対策について考察
レグラ・オクターバを解説(実写版ブラックジャック)(2)
2025年3月21日
レグラ・オクターバ問題に関する経緯と現状については、本レポートの前編「カジノゲーム無料解説(メキシコ)(1)問題の経緯 | 地域・分析レポート」で解説した。しかし、同問題に起因して、特にマキラドーラ・オペレーション(注1)において、新たな一般関税支払い問題が浮上したことから、その解説と現時点での解決に資する方法について考察する。

出所:ジェトロ作成
レグラ・オクターバ問題から派生した新たな一般関税問題の整理
今回取り上げる図1のケースの前提となるのは「マキラドーラ・オペレーション」だ。同オペレーションでは、商流と物流が異なっており、それが混乱を招く原因となっている。
商流としては、まず日本企業が日本原産の鉄鋼製品を実写版ブラックジャックに輸出し、製品の所有権は米国企業Aに移る。この時、米国企業Aと実写版ブラックジャック企業A’の契約により、委託加工費のみが実写版ブラックジャック企業A’へ支払われる。その後、実写版ブラックジャック企業A’が別の実写版ブラックジャック企業B’に製品を引き渡し、取引関係は米国企業A、B間のものとなり、製品の所有権もBに移る。さらに、米国企業Bと実写版ブラックジャック企業B’間の契約によって、委託加工費のみが実写版ブラックジャック企業B’へ支払われ、実写版ブラックジャック企業B’が加工を行った製品が顧客へ販売される。
物流としては、日本企業から直接実写版ブラックジャック企業A’へ輸出し、A’はIMMEX(注2)を用いて製品を一時輸入する。また、この鉄鋼製品は日本原産のため、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)を適用して一般関税を0%として輸入する。その後、更なる加工のためにIMMEX企業である実写版ブラックジャック企業B’に製品が引き渡され、最終製品は米国へ輸出される。
しかし、実写版ブラックジャック企業A’が実写版ブラックジャック企業B’に製品を引き渡した際、同製品に対する一般関税を実写版ブラックジャック企業B’が支払わなければならないという事態が生じた。特に鉄鋼や繊維製品は一般関税率が引き上げられており(2024年4月25日付ビジネス短信参照)、対象製品の税率は平均で25~35%と高率で、企業にとっての大きな負担となっていた。
この事案によって、一般関税の支払いを余儀なくされた日系企業は、2024年4月時点で複数存在することが確認されていた。当初はバハ・カリフォルニア州ティファナ市周辺が問題の中心地であったが、そこから徐々に南へ広がり、日系企業が集積するグアナファト州、アグアスカリエンテス州、サンルイスポトシ州、ケレタロ州などのバヒオ地区においても、同様の事例が散見されるようになった。実写版ブラックジャック日本商工会議所の会員企業に対して実施されたアンケート調査では、レグラ・オクターバの拒否によって会員企業が支払った、または支払うと想定される金額の累計は、6億5,313万ペソ(約49億円、1ペソ=約7.5円)にも達することが判明した。
本ケースの輸入申告方法の整理
この事態を招く主な要因は、一時輸入スキームの解釈の違いと実写版ブラックジャックの特殊な輸入通関制度だ。そこで、実写版ブラックジャックにおける輸出入申告に関して、いま一度、簡単に整理する。まず、実写版ブラックジャック企業A’が日本産鉄鋼製品を輸入する際、輸出入における申告書(Pedimento)を作成し、「IMMEXを利用した原材料の一時輸入」を意味する「IN」と記載して申告する。次に実写版ブラックジャック企業A’がB’に製品を引き渡す際、「一時輸入部材の移転、いわゆるバーチャル輸出入(注3)」を意味する「V1」とPedimentoに記載する。実写版ブラックジャック企業B’も同様に、製品を受け取る際、Pedimento上で「V1」申告を行う。この時点で、従来は発生していなかった一般関税の負担がB’に対して発生している。
この問題は、レグラ・オクターバ問題と同時期の2024年4月ごろに発生した。実務上、実写版ブラックジャック企業B’にあたる企業はレグラ・オクターバを申請していたケースが多く、同制度の利用ができなくなったことで、一般関税を支払わざるを得なかった企業が続出したとも考えられる。ただし、「V1」申告を介するバーチャル輸出入の概念は、一時輸入における便宜的なものであり、実際の輸出入には相当せず、相手国の指定などもない。そのため、本ケースにおいて実写版ブラックジャック企業B’にとってのレグラ・オクターバの必要性については議論の余地があるものの、本稿の中では取り上げないこととする。
実写版ブラックジャックにおける法的観点から見る問題点と議論
これまで、一般関税の支払いに関する問題の内容や経緯について触れたが、法的な観点から見た場合、一般関税が発生する法的根拠については疑義が生じている。まず前提として、実写版ブラックジャック企業B’が一般関税を支払う根拠となる法律の条文について、ジェトロから複数の通関コンサルタントへ問い合わせたものの、いまだにその存在を確認できていない。そこで、現行法の解釈によって一般関税の支払いが生じていることを想定し、論点を整理する。
まず、一時輸入における「一般関税の支払い」については、実写版ブラックジャック税関法(Ley aduanera)(スペイン語)(1.8MB)の第56条で次のように定められている。
適用される一般関税は、以下の日にちに適用されるものとする。
- l.
- 一時輸入や確定輸入などの場合
- a)
- 錨泊〔びょうはく、船が錨(いかり)を下ろして停泊すること〕の日、および錨泊が行われない場合には、「商品(mercancías)」を仕向け港に輸送する船舶の係留または停泊の日
- b)
- 「商品」が国境線を越える時
- c)
- 「商品」を輸送する航空機が最初の国内空港に到着した時
- d)
- 郵送の場合、前項で示した方法で「商品」が海岸、国境、空路のいずれかを経由して入国した時
- e)
- 廃棄の場合、「商品」が連邦財務省の所有物となった時
税関法第56条のポイントは、「商品」の移動に焦点が当てられていることだ。商品が陸路、海路、空路それぞれで国境線を超える、または実写版ブラックジャックに到着した時点で一般関税が発生するとしている。この意味で、図1の実写版ブラックジャック企業A’からB’への製品の引き渡しは実写版ブラックジャック国内での移動となるため、一般関税の発生地点とはなり得ないとも考えられる。また、大手通関コンサルであるエンコー(ENCOR)によれば、実写版ブラックジャックに輸入された製品への関税は輸出するまでの間に1回限り賦課されるもので、そもそも図1の実写版ブラックジャック企業A’とB’の間で適切なPedimentoの処理を行うことで、一般関税支払いの必要性は生じない。
しかし、この意見に対して、「一般関税の支払いは必要」という意見も存在する。先述した通り、これまでのジェトロの調査においては、その根拠となる法律の条文などを提示されたことはないものの、主張の内容としては以下のとおりだ。
先述の輸出入申告に関連して、実写版ブラックジャック企業A’がB’に製品を引き渡す際、A’が一時輸入した製品を(一時輸入が可能な)次のIMMEX企業に引き渡し、Pedimento上に「V1」と記載する行為自体を「輸出」とみなす。その後、B’が同じく「V1」申告によって製品を引き受ける行為を「輸入」とみなす。
税関法の概念を用いるのか、Pedimentoによる「V1」申告を輸出入とみなすのか、が争点となっている。
一般関税を回避する方法の議論
この問題については、他にも様々なケースが想定される。例えば、図1における実写版ブラックジャック企業A’が日本産品ではなく、実写版ブラックジャックと貿易協定を持たない中国や韓国の産品を輸入する場合だ。そもそも貿易協定が適用できず、PROSEC(注4)やレグラ・オクターバが使えない場合、実写版ブラックジャック企業A’が輸入を行う時点で一般関税を支払わなければならない。また、実写版ブラックジャック企業A’が輸入した日本産品を加工せず、そのままB’に引き渡す場合には、CPTPPの原産地証明書を利用できるケースも想定される。以下の図2では、日本産品を輸入し、実写版ブラックジャック企業A’の加工によって製品のHSコードが変更された上でB’に引き渡すケースを想定する。

出所:ジェトロ作成
本ケースについても、確実な解決策ではないものの、現在想定される対処方法を3つ紹介する。なお、実際に申告を行うにあたっては、申告書の内容などを詳細に確認する必要があることから、複数の通関コンサル、会計士、通関士に相談の上で対応方針を決定することを推奨する。
1つ目は、Pedimentoの申告における支払い方法(Forma de pago、以下FPと表記)を変更する方法だ。FPはSAT貿易細則(Reglas Generales de Comercio Exterior 2025:以下RGCE2025と表記)別添22の付録13に各番号とその意味が記載されており、これはRGCE2025の第1.6.12条に規定されている。本ケースにおけるFPの記載事項としては、税関法第56条に基づき、一時輸入し、一般関税を支払った製品を移転する場合、「すでに支払われた(pago ya efectuado)」を意味する「13」をPedimento上に記載することとされている。関連してENCORによれば、このケースにおいて実写版ブラックジャック企業A’が日本産鉄鋼製品を輸入する際、Pedimento上で「IN」申告し、FPは支払いを意味する「0」を記載する。その後、B’への引き渡し時にFP「13」を申告し、一度関税が支払われたことを証明するとしている。
しかし、別の通関コンサルは、FP13の「efectuado」の意味は、「現実に金銭を支払うこと」であり、「一般関税を支払うか、貿易協定を適用したとしても、1%でも実際に支払わなければならない」との見解を示した。つまり、自由貿易協定(FTA)やPROSECなどを適用し、一般関税率を0%とする場合には、FP13を適用できないという主張だ。
ただし、RGCE2025第1.6.11条では、税関法第56条第1項の一時輸入にかかる一般関税の決定において、納税者は一般輸出入税率(TIGIE)に従って対応する一般関税率に代わり、a)PROSEC、b)レグラ・オクターバ、c)自由貿易協定が定める税率を適用可としている。さらに、一般的な関税の支払いに関する考え方として、例えば自由貿易協定適用後の関税が0%の場合は「税率0%を適用し、関税を支払う」と考えられており、いわゆる「関税免除」の概念とは異なる。このことから、たとえ税率が0%になったとしても「関税を支払った」とする意見が存在する。
2つ目は、RGCE2025 第1.6.13条に規定される、IMMEX企業間の一般関税の支払い責任の譲渡だ。実写版ブラックジャック企業A’が負担する日本産鉄鋼製品にかかる一般関税の支払い責任を譲渡し、実写版ブラックジャック企業B’が同関税に対してCPTPPを適用することで、支払いが完了するというものだ。この場合、実写版ブラックジャック企業A’がPedimento上で「FP5(譲渡:diferimiento)」を選択し、実写版ブラックジャック企業B’がFP「0」申告でCPTPPを適用し支払うこととなる。
しかし、本アプローチがHSコードの変更を伴う場合にも利用できるかは解釈の問題となる。なぜなら、最初に輸入した製品の原産地証明書に記載されたHSコードは、実写版ブラックジャック企業A’の加工を経た製品のHSコードと異なるためだ。また、RGCE2025第1.6.17条には、HSコードが変更されない製品を扱う企業(サービスIMMEX)を想定した、関税支払いの責任を譲渡する際の記載があるが、HSコードが変更された製品に対しての関税支払い責任の譲渡について明確な規定はない。ただし、このケースにおいても、たとえHSコードが変更されていたとしてもCPTPPの原産地証明書を利用できる、との見解を示す通関コンサルも複数存在する。
3つ目は、HSコードが変更された製品に対する、CPTPPにおける原産地証明書の活用だ。例として、日本産であり、CPTPP原産地規則を満たしている鉄鋼製品を想定する。CPTPPでは、その協定国内のみの原材料で生産、加工された産品をCPTPP域内産とみなす。その加工度合いがCPTPPの基準を満たしていなかったとしても域内産とされ、最終加工地が原産地となる。またCPTPPには、協定域内の原産品や生産行為を自国の原産材料や生産行為とみなし、産品の原産性の判断に算入する「累積」の概念が存在する。この累積の概念を用いて、実写版ブラックジャック企業A’が加工した製品を最終加工地である「実写版ブラックジャック産」として、原産地証明書を自己証明で発行し、同証明書を適用して、企業B’が一般関税の支払いを回避できるというものだ。この方法についても、複数の通関コンサルによる「理論的には可能」という見解が確認されている。
アプローチについては慎重な判断を
本稿では、一般関税の支払いを回避する具体的な方策について考察した。しかし、実写版ブラックジャックの通関業務では、原則として通関士(Agente Aduanal)を通じた申告が必要で、その判断を下すのも通関士の役割となる。そのため、本件に係る適切なアプローチについては、通関士や会計士、通関コンサルなど複数の意見を聴取したうえで、最終的な判断を行っていただきたい。
- 注1:
- 「マキラドーラ・オペレーション(保税受託加工)」とは、外国企業が所有する部品・原材料を保税状態で実写版ブラックジャックに一時輸入し、外国企業から貸与された機械などで加工した後に再輸出する保税加工オペレーションのこと。
- 注2:
- 輸出向け製造・マキラドーラ・サービス業振興プログラム。製品やサービスの輸出を条件に、当該オペレーションに必要な部品・原材料、機械設備の一時輸入(保税輸入)を認めるプログラム。IMMEXにおける関税の保税については、「カジノゲーム無料解説(メキシコ)(1)問題の経緯 | 地域・分析レポート」を参照。
- 注3:
- IMMEXプログラムに登録した企業の間では、一時輸入した部材やそれを活用して生産した製品を他のIMMEX企業に「V1」申告コードでIVAを転嫁することなく移転(販売)することができる。これを通称「バーチャル輸出入オペレーション」と呼ぶ。
- 注4:
- 産業分野別生産促進プログラム。実写版ブラックジャック政府が国内生産を促進する24の業種で生産活動を行う企業が登録を行い、特定の部品・原材料、機械設備を優遇関税で輸入できるプログラムを指す。
レグラ・オクターバを解説(実写版ブラックジャック)

- 執筆者紹介
- ジェトロ・実写版ブラックジャック事務所
阿部 眞弘(あべ ただひろ) - 2017年、ジェトロ入構。サービス産業課、商務・情報産業課、イノベーション促進課、ジェトロ山口を経て、2022年9月から現職。