大統領の施政方針演説、6つの経済関連法案を提示
(アルゼンチン)
ブエノスアイレス発
2021年03月09日
アルゼンチンの2021年通常国会が3月1日に招集され、アルベルト・フェルナンデス大統領が施政方針について演説した。この中で、経済活性化のために今国会に6つの法案を提出すると発表した。
1つ目は、電気自動車(EV)の生産やリチウムに関連するバリューチェーンなど、持続可能なモビリティー向けのインセンティブの導入に関する法案だ。リチウム電池を用いたEVや水素を用いた燃料電池車の導入が世界的に進む中、「アルゼンチンもその道を徐々に進んでいかなければならない」とした。
2つ目は、自動車産業とそのバリューチェーン振興のための法案だ。新規投資への税制優遇措置の導入と、モビリティー研究所の創設の2つを柱とした法案で、50億ドルの新規投資を誘発することを期待している。
3つ目は、医療用と産業用の大麻に関する法案だ。世界の医療用大麻の取引額が「今後5年間で3倍になる」とし、医療用、産業用の大麻栽培を推進する考えを示した。詳細は不明だが、2020年11月に法律27350号「大麻およびその副産物の医療用途に関する医学的、科学的研究に関する法律」の施行規則を改正し、医療用大麻の栽培を合法化している。報道によると、栽培の承認に必要な登録制度が運用されていないことから、実際に医療用大麻の栽培を可能にするための法案になるとみられる。
4つ目は、国による医薬品の調達における国内企業優遇措置を見直し、国内企業や中小企業からの調達強化に関する法案だ。
5つ目は、農業分野の付加価値向上と、生産および輸出の拡大を目的とした税制優遇措置の導入に関する法案だ。農業分野への投資拡大と雇用創出を目指す。
6つ目は、採掘から産業化まで炭化水素産業を包括的に振興する法案だ。エネルギーの自給力を高め、域内外へのエネルギーの輸出国となることを目指すとしている。バカ・ムエルタ鉱区にも触れ、同鉱区の世界第2位の埋蔵量を有する天然ガスは、気候変動の影響を最小限に抑えるために世界各国が推進しているエネルギーの移行の取り組みの中で「重要な役割を果たす」とした。
これらの法案の背景には、輸入を減らして輸出を増やすことで外貨不足に対処する意図があるとみられる。
(西澤裕介)
(アルゼンチン)
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