閉幕後のドバイ万博会場を新たなエコシステムに、「District2020」構想の計画進む
(アラブ首長国連邦)
ドバイ発
2020年07月15日
アラブ首長国連邦(UAE)のドバイでは、2021年10月から開催されるドバイ国際博覧会(以下、万博)の閉幕(2022年3月31日)後、会場跡地に新たなエコシステムを展開する計画が進んでいる。会期終了から半年後の2022年10月、再開発した会場を「District 2020」としてオープン、14万5,000人が生活する商業・住居複合地区とする構想だ。報道によると、2020年ドバイ万博公社(以下、公社)は、万博のレガシーを次世代へ引き継ぐため、サステナビリティー館やアル・ワスルプラザをはじめとする万博会場の主要な建物を含むインフラの80%を再利用するとしている。
公社は7月2日、中国・北京に拠点を置く人工知能(AI)やロボテックス分野を得意とするターミナス・テクノロジーが「District2020」への長期入居契約に調印したと公式ウェブサイト上で発表した。同社はドバイ万博のプレミアムパートナーとして、150台以上のロボットを万博会場に配備。会期中はAI駆動の技術を用い、来場客の送迎や飲食物のデリバリーなど多岐にわたる活動を実施する予定で、会期終了後には本社とリサーチセンターを会場跡地の新設地区に設置することになる。また、ドイツのシーメンスも同区内のビル2棟に10間年入居する契約を締結したと「ザ・ナショナル」紙(3月5日)が伝えており、同社のドバイにおける運営拠点として、約1万1,000平メートルのオフィススペースに約1,000人の従業員が勤務する予定だという。
併せて公社は、世界中のスタートアップやSME(中小企業)を対象とした同区への誘致プログラムを発表している。2月の報道によると、公社は「Scale2Dubai」と銘打ったプロジェクトを発足、観光や物流、建設、不動産、教育などの特定産業と、モノのインターネット(IoT)やAI、ビッグデータなどの特定技術を対象として入居を募集しており、選定した事業者に対し、2年間のオフィススペース、滞在ビザ、起業サポートなどを提供するとしている。6月26日には、ドバイ首長国政府の中小企業支援機関「Dubai SME」とUAE連邦政府のイニシアチブである「ムハンマド・ビン・ラーシド・イノベーション・ファンド」との協力協定を結び、同プログラムに参加する事業者に対して、大企業とのマッチング支援などを行うことを発表。新型コロナウイルスの流行に伴って世界的に影響が拡大する中、サポート体制の拡充を図ることで入居に関心を示す企業にアピールしている。現在、「District2020」公式ウェブサイトで同プログラムへの関心表明を受け付けている。
(安井梓、田辺直紀)
(アラブ首長国連邦)
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