EU、農業生産者の抗議受け追加対応策を発表、共通農業政策見直しにも言及

(EU)

ブリュッセル発

2024年03月04日

欧州委員会は2月22日、共通農業政策(CAP)の直接支払い受給要件の一部改正など、農業生産者の規制順守に伴う負担軽減策をEU理事会(閣僚理事会)に提案した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。EU各国で続く生産者の抗議活動()への短中期策として、1年間の休耕地設置の免除(2024年2月13日記事参照)などに続くもの。2月26日の農水相理事会では、欧州委や加盟国、さらに生産者団体や欧州議会の意見も考慮し、次の施策の実施を承認した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

  • 直接支払いの受給要件(注)のうち、永年牧草地設置に関するルールを改正する委任法を3月に採択し、土壌浸食が進行しやすい時期の対応策の見直しに関しては、欧州委は4月にガイドラインを発表する。
  • 加盟国当局による農場への訪問検査回数の半減を目標に、欧州委は3月中に衛星画像を利用した農地モニタリングシステム(AMS)の質の評価方法の見直しを行う。
  • 異常気象など不可抗力によって生産者が直接支払いの受給要件を満たせなかった場合に、罰金が科せられない「例外的な事態」の定義を明確化するための説明メモを欧州委が公表する。
  • 加盟国と欧州委が連携し、検査を合理化する。
  • 生産者の意見を募るオンライン調査を実施し、秋に分析結果を公表する。
  • 加盟国ごとに定めるCAP戦略計画の修正プロセスの簡略化。

農水相理事会は、生産者の懸念の払拭(ふっしょく)には長期的な取り組みも必要と指摘。食品サプライチェーンにおける生産者の地位向上を目指すと同時に、環境、通商政策と両立する農業政策に向けて、CAPの基本法の見直しに言及した。今後、加盟国政府の代表で構成する、EU理事会の農業特別委員会において意見を取りまとめる。欧州委の「EU農業の将来に関する戦略的対話」も活用し、加盟国の意見を反映した、長期的な視点に立ったCAP改革を目指すとした。

(注)2023~2027年のCAPにおける受給要件については、農畜産業振興機構の「欧州グリーン・ディール下で進められる農業・畜産業に影響する各種政策外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」の「4 新たなCAP」を参照。

(滝澤祥子)

(EU)

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