問題の経緯
カジノゲーム無料解説(メキシコ)(1)

2025年3月17日

メキシコでは、2024年に通商政策でさまざまな変更が行われた。まず、2024年4月に鉄鋼・アルミ・繊維製品などの一般関税を引き上げた(2024年4月25日付ビジネス短信参照)。さらに、関税の免除申請を行うための措置「レグラ・オクターバ」(詳細は後述)が停止・拒否された事例が発生した。メキシコ経済省の官報公示による説明はなく、原因が不明な状態が続き、カジノゲーム無料利用していた企業は一般関税を支払うことを余儀なくされた。この一連の経緯や現在の状況についてまとめる。

メキシコの基礎的な貿易関連の優遇措置

カジノゲーム無料の問題に触れる前に、メキシコの一時輸入(保税)制度と関税の優遇措置について概観する。

まず、メキシコでの保税制度は「輸出向け製造・マキラドーラ・サービス産業(IMMEX)」制度などにより実施され、主要根拠法はIMMEX 政令で規定されている。IMMEXは、関税や付加価値税(IVA)の保税(繰り延べ)を行える制度で、申請するプログラムや認定制度によって恩典が異なる。なお、付加価値税を輸入時に支払わないためには別途、IVA・IEPS保税認定(Certificado IVA・IEPS)を併せて取得しなければならない。

また、税関法63-A条と104条により、IMMEXによって一時輸入した製品の関税を保税できたとしても、輸出先国との自由貿易協定(FTA)によって、関税を支払わなければならない場合がある。例えば、IMMEXを取得した企業が原材料を輸入し、米国に輸出する場合、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の第2.5条1項では、輸入した製品の関税を原則支払わなければならず、最終製品が輸出された日から60日以内に関税を支払わなければならないと規定している。

次に、メキシコが一時輸入の際に関税の減免を適用可能なものについては、貿易に関する一般規則(SAT貿易細則、Reglas generales comercio exterior 2025)第1.6.11条のⅠで、(1)産業分野別生産促進プログラム(PROSEC)、(2)カジノゲーム無料、(3)各種FTAを規定している。

PROSECは主に在メキシコ製造業者が申請できる優遇関税措置で、PROSEC政令を中心に規定されている。PROSEC政令第4条に掲載されている24業種別の製造品目製造のために輸入する部品・原材料、機械・設備の対象品目リスト(同政令第5条に記載)に基づいて、優遇関税を適用できる。

カジノゲーム無料はもともと、輸出入一般関税法(LIGIE)の補則第8条という位置づけだったが、PROSEC発足に伴い、同優遇関税政策を補完する制度に変更された。カジノゲーム無料に基づく特別輸入許可では、経済省に申請して認可されれば、PROSECの優遇関税の対象(PROSEC政令第5条に記載の品目)になっていない品目について、関税率0~5%で輸入できる。同輸入許可の有効期間は1回につき1年が原則で、申請者の希望に基づいて輸入数量が割り当てられる。しかし、一時輸入と確定輸入で審査が異なり、確定輸入の場合では、経済省が審査するに当たり、その製品に関連する各業界団体にも諮問し、当該製品が国内で生産されていない場合や、十分な供給量がないなど、特別な状況が確認された場合に許可する。他方で、一時輸入の場合は、上記の審査とは一部異なり、国内消費ではなく輸出を前提としたもののため、審査は形骸化していた。今回の問題はこの一時輸入で発生した。

カジノゲーム無料問題の発端

問題の発端は、2024年4月ごろからセンシティブ品目(鉄鋼、繊維、砂糖など、注1)の一時輸入について、関税の減免措置を適用するためにカジノゲーム無料利用する際、経済省の許可が下りない、または輸入申告を電子申請するメキシコ貿易手続き単一電子窓口(VUCEM)のシステムエラーで輸入申請ができないケースが観測されたことだ。しかし、当初は経済省からのアナウンスや公式見解はなく、さらに、これまでレグラ・オクターバの許可を得ていた企業にも更新の許可が出ず、許可申請が拒否される事態が起きた(以後、一連の問題を「レグラ・オクターバ問題」とする)。

メキシコ政府は2024年4月22日に鉄鋼などを含む544品目の一般関税を品目に応じて5~50%まで引き上げた。特に鉄鋼製品や繊維製品では、25~35%まで引き上げた製品が多く、鉄鋼製品の2品目は50%まで引き上げた。そのため、カジノゲーム無料申請できなかった企業はこの一般関税を支払わなければならず、多大な追加費用が発生することになった。

同年5月16日付の輸出入に関する経済省のポータルサイト(SNICE)上で、経済省は公式文書ではなく、プレゼンテーション形式の資料(スペイン語)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(4.1MB)を発表した。その中のスライドで、問題発生の原因として、実際の輸入時に製品のトレーサビリティーをコントロールできないことが記載されている。また、メキシコ公式規格(NOM)を含む非関税規制(RRNAs)のコントロールや、貿易統計の管理ができないことにも言及している。これは、カジノゲーム無料利用して製品を輸入する際に、HSコードが特別コードの「9802.00」となるため、実際のHSコードと異なることによって起きる問題である。例えば、HSコード72類の鉄鋼製品について、カジノゲーム無料適用する場合、HSコードが輸入申告時に貿易統計上9802.00となるため、輸入時から同製品が貿易統計上に72類として表れず、非関税規制の手続きでもトレースが困難になる。

さらに、5月16日付の資料は、問題回避のために、国税庁(SAT)に対して、IMMEX政令の別添ⅡまたはSAT貿易細則2024(RGCE 2024)の別添28に記載された製品の一時輸入許可に関するRGCE2024の別添1-Aに記載された手続き書類(Ficha)118/LAを提出する必要性を記載しており、その認証を「SATセンシティブ認証(CERTIFICACION SAT SENSIBLES)」と名付けた。

しかし、本件の提出を行っていたとしても、カジノゲーム無料の許可は出なかった。IVA・IEPS保税認定を持っている企業では、申請・更新時にFicha 118/LAを提出することが義務づけられているため、SATに対してIVA・IEPS保税認定を既に提出済みの企業もあった。だが、IVA・IEPS保税認定企業でも、カジノゲーム無料の許可が出ることはなかった。

カジノゲーム無料問題に対する各地域の動き

2024年5月以降も、カジノゲーム無料問題に関する経済省からの声明や公式見解はなかった。当初はこの問題に関して、米国との国境付近に位置するバハ・カリフォルニア州ティファナ市やメヒカリ市の日系企業から問い合わせが来ていた。なぜなら、米国との国境付近では、メキシコに外国居住者に所有権がある原材料を一時輸入し、受託加工したものを米国に輸出するいわゆる「マキラドーラ・オペレーション」(注2)と呼ばれるスキームを活用した輸出入スキームが定着しており、この影響を受けた企業が多かったからだ。ただ、徐々に日系企業が多く集積するグアナファト州、アグアスカリエンテス州、サンルイスポトシ州、ケレタロ州などを含むバヒオ地区の進出日系企業からも、カジノゲーム無料問題に関する声が聞こえてきた。

レグラ・オクターバ問題への対処方法としては、日本メキシコ経済連携協定(日墨EPA)や環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)など、メキシコとFTAを締結している協定を活用することによって、関税の減免を行うことができた。しかし、レグラ・オクターバは、そのほとんどが経済協定のない中国材や韓国材に使用するケースが多い。また、繊維製品では、CPTTPで糸をつむぐ工程以降を原則域内で行うことを規定した「ヤーンフォワード・ルール」という厳しい原産地規則を満たせない製品に活用していたケースがあり、カジノゲーム無料FTAに変えて関税を回避できるケースはまれだった。

経済省のカジノゲーム無料問題に関する回答と今後の方針

2024年10月1日に誕生したシェインバウム政権で実務経験豊富なマルセロ・エブラル氏が経済相に就任したことで、経済省と産業界のコミュニケーションの場が復活した。2024年12月に開催されたメキシコ日本商工会議所と経済省との会合で、メキシコ日本商工会議所はカジノゲーム無料問題に関する陳情書を提出した。その内容は、カジノゲーム無料問題の原因究明の嘆願と、今回の問題でメキシコ日本商工会議所内の企業が停止を受けたHSコードを基に、そのHSコードをPROSECの第5条リスト(特恵関税対象リスト)に組み込むことを提案するものだった。2024年5月の資料では、カジノゲーム無料の利用により、HSコードが特別な98類に変更されることが問題の原因として挙げられていたため、通常のHSコードをPROSECに組み込めば、問題は解決されうる。

2024年同月の陳情書に対する回答文書で、経済省は、カジノゲーム無料利用した際にHSコードが変更されることが問題の原因であることを正式に認めた。また、今回停止されたHSコードをPROSECの第5条リストに組み込むことについて、経済省貿易細則の1.3.5条、2.1.1条に基づく申請を受け付けることも、回答文書に記載されていた。ただし、この条文で申請が行えるのは、カジノゲーム無料利用する企業のみで、メキシコ日本商工会議所や団体での交渉は不可となっていた。

2025年2月にエブラル経済相が出席するメキシコ日本商工会議所と経済省との会合では、カジノゲーム無料問題を解決するべく、メキシコ日本商工会議所として協議を行うことを再度提案した。その結果、通商担当次官から「IMMEX、PROSEC、カジノゲーム無料に関する問題については承知している。われわれもその問題の出口を探している」との発言があり、経済省としても問題を捉え、解決に向けて動いていることが判明した。さらに、同担当官は「プラン・メキシコ(Plan Mexico)」()についても言及し、Plan Mexicoに記載のあるIMMEX4.0(IMMEXプログラムの現代化)で、この解決を試みようとしていることも示唆された。しかし、具体的な内容や動きについては明言がなかったため、詳細は不明だ。Plan Mexicoでは、IMMEX4.0について2025年2月末に何らかの明示をする予定だったが、2月28日現在では官報公示などの正式な情報は出ていない。カジノゲーム無料問題だけでなく、IMMEXやPROSECに関しても、変更される可能性もあるため、今後も注視する必要がある。


注1:
一時輸入で特別な要件を満たすことが義務付けられる品目。IMMEX政令別添II、SAT貿易細則別添28にHSコードが記載されている。
注2:
「マキラドーラ・オペレーション(保税受託加工)」とは、外国企業が所有する部品・原材料を保税状態でメキシコに一時輸入し、外国企業から貸与された機械などで加工した後に再輸出する保税加工オペレーションのこと。
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執筆者紹介
ジェトロ・メキシコ事務所
阿部 眞弘(あべ ただひろ)
2017年、ジェトロ入構。サービス産業課、商務・情報産業課、イノベーション促進課、ジェトロ山口を経て、2022年9月から現職。