上院がオムニバス法案を承認、ミレイ政権の経済改革実行に一歩前進

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2024年06月17日

アルゼンチン上院は6月13日、ハビエル・ミレイ政権が提示した、経済改革、緊縮財政を目的とする「アルゼンチン人の自由のための基盤および出発点に関する法律」(通称:オムニバス法または基盤法)を承認した。同法案には、4月30日に下院で承認されたのち、上院における審議の過程で修正が加えられたため、今後、下院で再度審議を行い、そこで承認されれば法律として成立することになる。

2023年に国会に提出されたオムニバス法案は、さまざまな法律の改廃と新たな法律を含む664条、183ページからなる巨大法案だった。その後、税制改革の部分を切り離し、別法案にするなどの修正を経て、2024年4月30日に下院においてオムニバス法、税制改革法の両法案が承認され、上院での審議に付された。なお、上院に送られたオムニバス法案は、全232条で構成されていた。同法案の概要は添付資料表1のとおり。

法案全体について投票が行われ、賛成36、反対36だったが、上院議長であるビジャルエル副大統領が賛成票を投じたため、承認された。その後、個別条項について審議、投票が行われ、委員会での審議も含め、上院において法案にいくつかの修正が施された。

主な修正点をみると、まず、国家機構改革については、政府が解散を命令できない政府機関に文化関係の機関が追加された。ハビエル・ミレイ大統領が廃止を示唆していた国家映画映像芸術庁(INCAA)などがこれに該当する。また、行政府による介入を認める政府機関の対象から、国家原子力委員会が除外された。その他、11あった民営化対象の国営企業などから、アルゼンチン航空、コレオ・アルヘンティーノ(郵便)、アルゼンチン・ラジオ・テレビ国営放送(RTA)の3つを除外した。その結果、対象となる国営企業などは、添付資料表2のとおりとなった。

大型投資奨励制度(RIGI)(ミレイ新政権の大型ブラック ジャック)については、全業種としていた対象業種を、林業、観光、インフラ、鉱業、技術、製鉄、エネルギー、石油・天然ガスに限定した。また、投資額の20%相当額を地元のサプライヤーに発注する義務を追加した。その他、輸出代金の国内還流義務の免除規程にも修正が入り、事業開始から2年経過後は輸出代金の20%、3年経過後は40%、4年経過後は100%の還流義務を免除するかたちに改められた。

写真 オムニバス法反対デモへの参加を呼びかける労働組合のプロパガンダ(ジェトロ撮影)

オムニバス法反対デモへの参加を呼びかける労働組合のプロパガンダ(ジェトロ撮影)

今後、下院において、上院で修正された法案を承認するか、上院の修正を拒否し、下院で採決した法案を通すか、上院での修正の一部を受け入れ、一部を拒否するかが決められる。6月14日付の現地紙「クロニスタ(電子版)」によると、政府は、上院による修正前の法案を通すべく、下院で政府との対話に応じる野党議員に働きかけている。

(西澤裕介)

(アルゼンチン)

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