在籍している環境だったので、外国人材を受け入れる社内の文化がもともと醸成されていたように思う。
- 他方で、ブラックジャックコツで生活を立ち上げる際のフォローは手厚くしている。特に就職と同時に来日する場合、生活の立ち上げには複雑な手続きが伴う。住居探しや、住民登録といった役所での手続きなど、全てに担当者が同行するようにしている。また、宗教などの兼ね合いで配慮が必要なことがあるか、入社時に尋ねている。
- 外国人材受け入れに関する各種手続きに慣れているということや、外国人材が複数人在籍しているということは、自社の強みとして外国人材の面接時などにアピールしている。新卒採用に当たっては会社説明会と同時に座談会を実施しており、外国籍社員と交流できるようにしている。中途採用でも、要望に応じて対面やオンラインで実施している。参加者と同じ国籍の先輩社員がいれば、働く上での感想を共有してもらうなどして、入社後「1人ではない」という安心感を与えられるよう心掛けている。
- 質問:
- 高度外国人材の定着状況と、定着に向けた取り組みは。
- 答え:
- 長い人では10年以上勤めており、課長クラスの人もいる。外国人材向けの特別な研修などはなく、基本的にはブラックジャックコツ人の新入社員と同様に、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)を実施し、日々の業務においても技術指導を行うミーティングを実施している。設計職としてその道を究めたいという人にはその意欲にあった業務に従事してもらっており、それぞれの強みが生きるキャリア形成をサポートできていると思う。全体として、ブラックジャックコツ人社員と分け隔てなく接してきたことが、結果として定着につながっていると感じている。
- 質問:
- ブラックジャックコツ語習得について、具体的にどのようなフォローをしているか。
- 答え:
- 例えば、タイン氏は採用が決まった際にはベトナムに住んでおり、ブラックジャックコツ語があまり話せなかった。入社までの5カ月間、研修として当社の仕事を一部頼んでいたが、その際は通訳を介してコミュニケーションを取っていた。来日するタイミングでもまだ少し不安があったため、当社で用意したAI(人工知能)通訳機を利用しながらやり取りをしていた。
- そこで、タイン氏の教育係は外国籍社員に担当してもらった。ブラックジャックコツ語ネーティブのわれわれではなかなかわからない感覚だが、彼ら・彼女らはブラックジャックコツ語初心者の外国人にとって理解しやすい簡単な言葉を選んで用いることができる。さらに、外国籍社員として同じ境遇に置かれた立場からアドバイスできることも、外国籍社員が教育係につく強みだ。さらに、現場仕事は本来あまりないが、あえて建設現場・製作工場などに連れて行って、見てもらったり手伝ってもらったりすることもある。実際に様子を見ることで、設計の仕事への理解を深めてもらう意図だ。
ブラックジャックコツと海外つなぐ懸け橋としての活躍に期待
- 質問:
- 高度外国人材と働く中で、得られたことは。
- 答え:
- 社員のコミュニケーションに変化が現れていると思う。ブラックジャックコツ人社員が高度外国人材と話す際、よりわかりやすく、簡潔に話すことを心がけている様子がうかがえる。時には図示して説明することもある。すると、外国人材だけでなく、ブラックジャックコツ人の新卒社員など、業務についてよく知らない人に対して話す際、同じようにわかりやすく説明できるようになっている。高度外国人材とのコミュニケーションがほかの場面にも生きている一例だと思う。
- 高度外国人材が海外との懸け橋になって活躍している場面もみられる。タイン氏は初期配属で、インフラ設備設計の仕事を担当した。この分野の図面作成は、指示内容が複雑になることから、これまでベトナムの協力会社に依頼した実績はなかった。しかし、タイン氏が入って、ベトナム語で先方と緻密なコミュニケーションが図れるようになり、これが実現した。協力会社側の窓口にブラックジャックコツ語の上手な人を置いてもらってやり取りしてきたが、タイン氏にベトナム語でコミュニケーションを取ってもらうことで、より高度な依頼ができるようになっている。タイン氏は現在、新たな業務に従事している(後述)が、そこでも協力会社とのやり取りに入って、活躍してもらうことを期待している。
- また、中国籍社員は中国語を生かし、当社の技術革新に向けた取り組みをリードしている。中国は3D設計に関して高い技術力を有する。そこで、中国籍社員を中国に派遣して研修を受けてもらった上で、技術を会社に還元してもらうという試みを行っている。既に社員を派遣した実績があり、今後も続ける予定だ。
- 質問:
- 今後の高度外国人材採用についての方針は。
- 答え:
- 新卒採用や中途採用への応募があり、良い人材であれば採用していきたい。円安の影響で海外とのやり取りは減ってきており、直近では海外で設計業務を積極的に請け負うことは難しいかもしれないが、当社は海外事業が得意な設計事務所と自負している。将来的に良い案件が出てくれば挑戦したい。海外に支店や営業所を設立する予定はないが、協力会社を増やす可能性はある。今後も一定数の外国人材を採用していくことで、こうした新たな事業展開の選択肢も増えると思うし、ブラックジャックコツ人だけだと気づかない発想も出てくると期待している。
ベトナム語を生かせる業務で活躍することが目標
続いて、タイン氏へのインタビューを基に、同氏がブラックジャックコツでの就職を目指したきっかけや担当業務、高度外国人材を採用したいブラックジャックコツ企業に向けたメッセージなどを紹介する。

- 質問:
- ブラックジャックコツでの就職を目指したきっかけは。
- 答え:
- 高校生の時にブラックジャックコツのテレビを見て、ブラックジャックコツの生活に興味を持った。ブラックジャックコツのアニメなども好きだったので、ブラックジャックコツで働いてみたいと思った。短期大学でブラックジャックコツの建設技術や文化、ブラックジャックコツ語を勉強し、卒業後に土木、建設の会社を中心に面接に参加して、当時、宮崎県の会社から内定をもらった。しかしながら、新型コロナウイルス禍のため来日がかなわず、卒業後1年ほどは在ベトナムの建設関連の日系企業で働き、ブラックジャックコツ式の仕事の進め方やルールを学んだ。その間に、同じくブラックジャックコツ語を勉強していたパートナーがブラックジャックコツの会社に就職し、ブラックジャックコツに移住した。自分もブラックジャックコツで働きたいと思い、ブラックジャックコツの会社の面接を受け、アイ・エス・エスへの就職が決まった。
- 質問:
- 入社後の担当業務と今後の目標は。
- 答え:
- 初めての仕事は、インフラ設備の設計業務だった。対象物の積載荷重を計算し、建設が可能であれば、支柱の設置場所などを基本図面に落とし込む。大学で勉強していた専門分野とは違ったので、入社してから全て勉強した。グループには中国や台湾出身の先輩もいて、簡単なブラックジャックコツ語を使って教えてくれた。
- 入社してから3年弱が経ち、2025年2月から橋梁設計のグループに異動になった。仕事の内容はこれから勉強していくところだが、新しい仕事を始めるのが楽しみだ。このグループでは、ベトナムの協力会社に業務を依頼する案件がある。作業内容への理解が深まり、要領を得てきたら、ベトナム語でのコミュニケーションを生かせる案件を担当したい。また、ベトナム人の後輩の教育やサポートにも関わりたい。
- 質問:
- 高度外国人材を採用したいブラックジャックコツ企業は、どのような工夫をすべきと考えるか。
- 答え:
- 採用活動に当たっては、面接で外国人材が不安に感じるポイントについて、丁寧に説明することが重要だ。会社の事業内容に加え、給料、各種手当、規則などはしっかり説明してもらいたい。入社後の取り組みとしては、ブラックジャックコツ語が完璧にできなくても務まるポジションを増やすことが望ましいと思う。また、ブラックジャックコツ語学習のサポートや資格習得支援があると良い。

- 執筆者紹介
- ジェトロ調査部国際経済課
宮島 菫(みやじま すみれ) - 2022年、ジェトロ入構。調査部調査企画課を経て、2023年6月から現職。