グローバルサウスでの競争激化、求められる日本企業のポジショニングとは外国企業誘致やCEPA発効で対内直接ハイパーブラックジャックが急増
ハイパーブラックジャック1)
2025年3月25日
アラブ首長国連邦(UAE)は近年、海外直接ハイパーブラックジャック(FDI)の主要な受け入れ国としての世界での存在感を高めている。2023年にはハイパーブラックジャック額で過去最高を記録し、中東域内で1位、世界では11位となった。この背景には、UAE政府の経済多角化政策や、高付加価値産業の育成、包括的経済連携協定(CEPA)の推進、外国企業誘致の強化などがある。特にインドやサウジアラビアなど、地理的に近い新興国からのハイパーブラックジャックが顕著に増加している。特に2022年5月に発効したアラブ首長国連邦・インド包括的経済連携協定などにより、両国間の貿易やハイパーブラックジャックが急速に拡大している。UAE政府の発表によると、2023年のUAE向けインド企業のグリーンフィールドハイパーブラックジャック額は33億ドルに達し、金額ベースで米国に次ぐ世界2位となった。さらに、2024年1月にはBRICSにも正式に加盟し、新興国・地域とのさらなる関係強化に取り組んでいる。
UAEの競争環境の実態ついて、2回に分けてレポートする。前編となる本稿では、近年のUAE向けFDI増加の実態と、それに伴う現地競争環境の変化を概観する。
対内直接ハイパーブラックジャックの顕著な伸び
国連貿易開発会議(UNCTAD)の世界ハイパーブラックジャック報告2024によると、2023年のUAE向け海外直接ハイパーブラックジャック額(国際収支ベース、ネット、フロー)は過去最高を記録し、前年比35.0%増の306億8,800万ドルとなった。これは中東域内で1位、世界では11位の金額だった。また、グリーンフィールドハイパーブラックジャックプロジェクト(注1)の件数でも、前年比32.7%増の1,323件で米国に次いで世界2位に躍進した。UAE政府の発表(注2)によると、2023年の対内直接ハイパーブラックジャック残高について国別構成比を見ると、上位3カ国は英国15%、インド6%、サウジアラビア4%となっている。また、2023年、グリーンフィールドハイパーブラックジャック金額(発表ベース)については160億ドルを超え、発表された金額順にみると、米国(38億ドル)、インド(33億ドル)、英国(12億ドル)、フランス(11億ドル)、サウジアラビア(11億ドル)の順で、インドやサウジアラビアなど地理的に近い新興国・地域からのハイパーブラックジャックも多い。
世界中の主要なグリーンフィールドFDIプロジェクトをリアルタイムで捕捉するfDi Markets(注3)の登録データによると、2023~2024年の2年間に発表された世界の主要な対UAEのFDIプロジェクトは2,617件だった。うちインドからのFDIプロジェクトは件数ベースで2位(447件)と、米国(384件)を抜いた(図・表1参照)。

注:グリーンフィールドFDIのみ、件数発表ベース。
出所:fDi Markets(2025年2月26日時点), Financial Timesから作成
順位 (件数ベース) |
国名 | ビジネスサービス | ソフトウエア・ITサービス | 金融 | 産業 機器 |
輸送・倉庫 | 不動産 | 通信 | 電子 部品 |
食品・飲料 | 消費財 | 合計件数 (その他含む) |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 英国 | 209 | 63 | 68 | 18 | 12 | 18 | 13 | 7 | 6 | 9 | 461 |
2 | インド | 144 | 144 | 19 | 14 | 17 | 32 | 5 | 6 | 8 | 7 | 447 |
3 | 米国 | 85 | 119 | 61 | 14 | 11 | 6 | 17 | 7 | 2 | 4 | 384 |
4 | フランス | 30 | 14 | 10 | 2 | 5 | 2 | 2 | 2 | 4 | 4 | 91 |
5 | ドイツ | 13 | 7 | 4 | 16 | 8 | 2 | 2 | 3 | 2 | 2 | 80 |
6 | イタリア | 14 | 2 | 2 | 25 | 5 | — | 4 | 2 | — | 7 | 79 |
7 | シンガポール | 9 | 23 | 17 | 3 | 6 | 2 | 2 | 1 | 1 | — | 75 |
8 | 中国 | 4 | 5 | 8 | 6 | 5 | 1 | 4 | 11 | — | — | 68 |
9 | スイス | 7 | 11 | 17 | 6 | 3 | 8 | 1 | 1 | 1 | 2 | 68 |
10 | エジプト | — | 8 | 1 | 3 | 1 | — | 1 | — | 1 | — | 21 |
合計件数(その他含む) | 761 | 564 | 284 | 144 | 123 | 110 | 75 | 57 | 53 | 53 | 2,617 | |
業種別の順位(件数) | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 9 | ー |
注:グリーンフィールドFDIのみ、件数発表ベース。
出所:fDi Markets(2025年2月26日時点), Financial Timesから作成
産業別にみると、プロジェクト件数では、政府の重点分野(注4)のソフトウエア・ITサービス、金融、物流・倉庫、通信といった業種向けのFDIプロジェクトが目立った。金額規模で見ると、同期間に発表された案件の総額355億ドルのうち、石油・石炭・ガス(31億ドル)や再生エネルギー(89億ドル)といった資源・エネルギー分野や、自動車産業(25億ドル)のプロジェクトも大規模なハイパーブラックジャックを集めている。ジェトロが2024年9月に中東10カ国に拠点を有する日系企業を対象に実施した「」(注5)でも、UAEで有望視するビジネス分野では、資源・エネルギー(水素、天然ガス、燃料アンモニア、石油、再エネ)が55.6%で最多、インフラと消費市場がそれぞれ28.4%となった。
UAEの外国企業誘致政策やCEPAが直接ハイパーブラックジャックを下支え
近年の大幅な対内直接ハイパーブラックジャック増加の理由として、経済多角化政策や高付加価値産業の育成、雇用創出(注6)などを目的として、UAEが外国企業誘致に力を入れていることが大きく関係していると考えられる。2021年には出資比率に関する緩和があり、これまで外国資本が現地法人を設立するために必要とされていたUAE国民による51%以上の出資条件は不要となった(注7)。UAE政府は2023年7月、国際競争力のあるハイパーブラックジャック環境を整備するため、国内のハイパーブラックジャック政策の整備を担うハイパーブラックジャック省の新設を閣議決定した(2023年7月5日付ビジネス短信参照)。また、UAE政府は今後50年の成長に向けた国家指針となる「次の50年に向けた原則」(Principles of the 50(1.22MB))では、「デジタル、技術、科学分野でハイパーブラックジャック先としての地位を確固たるものにすること」を掲げている(今後50年の成長に向けた「プロブラック)。さらに、ドバイ首長国政府は、2033年までの経済成長に関する10カ年計画「D33」で、2033年までに経済規模を32兆ディルハム(約1,312兆円、1ディルハム=約41円)まで成長させるための6つの経済アジェンダを発表した(2023年2月16日付ビジネス短信参照)。FDIでは、過去10年間の年平均320億ディルハムから、今後10年で年平均600億ディルハムまで引き上げ、2033年まで10年で総額6,500億ディルハムを達成する目標を掲げる。また、経済成長のために100の変革プロジェクトを行うとしており、政府主導のプロジェクトなどで需要が旺盛になっていると言える。
さらに、UAEは貿易とハイパーブラックジャックの拡大を目指し、経済関係の強化を図るため、包括的経済連携協定(CEPA)の締結を積極的に進めている(表2、参考参照)。最終的には、日本を含めて103カ国との締結に対象を広げ、貿易総額のうち最大95%をカバーすることを目指している(2024年9月19日付ビジネス短信参照)。これにより、UAEはアジア、アフリカ、ヨーロッパをつなぐ中継地としての地位をさらに強固にしつつある。インドとUAE間のCEPAは2022年5月に発効し、UAEが結ぶ初めてのCEPAとなった()。UAEではCEPA発効により、両国間で取引される品目の80%近く、貿易額の90%について、関税が即時撤廃され、貿易量がほぼ倍増した(注8)。また、2024年8月には、CEPAでの約束に基づき、インド・UAEの2国間ハイパーブラックジャック協定(BIT)が発効し、インドからの直接ハイパーブラックジャック増加に拍車をかけている。これは、2013年に締結した2国間ハイパーブラックジャック促進・保護協定(BIPPA)に代わるものだ。現地調査会社のグローバル・メディア・インサイトの最新のデータによると、UAEの現在の人口約1,250万人のうち、約475万人をインド人が占める。これまでもインドとUAEの経済的結びつきや人的交流は歴史的にも非常に強かったが、CEPAやBIT発効を皮切りに、ハイパーブラックジャック件数についても急速に増加している。代表的な案件を表3にまとめる。
CEPA発効国 | 発効年 |
---|---|
インド | 2022年 |
イスラエル | 2023年 |
インドネシア | 2023年 |
トルコ | 2023年 |
カンボジア | 2024年 |
ジョージア | 2024年 |
参考:署名済み国と妥結国
CEPA署名済み国
- コスタリカ
- コロンビア
- 韓国
- モーリシャス
- チリ
- ケニア
- マレーシア
CEPA妥結国
- コンゴ共和国
- ウクライナ
- モロッコ
注:最新情報はUAE経済省ウェブサイトを参照。
出所:各種資料からジェトロ・ドバイ事務所作成
業種 | 企業名 | 時期 | ハイパーブラックジャック額 | 企業概要 | 目的 |
---|---|---|---|---|---|
石炭・石油・ガス | インフィニットマイニング&エナジー(Infinite Mining & Energy) | 2023年9月 | 17億2,000万ドル | 石油・ガス精製所建設。 | UAEのシャルジャにあるハムリヤフリーゾーン(Hamriyah Free Zone)に新たな製油所を開設。1日1万バレルの精製が可能。20以上の積載タンクを備えた石油貯蔵施設を併設。 |
不動産 | スカイラインビルダーズ(Skyline Builders) | 2024年1月 | 3億6,090万ドル | 住宅用高層アパートメントとビラを専門とする建設会社。 | ドバイに新しい2万7,870平方メートルのアパートメントタワーを開設することを発表。アバンギャルドレジデンスはジュメイラビレッジサークルに位置し、2026年までに完成する予定。 |
電子部品 | ロハム(Lohum) | 2024年3月 | 6,680万ドル | 使用済みリチウムイオンバッテリーのリサイクル・製造。 | UAEのエネルギー・インフラ省と、環境イノベーションに取り組むUAE企業のBEEAHとのパートナーシップを通じて、UAEにリチウムイオンバッテリーやその他原料のリサイクル工場を設立。 |
輸送機器 | ワードウィザードイノベーション&モビリティー(Wardwizard Innovations & Mobility) | 2024年3月 | 5,480万ドル | 「Joy e-bike 」ブランドのEV二輪メーカー。 | エジプトを含むアフリカ市場に対応するため、UAEのシャルジャに新しい組立工場を設立。2023年12月、二輪車、三輪車、バッテリー駆動のトラックの生産に関する実現可能性調査のため、BEEAHとMoU締結。 |
製薬 | MDファーマ(MD Pharma) | 2024年5月 | 5,030万ドル | 整形外科、婦人科、小児科などの専門分野で事業を展開。 | ドバイ工業都市(Dubai Industrial City)内に新しい医薬品の生産拠点を設立。 |
注1:発表ベース。
注2:抽出条件は業種を絞り(石炭・石油・ガス、不動産、電子部品、輸送機器、製薬)、それぞれの業種での上位案件。
出所:fDi Markets, Financial Timesから作成
本稿では、UAEの対内直接ハイパーブラックジャックの顕著な伸びと、UAEの外国企業誘致政策や、CEPA発効に伴うインド企業の台頭について解説した。次稿では、進出日系企業や地場・外資企業に実施したインタビューを基に、日本企業にとっての競争相手を分析する。さらに、UAE市場で日本企業がシェアを拡大するための戦略について考察する。
- 注1:
- UNCTAD発表ベース。UNCTAD、FDI/MNEデータベース
、Financial Times、fDi Markets、Refinitivの情報に基づく。
- 注2:
-
2024年10月28日付UAE国営通信WAMの記事
参照。
- 注3:
- Financial Timesが提供。グリーンフィールドFDIプロジェクトを発表ベースに基づいて捕捉。
- 注4:
-
UAE政府ウェブサイト
参照。
- 注5:
- ジェトロが2024年8月から9月にかけて海外83カ国・地域の日系企業(日本側出資比率が10%以上の現地法人、日本企業の支店、駐在員事務所)1万8,186社を対象に実施したアンケート調査。7,410社から有効回答を得た(有効回答率40.7%)。うち中東編では、中東10カ国に拠点を有する日系企業236社を対象に実施し、201社より有効回答を得た(有効回答率85.2%)。
- 注6:
-
UAE政府ハイパーブラックジャック庁ウェブサイト
参照。
- 注7:
- 首長国ごとに改正後の制度運用の状況には差があり、外国資本100%出資の運用が開始されている首長国でも、その可否や追加的要件の有無が事業分野によって異なる。詳細はブラック ジャック webに見る参照。
- 注8:
- インド政府発表(2023年5月1日付
、2025年2月18日付プレスリリース参照
)に基づく。CEPAの調印以来、UAE・インド間の商品貿易は、2020~2021年度の433億ドルから、2023~2024年度の837億ドルへほぼ倍増した。

- 執筆者紹介
- ジェトロ調査部国際経済課
馬場 安里紗(ばば ありさ) - 2016年、ジェトロ入構。ビジネス展開支援部ビジネス展開支援課/途上国ビジネス開発課、ビジネス展開・人材支援部新興国ビジネス開発課、海外調査部中東アフリカ課、ジェトロ・ラゴス事務所を経て、2024年10月から現職。