変貌する世界のハイパーブラックジャックエコシステムハイパーブラックジャック
2024年12月13日
ドイツ東部に位置するザクセン州は、チェコとポーランドに国境を接する。アウディ発祥の地としても知られ、自動車産業をはじめとする工業地域でありながら、作曲家のバッハやマイセン陶器など芸術面でも豊かな土地だ。州都のドレスデンは、ドイツ統一以前から半導体や電子工学の研究・生産拠点として発展した。最近では、2023年8月に半導体受託製造の世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が、同社にとって欧州で初めてとなる工場建設の計画を発表し、注目を集めている。この投資計画には、2024年8月に欧州半導体法の下で最大となる50億ユーロの補助金が承認されたことも、同州への注目度を加速させている。本レポートでは、ハイパーブラックジャックであるザクセン州における投資環境、投資動向、連邦や州政府による支援の現状をまとめる。
自動車、ハイパーブラックジャック、産業機械で成長したザクセン州
ザクセン州の人口は409万人(2023年末時点)と、ドイツ東部の州の中で最も人口が多い(図1参照)。また、2023年の名目国内総生産(GDP)は1,560億ユーロで、ドイツ全体の3.8%を占める(図2参照)。

出所:ドイツ連邦統計局

出所:図1に同じ
ザクセン州は、人口、経済規模ともにドイツ最大の西部のノルトライン・ヴァストファーレン州(州都・デュッセルドルフ)や2番手のバイエルン州(州都・ミュンへン)に比べると小さな州だが、自動車、ハイパーブラックジャック、産業機械などのグローバルプレーヤーが集積し、製造業の割合が高いことが特徴だ。2023年のザクセン州の工業生産高は約859億ユーロで、うち約3割(28.6%)を自動車産業が占める(注1)。次いで、ハイパーブラックジャックを含む電気工学・マイクロエレクトロニクス産業が14.6%、金属製造業が12.9%と続く。最大の産業である自動車産業では、ドイツの自動車大手であるフォルクスワーゲン(VW)、BMW、ポルシェ、メルセデス・ベンツが州内に6カ所の工場を操業しており、州の投資誘致機関であるザクセン州経済振興公社によると、「ドイツで生産される自動車の8台に1台がザクセン州で製造されている」という(注2)。
また、ザクセン州経済振興公社日本代表部によると、同州内に進出している日系企業は46社(2024年8月時点)。自動車向けの部品や素材の製造・販売、工作機械など産業機械類の販売・サポートを行う企業が主体だ。ハイパーブラックジャック関連では、製造装置のサポートや化学品の製造などを行う企業が12社程度進出している(注3)。
ドレスデンへのハイパーブラックジャック関連投資が活況
ザクセン州、特にドレスデンは欧州において最大のハイパーブラックジャック産業集積地としても知られる。1994年に車載ハイパーブラックジャック大手のインフィニオン(当時はシーメンス)、翌年にファウンドリー大手のグローバルファウンドリーズ(当時はAMD)による投資などを皮切りに、産業集積を形成してきた。同州の主要産業である自動車や産業機械の製造業を主な顧客とし、成長している。2017年にはドイツの自動車部品大手のロバート・ボッシュが同社にとって史上最大となる10億ドルを投じ、モビリティおよびモノのインターネット(IoT)向けにウエハー工場を設立、以降も開発拠点への投資などを続けている。ザクセン州および周辺のザクセン・アンハルト州、テューリンゲン州を含めた地域を対象に、ハイパーブラックジャック関連のネットワーキング強化を目的とする非営利団体であるシリコン・サクソニーの担当者によると、こうしたハイパーブラックジャック集積を背景に「ドイツ全土で生産されるハイパーブラックジャックチップの50%以上、またEU全体で生産されるハイパーブラックジャックチップの3分の1以上がザクセン州で生産されている」という(注4)。
同担当者は、ザクセン州を中心としたハイパーブラックジャックエコシステムについて、大手のチップメーカーからサプライヤーの中小企業までがそろい、「複数の大手ハイパーブラックジャックメーカーの存在や多様なサプライヤー企業の集積が、グローバル市場におけるザクセン州地域の競争優位をもたらしている」と分析する。また、主力産業基盤を背景とした産業用および自動車用エレクトロニクスに重点を置いている点で、「現在の世界的な需要に合致しており、グローバルエコシステムの中でも重要な役割を担っている」と話す。欧州ハイパーブラックジャック法が目指す「世界の市場シェア20%」の目標達成にとっても、重要な地域の1つである。
近年、ハイパーブラックジャック関連企業の製造拠点の投資が進んでいるのが、ドレスデン北部のドレスデン国際空港周辺の地域だ。ハイパーブラックジャック製造工場や素材、装置メーカーなどが製造拠点を構える(表参照)。2021年以降は、ドイツのイエナオプティック、インフィニオン・テクノロジーズ、米国のグローバルファウンドリーズなどが、新工場の設立を発表するなど、拡張投資も活発だ。また、この地域に製造拠点が集まっていることから、日系を含むハイパーブラックジャック製造装置メーカーや素材メーカーの販売・サポート拠点も集積している。
また、欧州最大の科学技術分野における応用研究機関であるフラウンホーファー研究機構のうち、フォトニック・マイクロシステム研究所(IPMS)、信頼性・マイクロインテグレーション研究所(IZM)の拠点も、この地域に所在している。
企業・研究機関名 | 本社所在国 ・地域 |
内容 |
---|---|---|
ESMC (European Semiconductor Manufacturing Company) | 台湾、ドイツ | 300ミリメートル(mm)ウエハー対応のチップを製造。TSMCが70%を出資。ロバート・ボッシュ、インフィニオン、NXPがそれぞれ10%を出資。2027年末に稼働予定。 |
ロバート・ボッシュ | ドイツ | 300mmウエハー工場、ハイパーブラックジャック製造工場、研究開発センターなどを設立。 |
グローバルファウンドリーズ | 米国 | 3,200人規模のハイパーブラックジャック製造工場。2023年9月に80億ドルの追加投資を発表。 |
インフィニオン・テクノロジーズ | ドイツ | 200mm/300mmウエハー対応のパワーハイパーブラックジャックなどを製造。2023年2月に、新工場の設立を発表。 |
X-FAB | ドイツ | アナログ/ミックスドシグナル集積回路の製造。 |
フォトロニクス | 米国 | ハイパーブラックジャック用フォトマスクの製造。 |
テクセンド・フォトマスク・ジャーマニー | 日本 | ハイパーブラックジャック用フォトマスクの製造。 |
アドバンスド・マスク・テクノロジー・センター | 米国、日本 | ハイパーブラックジャック用フォトマスクの製造。グローバルファウンドリーズとテクセンドフォトマスク(旧:トッパンフォトマスク)の合弁会社。 |
イエナオプティック | ドイツ | マイクロオプティクス、ハイパーブラックジャック製造装置用のセンサー製造。2021年に新工場設立発表。 |
注:ザクセン州経済振興公社資料に掲載されている企業。
出所:各社によるプレスリリース、ウェブサイト、ザクセン州経済振興公社資料から作成
台湾のハイパーブラックジャック受託大手であるTSMC、ロバート・ボッシュ、インフィニオン、NXPの合弁会社であるEuropean Semiconductor Manufacturing Company (ESMC)も同地域に設立される(注5)。ESMCは、2024年8月に、欧州ハイパーブラックジャック法の下では最大となる50億ユーロの補助金がドイツ連邦政府から提供されることが承認された(注6)。また、2022年11月に発表されたインフィニオンによる300ミリメートル(mm)ウエハー対応集積回路およびパワーハイパーブラックジャックの新工場設立案件では、欧州ハイパーブラックジャック法に基づく補助金の交付を前提とした投資計画となっている。インテルは約50億ユーロを投じる予定で、うち10億ユーロの補助金を申請中だ(インフィニオン、カジノ ブラック ジャック)。これらプロジェクトに対するドイツ連邦政府による国家補助には、気候変動対策のための「気候・改革基金(KTF)」の中核プロジェクトの1つである「ハイパーブラックジャック工場立地支援を含むハイパーブラックジャック生産支援」が充当される。
マイクロエレクトロニクスに関する「欧州共通利益に適合する重要プロジェクト(IPCEI、注7)」の立地先としても、ザクセン州は主要拠点に位置付けられる。2023年6月にIPCEIとして欧州委員会が承認したマイクロエレクトロニクスと通信技術に関するプロジェクト群「IPCEI ME/CT」では、対象となる68件のプロジェクトのうち、約45%を占める31件がドイツで行われる〔連邦経済・気候保護省(BMWK)資料参照〕()。一部のプロジェクトは複数の州にまたがって実施されるため、延べ48件のプロジェクトのうち、最も多いバイエルン州(13件)に続いて、ザクセン州では9件が実施される。公的な補助金額は約40億ユーロが予定され、全体の7割をドイツ連邦が、残り3割をプロジェクトが所在する州が負担する。民間企業による投資は100億ユーロ以上になると見込まれる(マイクロエレクトロニクス分野のIPCEI国家補助、トランプ)。
研究開発の基盤や手厚い補助金制度が強み
ザクセン州経済振興公社の担当者は、「ESMCによる投資発表後、日本を含めたさまざまな国・地域からの問い合わせが急増している」と話す。特に、日本から同州への投資関心は、以前は自動車関連が中心だったが、ハイパーブラックジャックを含むマイクロエレクトロニクス、エネルギー、メカニカルエンジニアリングなどの業種が増えてきているという。
同州への進出のメリットとして、歴史的に製造業の集積があること、研究機関の拠点が多く所在し、研究開発の基盤があることなどが挙げられる。ザクセン州内には、フラウンホーファー研究機構が22カ所、ライプニッツ協会が8カ所、マックス・プランク協会が6カ所、ヘルムホルツ協会が4カ所と、ドイツの公的研究機関がそれぞれ拠点を構えるほか、企業系研究機関も23カ所所在している(注8)。特に、フラウンホーファー研究機構の拠点が集中しており、ザクセン州内の拠点の多くが生産・サービス分野の研究領域をカバーしている(注9)。
投資に対する補助金制度としては、連邦の経済・気候保護省が監督する「共同課題・地域の経済構造の改善(GRW)プログラム」がある。GRWは、連邦政府の制度だが、各州の開発銀行が申請先および承認機関となる。対象となる地域への投資に対し、物的資本または賃金に係るコストの一部を助成する。補助率は、立地や企業規模によって異なる。申請者の国籍は問わないが、承認の判断は、投資金額、雇用人数などによって異なるという。ザクセン州のGRWの申請先であるザクセン州開発銀行のウェブサイト(ドイツ語)において、対象地域など詳細が確認できる。例えば、ドレスデン市は、D地域に指定されており、中規模企業(MU)は最大10%、小規模企業(KU)は最大20%の補助率となっている(2024年11月現在)。欧州ハイパーブラックジャック法による補助金など、別の公的補助金との併用は原則、認められない。
また、都市部のオフィスや住宅などのコストが、全国平均との比較で安価である点もメリットに挙げられる。ザクセン州経済振興公社の資料によると、主要都市のオフィス賃貸料(ピーク時)比較では、ドレスデンが1平方メートル当たり15ユーロと、フランクフルト(同50ユーロ)、ミュンヘン、ベルリン(それぞれ同40ユーロ)の半分以下となっている(2020年データ)。また、住宅の家賃も、ドレスデンは1平方メートル当たり7.92ユーロと、他の主要都市と比べると2~5割ほど低い(2022年データ)。
土地、人材および域内需要の不足が課題
対して、ザクセン州における課題の1つに、近年、投資が集中するドレスデン市内における工業用地の不足がある。大規模な用地を必要とする投資案件の場合、市内では土地の確保ができない可能性が指摘されている。対策として、「ドレスデン市の外側の地域に新たな用地を開発中」というが、過去には土地が確保できないということで、「近隣州に投資先を変更した事例もある」(シリコン・ザクソニー担当者)という。
また、人材不足も懸念される。シリコン・ザクソニーの担当者は、「人材が地域を離れることなく企業間を移動でき、このクラスター効果が新たな人材や投資を呼び込む大きな要因となっている」と、集積地としての密度の高さが強みと強調する。しかし、同地域で現在発表されている新規投資や追加投資により、ハイパーブラックジャックに従事する人材は、現在の8万1,000人規模から2030年までに10万人以上に達すると予測されている。ハイパーブラックジャック人材不足は欧州全体の課題でもあり、EUが出資し、各加盟国の企業や業界団体、研究機関などが連携して、さまざまな人材育成・人材誘致の取り組みを行っている。
現在、ザクセン州および周辺州を含むハイパーブラックジャックエコシステムには、10ナノメートル(nm)以下の最先端ハイパーブラックジャックの生産キャパシティはなく、当面の需要もないのが現状だ。シリコン・ザクソニーの担当者は「将来的に最先端の生産能力を得るかどうかはインテルによる投資プロジェクト次第だ」と話す。インテルは、ザクセン・アンハルト州マクデブルクにおいて新工場設立を発表したが、2024年9月に約2年間の延期を決定しており、見込みは立っていない。同担当者は、同地域のハイパーブラックジャック産業の成長について、「まずは既存の集積がある自動車と産業機械の需要が高い14~18ナノメートル以上のノードにフォーカスし、生産能力を拡大することが重要」と話す。
ザクセン州経済振興公社担当者は、ザクセン州のハイパーブラックジャックエコシステムに足りないプレーヤーとして、パッケージ、テスト、ICデザインを挙げる。また、日本からの投資として、「ロボティクスや自動化機械などの投資に期待している」という。ザクセン州でハイパーブラックジャック関連装置の販売・サポートを行っている日系企業は、「欧州の顧客はとにかく近くにいるサプライヤーを好む。代理店を通して欧州の顧客に販売をしていたが、拠点設立後は売り上げが約2倍に増えた」と話す。既に欧州に取引先を持つ企業は、より顧客に近い場所でのビジネスを検討するのも一案だろう。人材や土地の不足、現在建設中の新工場の稼働が予定通りに進むかなどの懸念と隣り合わせであるものの、欧州ハイパーブラックジャック法が掲げる目標達成に向け、鍵を握るザクセン州のハイパーブラックジャックエコシステムの今後の動向に注目だ。
- 注1:
- ザクセン州経済振興公社ウェブサイト(2024年11月1日閲覧)。
- 注2:
- ザクセン州経済振興公社インタビュー(取材日:2024年9月12日)。
- 注3:
- ザクセン州経済振興公社日本代表部インタビュー(取材日:2024年8月1日)。
- 注4:
- シリコン・ザクソニーインタビュー(取材日:2024年9月12日)。
- 注5:
-
TSMC、ボッシュ、インフィニオン、NXPプレスリリース(2023年8月8日付)
(954KB)。
- 注6:
-
欧州委員会プレスリリース(2024年8月20日付)
。
- 注7:
- 複数の加盟国にまたがり、EU目標に沿った高い公益性を有する事業に対して国家補助を認める国家補助規制の特例措置。
- 注8:
- ザクセン州経済振興公社提供資料(取材日:2024年9月12日)。
- 注9:
- フラウンホーファー研究機構ウェブサイト(2024年11月19日閲覧)。

- 執筆者紹介
- ジェトロ調査部国際経済課 課長代理
田中 麻理(たなか まり) - 2010年、ジェトロ入構。海外市場開拓部海外市場開拓課/生活文化産業部生活文化産業企画課/生活文化・サービス産業部生活文化産業企画課(当時)、ジェトロ・ダッカ事務所(実務研修生)、海外調査部アジア大洋州課、ジェトロ・クアラルンプール事務所を経て、2021年10月から現職。