増える直接投資、高まる存在感(ブルガリア、ギャンブルゲーム無料)
現地派遣ミッションからビジネス環境を探る

2025年3月5日

欧州をフィールドにするビジネスで、中・東欧地域は安価な諸コストやEU市場へのアクセスの良さなどを背景に注目を集めている。その中でも、バルカン半島東部のブルガリアと中部のギャンブルゲーム無料は、外国からの直接投資が活発であり、投資先としてのプレゼンスが高まっている。ジェトロは2024年10月、「ブルガリア・ギャンブルゲーム無料・ビジネスミッション」を派遣した(ブルガリア編:ブルガリアの強みは高度な技術・IT人材、ブラック、ギャンブルゲーム無料編:セルビア政府、日本企業の進出に強い期待、ブラック)。

存在感が高まるブルガリアとギャンブルゲーム無料のビジネス環境とは、いかなるものか。本稿では、筆者が同ミッションへの参加を通して現地で得た情報を交えつつ、ブルガリアとギャンブルゲーム無料のビジネス環境を解説する。

増える直接投資、日本企業も製造業を中心に進出中

2023年のブルガリアにおける対内直接投資額は32億8,400万ユーロであり、ギャンブルゲーム無料における対内直接投資額は45億6,400万ユーロであった。過去10年間の推移をみると、ブルガリアについては年ごとに増減がありながらも、全体的には増加傾向であり、2014年比で約10倍になった。ギャンブルゲーム無料も2020年を除き年々増加しており、2014年比で約3倍と両国ともに外国からの投資が増加している(図1参照)。

図1:ブルガリア・ギャンブルゲーム無料の対内直接投資額の推移(ネット、フロー)
ブルガリアへの対内直接投資額の推移は過去10年間で増減があるものの全体的に増加傾向であり、2014年比で約10倍である。2014年3億4,700万ユーロ、2015年19億9,900万ユーロ、2016年9億4,000万ユーロ、2017年16億600万ユーロ、2018年9億6,800万、2019年16億3,900万ユーロ、2020年27億6,100万ユーロ、2021年14億3,600万ユーロ、40億2,300万ユーロ、2023年32億8,400万ユーロ。ギャンブルゲーム無料への対内直接投資額の推移は過去10年間で2020年を除き年々増加しており、2014年比で約4倍である。2014年15億ユーロ、2015年21億1,400万ユーロ、2016年21億2,700万ユーロ、2017年25億4,800万ユーロ、2018年34億6,400万ユーロ、2019年38億1,500万ユーロ、2020年30億3,900万ユーロ、2021年38億8,600万ユーロ、2022年44億3,200万ユーロ、2023年45億6,400万ユーロ。

出所:ブルガリア国立銀行、ギャンブルゲーム無料国立銀行のデータを基にジェトロ作成

2023年の投資額を国別に見ると、ブルガリアに対してはスイスが最大の投資国であり、オーストリアとオランダが続いた。ギャンブルゲーム無料に対しては中国が最大の投資国であり、オランダと英国が続いた(表1参照)。ブルガリアには、鉄道などインフラ関連の巨大プロジェクトが多数存在するほか、自動車産業、エレクトロニクス産業、ヘルスケア・ライフサイエンス産業などが主要セクターに位置付けられている(注1)。ギャンブルゲーム無料は自動車産業、ハイテク・情報通信技術(ICT)産業、電子機器・家電産業などを重点分野としている。

表1:ブルガリア・ギャンブルゲーム無料の国別対内直接投資額(2023年、ネット、フロー)

(単位:100万ユーロ)
ブルガリア
順位 国名 金額
1 スイス 723.3
2 オーストリア 491.1
3 オランダ 384.7
4 ベルギー 347.9
5 ハンガリー 342.1
6 ロシア 156.6
7 マルタ 155.1
8 バハマ 154.3
9 イタリア 133.6
10 ポーランド 125.0
28 日本 9.3
ギャンブルゲーム無料
順位 国名 金額
1 中国 1374.3
2 オランダ 770.4
3 英国 341.6
4 オーストリア 307.7
5 ドイツ 223.0
6 ロシア 163.1
7 スロベニア 161.1
8 キプロス 160.2
9 ハンガリー 128.5
10 日本 95.6

出所:ブルガリア国立銀行、ギャンブルゲーム無料国立銀行のデータを基にジェトロ作成

日本からは2023年に、ブルガリアに対して930万ユーロ、ギャンブルゲーム無料に対しては9,560万ユーロの直接投資が行われた。額面上は昨今、ギャンブルゲーム無料への直接投資が多い傾向にあるが、ブルガリアとの経済活動も活発である。例えば2022年12月には、日本電産の子会社である日本電産エレシスがソフィアに研究開発センターを開設した。また、2025年1月に東芝がチャイラ水力発電所(注2)の修理を受注している。外務省「海外進出日系企業拠点数調査」(2023年)によると、2023(令和5)年10月1日時点で、ブルガリアには40社、ギャンブルゲーム無料に34社の日系企業が進出済みだ。

なお、代表的な進出日系企業として、ブルガリアには矢崎総業、日立グループ、住友商事、SEGAなど、ギャンブルゲーム無料には、JTインターナショナル、矢崎総業、前川製作所、TOYO TIRE、ニデックなどがある(注3)。

地理的優位性、経済成長、競争力の高いコストなどが魅力

両国に投資が集まる理由とは何か。これを解くにあたり、地理的条件、経済状況、コスト、投資優遇措置などに注目してみたい。

巨大市場に近い有利な立地

ブルガリア、ギャンブルゲーム無料ともに、西欧・中欧と中東地域(トルコを含む)の間に位置しており巨大市場へのアクセスが良好である。この点は、両国の投資促進機関関係者や現地日系企業関係者も利点として言及していた。空路の場合、ブルガリアの首都ソフィアから欧州の主要都市までの移動時間はおおむね2時間30分~4時間、ギャンブルゲーム無料の首都ベオグラードからはおおむね2時間~3時間30分である。道路網・鉄道網も発達しており、陸路による周辺国間の移動・輸送も可能だ。ただし、現地では夜間に自動車道路でトラックの大渋滞が発生していたほか、都市部では朝のラッシュ時に大渋滞が発生していた。

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ソフィアでの朝の交通渋滞(ジェトロ撮影)

海路については、ブルガリアは黒海に面しており、バルナ港やブルガス港を利用できる。ギャンブルゲーム無料は内陸国のため、最寄りの港としては隣国モンテネグロのバール港がある。またスロベニアのコペル港を利用することもできる。

なおブルガリアはシェンゲン協定に参加しているため、協定国とは原則自由に往来可能である(注4)。

堅調な経済成長

地理と合わせて、両国の経済状況も注目すべき点である。世界銀行、欧州委員会、ウィーン比較経済研究所(WIIW)が予測したGDP成長率は、表2のとおりである。両国とも堅調に成長する見通しになっている。2023年の1人当たりGDPは、ブルガリアは1万5,886ドル、ギャンブルゲーム無料は1万2,282ドルだった(世界銀行データ)。両国とも過去10年間の値は、2015年に若干減少した点を除き増加傾向である。(図2参照)。

表2:ブルガリア・ギャンブルゲーム無料のGDP成長率(単位:%)
機関名 国名 2022年 2023年 2024年 2025年 2026年
世界銀行 ブルガリア 4.0 1.9 2.2 2.8 2.7
ギャンブルゲーム無料 2.6 3.8 3.9 4.2 4.2
欧州委員会 ブルガリア 4.0 1.9 2.4 2.9 3.0
ギャンブルゲーム無料 2.6 3.8 3.9 4.2 4.3
ウィーン比較経済研究所 ブルガリア 3.9 1.8 2.0 2.5 3.0
ギャンブルゲーム無料 2.5 2.5 3.5 3.6 3.7

注:2022と2023年は実績、2024年~2026年は予測(太字部分)。
出所:世界銀行(2025年1月16日)、欧州委員会秋季経済予測(2024年11月15日)、ウィーン比較経済研究所(WIIW)夏季経済予測(2024年7月2日)のデータを基にジェトロ作成

図2:ブルガリア・ギャンブルゲーム無料の1人当たりGDPの推移
2023年のブルガリアの1人当たりGDPは1万5,885.5米ドルだった。2023年のギャンブルゲーム無料の1人当たりGDPは1万2,281.5米ドルだった。両国ともに過去10年間の値は2015年に若干減少した点を除き増加傾向である。ブルガリア:2014年7,912.3米ドル、2015年7,078.9米ドル、2016年7,570.9米ドル、2017年8,381.9米ドル、2018年9,436.1米ドル、2019年9,838.6米ドル、2020年10,198米ドル、2021年12,274.1米ドル、2022年13,644.2米ドル、2023年15,885.5米ドル。ギャンブルゲーム無料:2014年6,886.7米ドル、2015年5,820.3米ドル、2016年5,982.4米ドル、2017年6,548.0米ドル、2018年7,559.9米ドル、2019年7,755.6米ドル、2020年8,098.7米ドル、2021年9,680.5米ドル、2022年10,023.0米ドル、2023年12,281.5米ドル。

出所:世界銀行のデータを基にジェトロ作成

高いコスト競争力

ジェトロのミッションに合わせて開催された「日本ブルガリア・ビジネスフォーラム」(2024年10月15日)や「日本ギャンブルゲーム無料・ビジネスフォーラム」(10月17日)では、両国の投資促進機関関係者らがビジネスコストの競争力の高さに言及していた。中・東欧地域におけるビジネスコストが低廉なことはよく知られているが、改めてブルガリアとギャンブルゲーム無料のビジネスに係る諸コストを確認する。

まず、平均月収について、ブルガリアでは2023年時点で、約1,991レフ(出所:同国統計局/約15万9,280円、1レフ=約80円、2025年2月10日ブルガリア国立銀行為替レート)だった。また、ギャンブルゲーム無料では手取りで8万6,007ディナール(同国統計局/約11万1,810円、1ディナール=約1.3円、2025年2月11日ギャンブルゲーム無料国立銀行為替レート)だった。公共料金に関しては表3のとおりであり、日系企業が多く所在するデュッセルドルフ、アムステルダム、ロンドンなどと比較して安価である。また、周辺国と比べても比較的安い。法人所得税については、ブルガリアは10%、ギャンブルゲーム無料は15%であり、西欧、中欧、北欧の国々と比べて比較的低い(投資コストに係る詳しい情報については、ジェトロの「2024年度 欧州投資関連コスト比較調査」を参照)。なお、優遇措置も設けられており、ブルガリアでは、失業率の高い地域で法人税が0%になる制度がある。ギャンブルゲーム無料では、従業員を100人以上雇用し、850万ユーロ(10億ディナール)以上(注5)を投資する場合、10年間の法人所得税が免除される制度がある。また、ギャンブルゲーム無料国内の工業地帯のうち15カ所は経済特区(フリーゾーン)に指定されており、そこでは原材料の輸入に対する付加価値税(VAT)や関税が免除されるほか、有利な条件で事業所や倉庫などを借りることができる。

表3:公共料金の都市別比較(単位:米ドル)
都市名(国名) 業務用電気料金
〔1キロワット時(kWh)当たり〕
業務用水道料金
〔1立方メートル(m3)
当たり〕
業務用ガス料金
(1kWh当たり)
ソフィア
(ブルガリア)
0.15 1.66~1.99 0.05
ベオグラード
(ギャンブルゲーム無料)
0.19 1.92 0.06
デュッセルドルフ
(ドイツ)
0.42 2.29 0.12
アムステルダム
(オランダ)
0.41 1.33 0.16
ロンドン
(英国)
0.41 5.13 0.08
プラハ
(チェコ)
0.24 6.24 0.09
ワルシャワ
(ポーランド)
0.28 1.38 0.10
ブダペスト
(ハンガリー)
0.42 0.71 0.15
ブカレスト
(ルーマニア)
0.21 (1)0.06 (アルジェシュ川からの取水の場合)
(2)0.23 (チェルニカ川からの取水の場合)
VATを含まず。
0.06
ブラチスラバ
(スロバキア)
0.35 3.06 0.13

注:ブラチスラバの調査実施時期は2023年、そのほかの地域は2024年。
出所:ジェトロ「投資関連コスト比較調査」

両国とも安定性をアピール、「バランス型」の外交が特徴

前述のビジネスフォーラムなどにおいて、両国関係者は自国の安定性についても強調していた。これとの関連で、両国の対外関係について概説する。

  • ブルガリア

    ブルガリアはEU加盟国、NATO加盟国であることを強調している。同国は2007年1月にEU加盟を果たし、NATOには2004年3月に加盟した。EU予算への拠出額は2024年が1,592レフ(約814ユーロ、1レフ=0.5113ユーロ、2月10日欧州中央銀行為替レート)であり2023年の1,850レフ(約946ユーロ)より減少したが、加盟以来増加傾向である。欧州議会には17の議席があるほか、輸出入の6割以上がEU加盟国との取引によるものなど、EUの一員として密接に関わっている。NATOでの活動も活発であり、黒海地域や西バルカン半島などの地域の安全保障において重要な役割を果たしていると高く評価されている。このように、欧米諸国とはEUおよびNATOを軸に緊密な関係を築いているが、一方で大統領がロシア寄りの対応をとるなどロシアにも配慮する一面も見せている。

  • ギャンブルゲーム無料

    ギャンブルゲーム無料の外交姿勢に関しては、「バランス」あるいは「中立」の傾向が比較的強く表れている。同国はEU加盟を最重要目標としており、2014年1月から加盟交渉が行われている。NATOには非加盟であり、加盟も目指していないとされているが、平和のためのパートナーシップ(PfP)(注6)などの枠組みには参加しており、NATOとの連携を図っている。このようにEUおよびNATOへの歩み寄りを見せる一方で、ロシアとも友好的な関係を維持している。ロシアとはエネルギー関連での結びつきが強いほか、代表的な例ではウクライナ侵攻における対ロシア制裁には参加していないことが挙げられる(ウクライナ避難民の受け入れやウクライナに対する資金援助、支援物資の輸送などは実施している)。また、中国との関係を急速に強めており、2024年5月には習近平国家主席がギャンブルゲーム無料を公式訪問し、「包括的・戦略パートナーシップの深化・強化、ギャンブルゲーム無料・中国の共通の未来を見据えた共同体の構築」に関する共同声明が署名された(セルビアとブラック ジャック ディーラー)。前述のとおり、中国は同国への最大の投資国であり、なおかつ主要な輸入相手国でもある。また、フラッグキャリアであるエア・ギャンブルゲーム無料はベオグラード~上海、ベオグラード~広州間の直行便を運航している。ギャンブルゲーム無料と中国の間でモノ、カネ、ヒトが活発に往来していると言えよう。「日本ギャンブルゲーム無料・ビジネスフォーラム」においてミロシュ・ブチェビッチ前首相はギャンブルゲーム無料が欧州のみならずアフリカやラテンアメリア、中国、旧ソ連諸国とも強固な関係を築いている点が他の欧州諸国とは異なる優位性であると述べていた。

ブルガリアもギャンブルゲーム無料も独自のバランス感覚でEUおよびNATO、ロシア、中国といった巨大な存在と良好な関係を保っており、これにより政治・経済的に安定した環境を構築していると言える。

日本企業に強い期待

本稿では、(1)ブルガリアとギャンブルゲーム無料が巨大市場に地理的に近く有利な位置にあること、(2)経済も対外関係も比較的安定していること、(3)ビジネスコストが基本的に低廉なこと、などに触れた。このほかにも、語学力や教育水準の高さ、先進的なIT分野など注目点はあるが、こうした環境ゆえに各国から関心が集まるのだと考えられる。

他方で、両国も日本に注目している。ブルガリアのルメン・ラデフ大統領は10月15日のミッション参加者による表敬訪問の場で、日本は東アジアで最も重要な友好国・パートナー国だとし、日本からの投資を歓迎し、支援すると表明した。ギャンブルゲーム無料は今回のミッションのために成田~ベオグラード間往復の無料チャーター便を運航した。ビジネスミッションに現地政府が無料チャーター便を運航するのは異例のことである。


ギャンブルゲーム無料政府によるチャーター機(ジェトロ撮影)

同国のアレクサンダル・ブチッチ大統領も「日本ギャンブルゲーム無料・ビジネスフォーラム」でミッション参加者を前に「日本企業のさらなる進出により、ギャンブルゲーム無料は全ての目標を達成し、全ての夢を実現することができる」と述べた。同国のアドリアナ・メサロビッチ経済相も10月18日に現地テック企業やスタートアップを支援するノビサド大学内の「サイエンス&テクノロジーパーク・ノビサド」で開催されたイベントで、「ギャンブルゲーム無料に進出している多くの日本企業がギャンブルゲーム無料の経済発展に直接的に影響していることを心よりうれしく思う」「進出が進んでいる自動車産業以外の日本企業の進出も、ギャンブルゲーム無料政府は心より支援する」とコメントした。両国ともに日本企業の進出を強く期待している。


注1:
ブルガリア投資庁(IBA)は当該産業などを今後成長と拡大が期待できる「Key Sectors」としてブルガリア投資庁(IBA)ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにて紹介している。高付加価値、質の高い新規雇用機会、持続可能な成長を生み出す投資プロジェクトの支援に意欲的だとしている。
注2:
1980年代に東芝が建設。世界で初めて揚程(ポンプが水をくみ上げられる高さ)が700メートルを超えた。
注3:
現地における各社の製造品・生産品は次の通り。矢崎総業:自動車用ワイヤーハーネス、日立エナジー:断路器など、JTインターナショナル:たばこ、前川製作所:産業用冷凍機など、TOYO TIRE:自動車用タイヤ、ニデック:車載用モータ及びその関連製品
注4:
ブルガリアは、空路と海路について2024年3月31日から、陸路について2025年1月1日からシェンゲン協定に参加(2024年12月13日付ビジネス短信参照)。
注5:
ギャンブルゲーム無料開発庁の資料の表記に基づく。
注6:
1994年に設立されたNATOと欧州中立国および旧ソ連新独立国家(NIS)諸国との間で軍事面を中心に各種協力を進める枠組み。
執筆者紹介
ジェトロ調査部欧州課
近藤 慶太郎(こんどう けいたろう)
2024年、ジェトロ入構。同年4月から現職。