ミレイ大統領、国民向け演説で就任1年目の実績振り返る
(アルゼンチン)
ブエノスアイレス発
2024年12月19日
12月10日に就任から1年を迎えたアルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領は国民に向けたテレビ演説を行った。ミレイ大統領はその中で、就任1年目の主な実績について述べた。
まず、ショック療法により、落ち込んだ経済活動が足元で上向き始めたほか、前政権下で乱発された通貨供給を停止した結果、物価が安定し、経済が成長サイクルに入り始めたとの認識を示した。その上で、国民の我慢に対して謝意を示した。
この1年間の具体的な成果としては、先述した物価の安定や、物価高騰の原因となる通貨供給の停止のほか、省庁と公務員の削減と財政黒字の定着、旧輸入債務(注)の削減と輸入規制の緩和、外貨準備高の蓄積、公式為替レートと並行為替レート間の差の縮小、カントリーリスクの低下、政策金利の低下、数多くの規制緩和の断行、中抜きしていたと政府が主張する社会運動組織などを介さない貧困層支援金の直接給付による社会支援の改善、麻薬に関わる殺人件数の減少、国営企業の労働組合の特権廃止を掲げた。
ミレイ大統領は当初、憲法が大統領に認めている「例外的な事情により通常の手続きに従うことが不可能な場合」の立法権を行使して規制緩和を進めたが、7月に公布された「アルゼンチン人の自由のための基盤および出発点に関する法律」〔通称、基盤法、またはオムニバス法、(関連ブラック ジャック ディーラー)〕により、1年間に限って行政、経済、金融、エネルギーの分野の立法権が行政府に与えられると、規制緩和に勢いを増して着手した。今回の演説では、800以上の規制を撤廃したとしている。他方、公共工事の停止などによる歳出削減や国内経済の停滞により、失業率と貧困率は悪化した。国会予算事務局(OPC)によると、年金を含む社会支援関連予算の11月までの累計予算執行額は、前年同期比で実質18.3%減となっており、低所得層の生活苦は増したとみられている。
数多くの規制緩和や改革を実現し、マクロ経済は安定しつつあり、国民の支持率も高いまま推移していることから、ミレイ大統領にとって就任1年目の業績への評価は高い。2年目は経済成長を軌道に乗せ、ミクロ経済を回復させることが急務となる。
(注)2023年12月12日以前に輸入通関された財、あるいは提供されたサービスの輸入代金で、未払いのものを指す。これら旧輸入債務の支払いは凍結されているが、自由アルゼンチン再建債(BOPREAL)など、支払いを可能にする手段が幾つかある。
(西澤裕介)
(アルゼンチン)
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