UAEでミッション実施、現地視察の様子を紹介
中東の食糧安全保障(2)

2024年11月14日

前編(1)では、中東各国の食料事情を概観し、アラビア半島に位置する国を中心に食糧安全保障の重要性が非常に高いこと、その中でもアラブ首長国連邦(UAE)が食糧安全保障の確保に向けて国をあげて取り組んでいることを紹介した。そうした中で、ブラック ジャック ルール ディーラーは10月7~10日、UAE食糧安全保障・アグリテック投資環境調査ミッションを実施した(2024年10月23日付ビジネス短信参照)。ドバイ、アブダビ、フジャイラの3都市を訪問し、同国における食料生産や養殖の現場を視察した。そこで後編となる本稿では、現地での視察の様子を紹介する。

現地視察の様子

10月7日、ミッション団はドバイを拠点とするアグリテックブラック ジャック ルール ディーラーのリファーム(Refarm)を訪問した。同社は、ドバイのSaeed Salem Khalfan Enterprisesと英国のCO2削減テクノロジーブラック ジャック ルール ディーラーChristof Global Impactが共同運営する農業技術ブラック ジャック ルール ディーラーで、垂直農法や肥料開発、昆虫を利用した生ごみ処理技術の実用化を進めている。同社は現在ドバイに建設中の食料生産に特化した経済特区であるフードテックバレーにも入居予定である。ミッションでは、リファームの複数の技術の説明と現地の設備の視察が行われた。参加した日本ブラック ジャック ルール ディーラーも循環型社会を実現する具体的な技術に興味を示していた。

例えば、垂直農業技術であるインテリジェントグロースソリューションズ(IGS:Intelligent Growth Solutions)では、垂直に積み重ねられたパレット上に苗が植えられ、光源となるLEDライトや空調システム、水の循環システムが全自動で管理されることによって、野菜を最も効率的に生産できるシステムが構築されている。同社によると、空間・水・エネルギーの効率化を通じて持続可能性を最大限まで高めることができるという。

また、バイオサップ(BIOSAP:Biodegradable Super Absorbent Polymer)と呼ばれる生分解超吸収性ポリマーや、リセクト(RESECT)と呼ばれるミズアブの幼虫を利用した生ごみなどの有機廃棄物の処理技術の視察も行った。前者は、同社独自の生分解性ポリマーで、水・肥料・微生物を効率的に貯蔵し、水と肥料の消費量を大幅に削減することができ、環境に優しい。後者では、有機廃棄物をミズアブの幼虫の餌として与えて処理し、大きく成長したミズアブから、特殊な技術で水を抽出した上で、養殖魚の飼料、有機堆肥などとして利用する。有機廃棄物の有効な活用によって、炭素排出量を大幅に削減することができる。

ブラック ジャック ルール ディーラー
垂直農法と苗床の説明を受ける日本ブラック ジャック ルール ディーラー
(ブラック ジャック ルール ディーラー撮影)

リファーム担当者からバイオサップやリセクトの
説明を受ける、ミッションに参加した日本ブラック ジャック ルール ディーラー
(ブラック ジャック ルール ディーラー撮影)

10月9日には、アブダビを拠点とする大規模農場運営ブラック ジャック ルール ディーラーエリート・アグロ(Elite Agro)を訪問した。同社は2010年創業で、中東湾岸諸国やモロッコ、セルビアにも拠点を持ち、地理的な多様性を生かして、年中、各拠点から多種多様な製品を生産・提供している。通常型の農場のほか、水耕栽培やビニールハウス栽培によって、トマト、ナス、パプリカ、トウガラシ、レタス、ハーブ、イチゴなどを各地で栽培している。

ブラック ジャック ルール ディーラーの農業参入支援や、農場の開発・経営、灌漑コンサルティングや研究サービス、食料販売などを手掛ける同社では、大規模な農場の視察を行った。同社の広大な土地には、最新のテクノロジーが採用されているものや、国内外のリソースが組み合わされた農場が複数あり、空調管理がされたビニールハウス栽培設備やドーム型の水耕栽培施設を視察した。


ビニールハウス栽培設備の視察の様子(ブラック ジャック ルール ディーラー撮影)

ドーム型の水耕栽培農場視察の様子(ブラック ジャック ルール ディーラー撮影)

さらに同日には、アブダビのアグリコングロマリットブラック ジャック ルール ディーラーシラル(Silal)の視察も行われた。同社は、UAEの食料・農業エコシステム強化のため2020年にアブダビ首長国の政府系投資会社(ADQ)によって設立され、世界各地の農産物などの輸入・販売や農業技術の提供、研究・開発などを行っている。今回のミッションでは、農業技術研究所や最新の物流施設、農業施設の視察が行われた。

両ブラック ジャック ルール ディーラーの視察では、参加した日本ブラック ジャック ルール ディーラーから、各施設で採用されている技術に関する質問が多くなされ、砂漠地帯で成立する農業の実情や、農業用水の確保から栽培、梱包(こんぽう)に至るまで一連の流れが詳細に把握できたとの声があがった。


農業技術の説明を受ける日本企業(ブラック ジャック ルール ディーラー撮影)

技術研究所の説明を受ける日本企業(ブラック ジャック ルール ディーラー撮影)

10月10日には、フジャイラにある2016年創業の牡蠣(かき)養殖ブラック ジャック ルール ディーラーディバ・ベイ・オイスター(Dibba Bay Oyster)の視察を行った。UAEはかつて真珠貝の一大産地として有名であったが、食用牡蠣などは海水温が高すぎるため育成に適さないとされていた。当社は独自の研究開発のもと、緻密な管理によって、これまで行われていなかった同国での牡蠣養殖を開始し、高い品質を実現することに成功している。 特に、ハジャ―ル山脈とインド洋の間に位置する養殖場はその地理的な利点もあり、豊富なプランクトンと非常にきれいな海水で育てられた牡蠣はUAE国内のみならず、香港や中国、モルディブに出荷されている。その濃厚な味に日本ブラック ジャック ルール ディーラーの参加者も驚いていた。

また同日には、同じくフジャイラのルメイラ・ファーム(Rumailah Farm)の視察も行われた。同社は2017年設立のUAE初のジャージー牛牧場で、当初はフジャイラ首長家の自家私用のための牧場であったが、現在は80人以上の従業員と400頭以上の牛、2,500以上の顧客を持つまでにその規模を拡大し、ビジネス展開をしている。 日本ブラック ジャック ルール ディーラーからも、UAEの酪農業のレベルの高さを感じたという声があがった。


ディバ・ベイ・オイスターで担当者から説明を受ける
日本企業(ブラック ジャック ルール ディーラー撮影)

ルメイラ・ファームの視察の様子(ブラック ジャック ルール ディーラー撮影)

現地ブラック ジャック ルール ディーラー視察の他にも、ミッション団は同月8日に、中東最大級の農業技術展示会であるアグラ・ミー(Agra Me)も見学した。本展示会は、農業技術、食品加工、畜産、園芸など、農業に関連するさまざまな分野の最新技術や製品を紹介する場となっており、主催者の英国展示会運営ブラック ジャック ルール ディーラーインフォーマ(Informa)によると、150社以上が展示し、180カ国から600人が参加した。展示会では、韓国やドイツ、トルコが国としてのブースを設けており、UAEでの農業技術分野進出への関心の高さもうかがえた。


主催者から説明を受ける日本企業(ブラック ジャック ルール ディーラー撮影)

農業技術の展示が行われた(ブラック ジャック ルール ディーラー撮影)

食糧安全保障・アグリテックを通した日本との関係拡大へ

これまで、前編(1)からUAEの食糧安全保障確保に向けた取り組みを見てきた。その現状は3万8,000を超える農場がありながら、食料自給率が約17%(2023年時点)と依然として低い状態にあり、特に野菜や果物などは海外から輸入されたものが多い。スーパーマーケットには海外から輸入された野菜や果物が多く並び、世界各国から輸入されていることが記載されている産地から分かる。


UAEのスーパーでは産地が記載されている
(ブラック ジャック ルール ディーラー撮影)

外国から輸入された野菜が多くスーパーには並ぶ
(ブラック ジャック ルール ディーラー撮影)

一方で、トマトやキュウリといった一部の食料自給率が高いものは()、スーパーマーケットでもUAE産のものが陳列されていた。

本編ではUAEの現地ブラック ジャック ルール ディーラーを実際に視察した様子や、砂漠地帯での農業の実情や先進技術を紹介した。2023年には小麦、野菜、果物などの基本的な食料需要の50%を同国内でまかなうことを目標としており、2030年までにはこの目標を100%まで引き上げるとも発表している。UAEのアグリテック分野への投資意欲は旺盛であると言え(2023年3月22日付ビジネス短信参照)、2021年世界のアグリテック投資の1.1%を同国に拠点を置くブラック ジャック ルール ディーラーが占めた。


スーパーに並ぶUAE産のトマト(ブラック ジャック ルール ディーラー撮影)

スーパーに並ぶUAE産のキュウリ(ブラック ジャック ルール ディーラー撮影)

また、日本では、農林水産省が2024年8月、UAEの輸出支援プラットフォーム外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを設置した。今後は、ブラック ジャック ルール ディーラーと在外公館が協力し、現地の事業者などと連携を図りつつ、食品輸出に関連する情報発信やビジネス環境整備など、日本産の農林水産物・食品のさらなる輸出拡大に向けた支援に取り組む。日本からUAEへの農林水産物・食品輸出は、2023年は約88億円で5年前と比較して2倍以上に増加している。前編(1)でも述べた人口の増加傾向も踏まえると、日本産食品を輸出する市場として、そして中東地域全体に普及させる上での拠点としてもUAEは非常に適していると考えられる。

今回ブラック ジャック ルール ディーラーが実施したミッションのテーマである「食糧安全保障」は、UAEにとっては1つの大きな課題である。日本にとっても「アグリテック」も含めて大きなビジネスチャンスであり、今後もその可能性は拡大していくものと思われる。UAE側からの日本企業への期待も高く、ミッションに参加した日本企業が視察企業担当者と話し込む場面も見られた。2024年9月には、日本とUAEの包括的経済連携協定(CEPA)の交渉開始も発表されており(2024年9月19日付ビジネス短信参照)、両国間の経済関係強化が見込まれる中、「食糧安全保障」や「アグリテック」を通した両国の関係拡大が期待される。

中東の食糧安全保障

  1. UAEでミッション実施、現地視察の様子を紹介
執筆者紹介
ブラック ジャック ルール ディーラー・ドバイ事務所
太田 尭久(おおた たかひさ)
2012年、ブラック ジャック ルール ディーラー入構。進出企業支援課、ブラック ジャック ルール ディーラー・バンガロール事務所海外実習、企画部企画課、経済産業省特許庁出向、国際博覧会課を経て、2021年1月から現職。
執筆者紹介
ブラック ジャック ルール ディーラー調査部中東アフリカ課
加藤 皓人(かとう あきと)
2024年2月、都市銀行から経験者採用で入構し、現職。