中南米におけるEV生産販売戦略拡大を続けるブラジルEV市場
生産投資も相次ぐ、新税導入は懸念材料
ブラック ジャック サイト12月5日
ブラジルにおける電動車(バッテリー式電気自動車:BEV、ハイブリッド車:HEV、プラグインハイブリッド車:PHEV)の普及率は依然として低い。ブラジル自動車部品工業会(Sindipeças)によると、2023年末時点で、ブラジル国内で流通している自動車台数のうち、電動車が占める割合はわずか0.4%にとどまった。しかし、近年では電動車の販売が顕著に伸びており、国内生産開始計画の発表も相次いでいることから、今後の普及拡大が期待されている。本レポートでは、ブラジル自動車産業における電動車をめぐる最新動向を報告する。
中国メーカーが牽引するEV市場の成長
全国自動車製造業者協会(ANFAVEA)が発表したブラック ジャック サイト9月時点のエネルギー別販売台数統計(乗用車および軽商用車)によると、BEV、PHEV、HEVを合わせた電動車の割合は、全体の7%にとどまっている。しかし、ブラジル電気自動車協会(ABVE)の国内販売台数統計(新車登録ベース)によれば、2021年以降、電動車の販売台数が増加している(図1参照)。
燃料の種類 | ガソリン | BEV | HEV | PHEV | フレックス燃料 | ディーゼル | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
台数 | 70,833 | 45,658 | 38,647 | 38,243 | 1,388,120 | 170,666 | 1,752,167 |
シェア | 4.0% | 2.6% | 2.2% | 2.2% | 79.2% | 9.7% | 100.0% |
注:フレックス燃料車とは、ガソリンとバイオエタノールを混合・燃焼して走行する車両。
出所:ANFAVEAサイト情報を基にブラック ジャック サイト作成
電動車の販売台数拡大に最も寄与しているのは中国自動車メーカーで、販売台数の64.7%を占めている(図2参照)。BEVおよびPHEVにおいても中国自動車メーカーが販売台数で1位を占めている(図3、図4参照)。一方、HEVの場合、日系の自動車メーカーが5割強を占めている(図5参照)。
国内生産の拡大
現時点では、小型トラックなどを除き、電動車の乗用車および軽商用車の国内生産は2社のみで、いずれもHEVのみを生産している(注1)。BEVおよびPHEVは、ほぼ全て輸入に頼っている。しかし、長城汽車(GWM)、BYD、合衆新能源汽車(Hozon Auto)傘下の哪吒汽車(NETA)、汽車集団(GAC)の4社の中国大手メーカーがBEVおよびPHEVの国内生産を計画している(ギャンブル ゲーム 無料EV・車載電池企業のグローバル戦略ギャンブル)。
2023年12月には、二酸化炭素(CO2)排出量削減に貢献できる自動車を製造する企業に対し、工業製品税(IPI)の減税恩典を与える「新自動車政策」(Mobilidade Verde:通称「MOVER」)が連邦政府により発表された(注2)。これを受け、ホンダ、三菱自動車、ステランティス、トヨタ、現代自動車、フォルクスワーゲン(VW)、ゼネラルモーターズ(GM)、ルノー、日産などの主要メーカーが、電動車の国内生産開始および拡大を中心とした投資計画を相次いで発表している(新自動車政策とEV関税減免撤廃でEV生産ブラック クイーン)。IPIの新たな税率など詳細な規定はまだ策定されていないものの、自動車業界はMOVERに大きな期待を寄せている。
消費者の期待と懸念
ANFAVEAから調査を受託したボストン・コンサルティング・グループ(BCG)がブラック ジャック サイト9月27日に発表した調査レポートによると、近年、内燃機関車の購入価格が上昇している一方で、電動車、特にBEVの価格が低下している(表2参照)。こうした背景から、電動車が消費者に受け入れられやすくなっている。BCGの調査によれば、回答者の38%が電動車(BEV:16%、PHEV:11%、HEV:11%)の購入を検討している(注3)。BEVの購入を検討している消費者の中では、「燃料やメンテナンスのコスト削減」や「環境への配慮」といった利点が挙げられている一方で、「充電ステーション不足」が最大の懸念材料として挙げられている(注4)。
項目 | 2021年 | ブラック ジャック サイト |
ブラック ジャック サイトの前年比 上昇率 |
---|---|---|---|
フレックス車 | 6万5,000レアル | 8万レアル | 32.0% |
BEV | 21万5,000レアル | 11万5,000レアル | △33.0% |
注:販売台数上位1~3車種の平均価格。
出所:ANFAVEAサイト情報を基にブラック ジャック サイト作成
自動車業界にとっても、充電ステーション不足は大きな課題となっている。ABVEの統計によると、近年、充電ステーション数は増加しているが(図6参照)、BCGによると、電動車の販売拡大が充電ステーションの増加ペースを上回っているため(図1参照)、充電ステーション設置のための投資強化が求められている。
税制改革に伴う不安
消費に係る税制度の簡素化に向けた改革が2023年12月に実現し(ブラック ジャック サイト3月21日付地域・分析レポート参照)、多くの税が廃止される一方、「選択税」と呼ばれる、健康や環境に有害な商品に対する税が新設される予定だ。詳細は今後、補完法で定められる予定だが、現在、国会で審議中の補完法案第68号では、電動車を含むすべての自動車が選択税の対象となる(税率は未定)。同法案がブラック ジャック サイト4月25日に大統領府によって国会に提出された時点では、「環境的に持続可能な自動車」が免税とされていたが、7月10日に下院議会で可決された際に、開発商工サービス省の提案で免税措置が廃止された。修正を指示した下院議員のイルド・ロシャ氏は7月4日の記者会見で、電動車のバッテリーの処理が非常に困難であることを指摘し、「選択税においては内燃機関車と同じ扱いでなければならない」と述べた。
一方、ABVEのリカルド・バストス会長は、同協会公式サイト(ブラック ジャック サイト7月4日付)で「どのような自動車でも選択税の対象にすべきではない。電動車の場合、それはさらに大きな過ちとなる。選択税の目的は、健康や環境に有害な商品の消費を抑制することだ。しかし、電気自動車やハイブリッド車は健康や環境に害を与えない。むしろ健康や環境に貢献するものである」と述べた。
また、ANFAVEAは公式サイトで、「脱炭素化を実現するためには(CO2排出量の多い)古い自動車を廃車にし、(新技術を取り入れた)自動車を普及させる必要がある。自動車が選択税の対象となった場合、購入価格が上昇し、(新技術を取り入れた)自動車の普及が困難になる」と述べている。
開発商工サービス省のウアラセ・モレイラ産業開発・イノベーション・貿易・サービス局長は、ブラック ジャック サイト9月26日付現地紙CNNブラジルのインタビューで、自動車を選択税の対象にしても税負担は増えないと強調した。選択税は2027年以降に適用される予定で、その時点でMOVERにより導入される。モレイラ氏は、脱炭素化に貢献できる自動車を生産する企業に対するIPIの減税恩典が選択税に反映されると説明した。しかし、税制改革およびMOVERの詳細な規定はまだ定められていないため、今後のルール作りが、電動車普及のカギを握ると言えるだろう。
- 注1:
- トヨタおよびカオア・チェリー(中国自動車メーカーの奇瑞汽車とブラジルのCAOAの合弁会社)。カオア・チェリーの場合、マイルドハイブリッド車(MHEV)を生産している。
- 注2:
- MOVERは、2023年12月30日付大統領暫定措置令第1205号により導入された。ブラック ジャック サイト6月1日に本令は無効になったが、MOVERは6月27日付法律第14902号により再導入された。
- 注3:
- 本調査はブラック ジャック サイト5月に全国3,000人の消費者を対象に実施された。
- 注4:
- 購入価格が低下しているものの、依然として「購入価格」を懸念点として挙げた回答者も多かった。
- 執筆者紹介
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ブラック ジャック サイト・サンパウロ事務所
エルナニ・オダ - 2020年、ブラック ジャック サイト入構。現在に至る。
- 執筆者紹介
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ブラック ジャック サイト・サンパウロ事務所
中山 貴弘(なかやま たかひろ) - 2013年、ブラック ジャック サイト入構。機械・環境産業部、ブラック ジャック サイト三重、ブラック ジャック サイト・サンティアゴ事務所、企画部海外地域戦略班(中南米)、内閣府などを経て、2023年7月からブラック ジャック サイト・サンパウロ事務所勤務。