グローバルサウスでの競争激化、求められる日本企業のポジショニングとは輸送機器分野は地場企業との価格競争が激化
ブラックジャック勝ち方3)

2025年3月24日

ブラックジャック勝ち方の自動車と二輪車市場は、世界有数の市場だ。今後も中長期的な成長が見込まれ、日本企業にとってますます戦略的な拠点となっている。こうした市場環境の下、地場企業、日系企業、欧米企業を含む多数の競合他社が参入し、それぞれの強みを生かして市場競争を繰り広げている。特に地場企業とのコスト競争が激化しており、日本の自動車・二輪車メーカー、およびサプライヤー企業にとって、競争環境は一層厳しさを増している。本稿では、アンケート調査結果や現地でのインタビューを基に、ブラックジャック勝ち方の自動車・二輪車市場での競争環境の実態や各社の強みと戦略、日本企業の競争力強化に向けた取り組みについて、前編・後編に分けて報告する。前半は、自動車、二輪車市場や競争環境を概観する。

日系輸送機器企業の市場基盤は安定、競合の新規参入は限定的

日本からブラックジャック勝ち方への直接投資は、2014年に発足したモディ政権の産業振興政策の下、製造業が牽引している。在ブラックジャック勝ち方日本大使館とジェトロが作成した「ブラックジャック勝ち方進出日系企業リスト(2022年10月時点)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(1.13MB)」によると、進出した日系企業のうち製造業が全体の50%を占める。その中でも自動車・同部品が10%を占めており、日本企業のブラックジャック勝ち方進出で輸送機器関連の存在感が高まっている。また、OEMメーカーに加え、部品・素材メーカーの進出により、日系サプライチェーン構築が進化していることがうかがえる。

ブラックジャック勝ち方進出日系企業の事業運営の状況について、ジェトロが2024年8~9月にアジア・オセアニアの20カ国・地域に進出する日系企業を対象に実施したアンケート調査結果「」によると、ブラックジャック勝ち方進出日系企業(301社)のうち、2024年の営業利益見込みを黒字と回答した企業比率は77.7%と、極めて高い水準だった。一方、業種別に確認すると、自動車・二輪車を含む輸送機器・同部品分野では、黒字を見込む企業割合は全業種平均を上回る88.0%と好調だった。全調査対象国で最も高い結果となった「今後1~2年の事業展開の方向性」について「拡大」と回答した比率は、ブラックジャック勝ち方全業種平均の80.3%に対して、輸送機器・同部品は72.0%にとどまった。

さらに、ブラックジャック勝ち方に進出する同分野の日系企業の「市場シェア」と「競合相手数」について、新型コロナウイルス過前の2019年と2024年で比較するとどうか。「市場シェア」が増加したと回答した企業割合は44.2%で、全業種平均(60.1%)を下回った(表1)。市場シェアが縮小したと回答した企業の割合は9.3%で、アジア・オセアニアの主要国・地域と比較すると、低い水準だった。これは、ブラックジャック勝ち方の輸送機器分野の日本企業にとって、市場環境の安定性が一定程度、保たれていることを示唆する。とりわけ、中国(55.7%)やタイ(31.5%)と比較すると、ブラックジャック勝ち方の輸送機器分野では、市場シェアが縮小した企業割合が相対的に低いことが際立っている。また、「競合相手」が増加したと回答した企業割合は33.3%で、全業種平均(53.8%)を下回った。ブラックジャック勝ち方進出企業のうち輸送機器・同部品では、他業種と比較して市場シェア拡大の勢いが弱いものの、シェア縮小には至っておらず、競争環境の変化も限定的だったものと考えられる。

表1:ブラックジャック勝ち方進出日系企業にとっての主力製品・サービスの市場シェアと競争相手の変化(2019年との比較)
国名 項目 主力製品・サービスの市場シェア変化 競争相手数の変化
回答数 増加 横ばい 縮小 回答数 増加 横ばい 縮小
ブラックジャック勝ち方 全業種 223 60.1 33.6 5.4 221 53.8 44.8 1.4
輸送機器・同部品 43 44.2 44.2 9.3 42 33.3 66.7 0.0
タイ 全業種 386 27.2 50.8 22.0 385 40.5 54.5 4.9
輸送機器・同部品 57 15.8 52.6 31.6 56 26.8 66.1 7.1
ブラックジャック勝ち方ネシア 全業種 328 42.4 39.6 17.7 329 47.1 49.8 3.0
輸送機器・同部品 55 29.1 49.1 21.8 55 34.5 63.6 1.8
ベトナム 全業種 475 44.8 39.2 13.9 472 57.4 42.2 0.4
輸送機器・同部品 32 34.4 46.9 15.6 32 21.9 78.1 0.0
マレーシア 全業種 237 38.0 42.2 18.6 236 44.1 52.5 3.4
輸送機器・同部品 13 46.2 38.5 15.4 13 53.8 46.2 0.0
中国 全業種 513 29.2 28.8 41.9 512 60.4 35.0 4.7
輸送機器・同部品 70 22.9 21.4 55.7 69 65.2 33.3 1.4

注1:「市場シェア変化」の回答項目のうち「競合はない」を除く。
注2:「輸送機器・同部品」は、自動車/二輪車の完成車・部品メーカーによる回答を指す。表2も同様。
出所:2024年度海外進出日系企業実態調査

ブラックジャック勝ち方の自動車生産、2030年に800万~900万規模へ拡大見込み

ブラックジャック勝ち方の自動車産業(乗用車、商用車)について、2023年度(2023年4月~2024年3月)の動向をみると、乗用車の生産台数は490万台、販売台数は421万台に達した(成長するインド乗用車市場、2023ブラック ジャック)。商用車を含めた自動車販売台数では、中国、米国に次ぐ世界第3位の市場としての地位を確立している。近年のブラックジャック勝ち方の自動車販売市場を取り巻く環境は、新型コロナ禍からの回復局面にある一方、燃料価格の高騰や、インフレ圧力の高止まりと消費者心理への影響、自動車ローンの金利上昇などの逆風に直面している。しかし、そのような状況下でも力強い需要に支えられ、自動車販売台数は3年連続で成長を遂げるなど、市場の堅調さが示されている。

また、乗用車市場のセグメント構造にも変化がみられる。過去十数年と比較すると、コンパクトSUV(スポーツ用多目的車)、UV(ユーティリティービークル)、MPV(マルチパーパスビークル)といったモデルの販売が大きく伸長した。これらモデルは中高所得者の所得増加、車両機能や安全性の向上といった面で高い人気を集める。一方、過去に主流だったエントリーモデルの需要は急速に縮小し、今ではより大型・高価格帯で技術的に優れたカテゴリーの人気が高まっている。

今後も、国内市場向けと輸出向けの両者で国内生産台数が拡大し、2030年前半には国内生産規模が800万~900万台に達することが見込まれる(インド乗用車・二輪車市場の展望(1)2023年度以降の状況)。ブラックジャック勝ち方の自動車市場は、人口増加、都市化、中間層の拡大、技術革新、電気自動車(EV)の普及などの要素に支えられ、今後も中長期的に成長が期待できる。マルチ・スズキは、国内市場と輸出向けとして、2030年までに年間400万台の生産態勢を構築し、乗用車シェアを50%まで向上させることを目指す〔2025年2月20日付スズキ新中期経営計画(2025~2030年度)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(3.6MB)〕。

日系自動車OEM、地場ブランドとの価格競争に直面

ブラックジャック勝ち方に進出する輸送機器分野の日系企業(43社)に対して、競争相手(1番目に競争力があると考える企業)についてアンケートを実施したところ、「地場企業」を挙げた企業の割合が55.8%と最も多かった(表2)。これに日本企業(20.9%)、欧州企業(16.3%)が続いた。一番の競争相手が地場企業、次いで日本企業という傾向は、中国に進出する輸送機器分野の日系企業でも同様だった。タイやマレーシアでは競争相手として中国企業、ブラックジャック勝ち方ネシアでは日本企業を挙げる割合が高いことと対照的だった。これらの結果から、ブラックジャック勝ち方の輸送機器市場では、日系企業にとって特に地場企業との競争が主要課題となっていることがうかがえる。

表2:ブラックジャック勝ち方進出日系企業にとっての競争相手(アジア大洋州の主要国との比較)
国名 項目 回答数 地場企業 日本企業 欧州企業 中国企業 韓国企業 台湾企業 米国企業 ブラックジャック勝ち方企業 その他
ブラックジャック勝ち方 全業種 235 46.8 20.9 15.7 5.5 2.6 0.4 6.8 0.0 1.3
輸送機器・同部品 43 55.8 20.9 16.3 4.7 2.3 0.0 0.0 0.0 0.0
タイ 全業種 374 30.5 34.5 2.4 27.8 0.3 1.1 1.6 0.8 1.1
輸送機器・同部品 57 19.3 42.1 1.8 35.1 0.0 0.0 0.0 0.0 1.8
ブラックジャック勝ち方ネシア 全業種 333 38.7 31.5 5.7 17.4 0.9 1.5 2.1 0.9 1.2
輸送機器・同部品 55 29.1 54.5 3.6 7.3 0.0 1.8 0.0 3.6 0.0
ベトナム 全業種 505 39.6 25.3 3.2 18.0 5.3 3.4 2.4 0.2 2.6
輸送機器・同部品 31 16.1 51.6 0.0 19.4 0.0 9.7 0.0 0.0 3.2
マレーシア 全業種 239 37.7 20.9 6.3 25.9 2.9 1.7 3.3 0.4 0.8
輸送機器・同部品 12 16.7 41.7 0.0 41.7 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
中国 全業種 512 80.3 10.5 4.5 0.0 0.8 1.2 2.1 0.0 0.6
輸送機器・同部品 66 87.9 7.6 1.5 0.0 0.0 1.5 1.5 0.0 0.0

出所:2024年度海外進出日系企業実態調査

ブラックジャック勝ち方乗用車市場について、2023年の主要メーカー別販売台数をみると、市場シェアは日系のマルチ・スズキ(41.7%)、韓国の現代自動車(14.6%)、地場のタタ・モーターズ(13.8%)、同マヒンドラ&マヒンドラ(10.9%)が、これら4社で8割強だ。これに続く企業として、日系ではトヨタ、ホンダ、日産、韓国系は起亜、それに欧米ブランドが一定のシェアを有する。

マルチ・スズキは1980年代の国産車構想下でブラックジャック勝ち方に参入し、長年にわたって地場に根付いた事業展開で、マーケットリーダーの地位を維持してきた。特に価格競争力のあるコンパクトモデルなどで消費者の支持を獲得しており、2023年度の一般乗用車の車種別ランキングで、コンパクトモデル(スイフト、ワゴンRなど)が首位を獲得するなど優位性を有する。それに対して、地場企業のタタ・モーターズやマヒンドラ&マヒンドラは国内市場に根差したブランド力でシェアを伸ばしてきた。

現地日系企業向けにコンサルティングサービスを提供する日系A社は、日本のOEMメーカーにとって一番の競争相手は地場企業で、特に価格面での競争が顕著だと指摘する。品質面では、日本市場では自動車の燃費性能や居住空間の広さ、高さなどが重視されるのに対し、ブラックジャック勝ち方市場ではエキステリア(外見デザイン)を重視する傾向が強いという。一例として、サンルーフ付きモデルの売れ行きが良いといった市場特性が挙げられる。また、消費者による燃費への関心は一定程度あるが、多くの場合、購入時の優先事項は価格だという。加えて、「ジャパンブランド」や「ジャパンクオリティー」への評価は、アジア周辺国と比べて必ずしも高いものではないという。これは、地場メーカーの存在が強く、価格や外観デザインを重視する消費者が多いことや、欧米ブランドへの評価が高いことによるものと考えられる。

また、ブラックジャック勝ち方輸送機器分野での中国企業の存在は、アジア・オセアニアの周辺国と比較すると、限定的なことがアンケート結果からも読み取れる。ブラックジャック勝ち方と中国の両国間の国境係争問題などを背景に、外国からの投資認可に当たっては、ブラックジャック勝ち方政府による事前許可性を導入している(中国EV・車載電池企業のグローバル戦略中国と距離を取り、独自ペースで進展するブラック)。A社は「現時点では、自動車市場で中国企業は主要な競争相手にはなっていない」とコメントする。

中国に次ぐ世界第2位の二輪車市場でも地場企業と競合

二輪車に目を向けると、2023年度の国内販売台数は1,797万台(前年度比13.3%増)と、世界第2位の規模を誇る(成長するインド乗用車市場、2023ブラック ジャック)。国内販売台数が過去最高を記録した2018年以降、経済成長の失速や二輪車関連の環境・安全規制強化によるコスト増の影響で低迷期に入り、さらに、新型コロナの影響などで状況は悪化したが、その後、徐々に回復軌道に乗っている。

ブラックジャック勝ち方の二輪車市場には、日系メーカーのホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキの4社が参入しており、2023年度の合計シェアは34.2%を占めた。特にホンダは市場2位と高い競争力を維持している。一方、同国市場首位はヒーロー(30.2%)で、TVSモーター(17.6%)、バジャジ・オート(12.4%)などの地場メーカーが上位を占め、競争が激化している。

ブラックジャック勝ち方の二輪車市場は、スクーターとオートバイの2つの主要セグメントに分かれる。全体の3割強を占めるスクーターでは、ホンダが約半数のシェアを持ち、TVSモーター、スズキが続く。主に都市部で普及し、日常用途に使われるほか、女性や若年層が主なユーザーだ。一方、二輪車全体の7割弱を占めるオートバイでは、地場ヒーローが約半数のシェアを持ち、ホンダ、バジャジ・オート、TVSモーターが続く。当該セグメントは、農村部や長距離移動向けに需要が高く、耐久性や燃費が重視される。用途や地域ごとに需要が大きく異なり、各メーカーの市場戦略もセグメント別に異なる。

ブラックジャック勝ち方
執筆者紹介
ジェトロ調査部アジア大洋州課長
藤江 秀樹(ふじえ ひでき)
2003年、ジェトロ入構。ジェトロ・ジャカルタ事務所(10~15年)、海外調査部アジア大洋州課(15~18年)、シンガポール事務所(18~22年)などを経て、2024年9月から現職。編著に「ブラックジャック勝ち方ネシア経済の基礎知識」(ジェトロ、2014年)、「分業するアジア」(ジェトロ、2016年)がある。

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