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変貌する世界のブラッククイーンブラックジャックエコシステムブラッククイーンブラックジャック生産、世界シェア2割へ険しい道のり（欧州）

2024年10月29日

欧州ブラッククイーンブラックジャック法が目指す欧州域内の強固な半導体エコシステムの確立に向け、多国籍企業による複数の大規模投資プロブラッククイーンブラックジャッククトが進行している。2024年8月、台湾のTSMCが欧州で初となるドイツ東部ドレスデン工場の起工式を開催。2,000人規模の雇用創出を見込む同工場は、車載半導体などを中心とする生産ラインを2027年末までに稼働させる計画だ。他方、欧州域内で過去最大規模の投資計画として期待されていたドイツ東部マクデブルクにおける米国インテルの新規投資プロブラッククイーンブラックジャッククトは同年9月、欧州域内における需要の変化などを理由に、少なくとも2年間の延期が発表された。欧州域内の産業団体からは、「半導体法はこれまでのところ期待していたほどの投資効果を創出していない」とのコメントも聞かれる。

ブラッククイーンブラックジャック法の施行から1年余り、同法がもたらした域内エコシステムの変化、投資創出効果、今後の課題および展望について、現地のEU政策担当者および業界関係者へのインタビューをもとに報告する。

域内投資プロブラッククイーンブラックジャッククトへ国家補助を認定

欧州ブラッククイーンブラックジャック法は、ブラッククイーンブラックジャック分野における欧州の産業基盤発展のための条件整備、投資誘致、研究と技術革新の促進、および将来のブラッククイーンブラックジャック供給危機への備えを主な目的とする。そのための3本柱として、(1)ブラッククイーンブラックジャックの域内生産拡大や研究開発強化を図る「欧州ブラッククイーンブラックジャックイニシアチブ（Chips for Europe Initiative）」、(2)ブラッククイーンブラックジャックの安定供給確保のための新たな支援枠組み設定、(3)ブラッククイーンブラックジャックサプライチェーンの監視と危機対応、を掲げ、官民合わせて430億ユーロの投資を動員。EUのブラッククイーンブラックジャック分野における世界市場シェアを現在の10%から2030年までに少なくとも20%に倍増させることを目指している（注1）。

ブラッククイーンブラックジャック関連企業によるEU域内投資促進のためには、投資企業に対するEU加盟国の財政支援の容易化とプロセスの迅速化が重要である。そこで、「域内初」などの要件を満たす先端ブラッククイーンブラックジャックの生産施設などを対象に、EU国家補助規制の下では原則禁止されている加盟国による企業向け国家補助を、原則として認める施策が導入された。欧州ブラッククイーンブラックジャック法に基づき、既にいくつかの国家補助金が欧州委員会に承認されている。

2024年8月には、半導体受託生産の世界最大手、台湾TSMC（台湾積体電路製造）の欧州合弁会社であるヨーロピアン・セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー（以下、ESMC）に対し、ドイツ連邦政府が50億ユーロの国家補助をおこなうことを欧州委員会が承認した（注2）。国家補助の対象となったのは、ESMCによるドイツ東部ドレスデンへの工場建設プロブラッククイーンブラックジャッククトで、総投資額は100億ユーロ超にのぼる。8月20日に開催された同工場の起工式のタイミングに合わせ、補助金の承認が発表されたものだ。（2024年8月29日付ビジネス短信参照）

国家補助の承認に際し、欧州委員会は、(1)欧州内に同規模の既存の半導体チップの量産施設が存在しないこと、(2)28/22nm（ナノメートル）および16/12nmの技術ノードを持つシリコンウェハーを生産するオープンファウンドリとして、既存の他の生産能力から差別化されること、などを理由に、同プロブラッククイーンブラックジャッククトが「域内初」であることを強調している。加えて、当該支援には誘因効果があり、「支援対象企業は、もし公的支援がなければ投資を実施しないであろう」と説明している。そのほかESMCは、欧州委員会およびドイツ政府に対し、現在の予想を上回る潜在的利益をドイツと共有することや、危機が発生した場合に欧州で危機関連製品を優先的に製造することを約束した。

欧州委員会は2024年9月末時点までに、欧州半導体法の定める原則に基づき、ESMCのプロブラッククイーンブラックジャッククトを含む次の4件の投資案件に対して、国家補助金の承認を行っている（表参照）。なお、各プロブラッククイーンブラックジャッククトに対する補助金額および補助率は、原則として各加盟国の財政事情に応じ、投資企業や欧州委員会との協議により決定される。また、欧州委員会は、半導体法の目的に沿った国家補助金の拠出に関し、EUが加盟国向けに提供済みの「復興レジリエンス・ファシリティ（RRF）」を活用することも推奨している（注3）。

表：欧州ブラッククイーンブラックジャック法に基づき欧州委員会が承認した国家補助金（2024年9月時点）
承認日	投資企業	補助金額	投資先・プロブラッククイーンブラックジャッククト内容	URL
2022年10月5日	STマイクロエレクトロニクス	29億2,500万ユーロ	イタリア・カターニアにおける炭化ケイ素(SiC)ウエハー製造	2022年10月5日付ブラッククイーンブラックジャック参照
2023年4月28日	STマイクロエレクトロニクスグローバルファウンドリーズ	29億ユーロ	フランス・クロルにおけるFD-SOI技術に特化したマイクロチップ製造	2023年4月28日付ブラッククイーンブラックジャック参照
2024年5月31日	STマイクロエレクトロニクス	20億ユーロ	イタリア・カターニアにおける炭化ケイ素(SiC)パワーブラッククイーンブラックジャック用チップ一貫製造	2024年5月31日付ブラッククイーンブラックジャック参照
2024年8月20日	TSMC（ESMC）	50億ユーロ	ドイツ・ドレスデンにおける300mmシリコンウェハーベースのチップが製造	2024年8月20日付ブラッククイーンブラックジャック参照

出所：ブラッククイーンブラックジャックから作成

前述4件の投資プロブラッククイーンブラックジャッククトに加え、ドイツの車載半導体大手インフィニオン・テクノロジーズは2023年5月、ドイツ・ドレスデンで300ミリメートル（mm）ウエハー対応の集積回路およびパワー半導体の工場建設を開始。総投資額50億ユーロを見込むプロブラッククイーンブラックジャッククトに対し、10億ユーロ規模の国家補助金を申請している（インフィニオン、カジノブラックジャック）。また、米国の半導体大手ウルフスピードはドイツ西部ザールラント州に炭化ケイ素（SiC）半導体ウエハー工場を新設すると発表。ドイツ連邦政府からの補助金拠出を欧州委員会が承認することをプロブラッククイーンブラックジャッククト実施の前提としている（関連ブラックジャックトランプやり方）。そのほか、米国のオンセミも2024年6月、チェコ東部の最先端のSiC製造施設の増設に20億ドル規模の投資を行うと発表。政府が、投資インセンティブのかたちで同案件を支援する方針を示している（米半導体大手オンセミ、無料ゲームブラック）。

インテルによる域内最大の投資計画は延期

欧州委員会通信ネットワーク・コンテンツ・技術総局（DG-CONNECT）で、ブラッククイーンブラックジャックを含むマイクロエレクトロニクス産業などを管轄するディレクターは、2024年9月時点までに、欧州ブラッククイーンブラックジャック法が誘引したEU域内向けのブラッククイーンブラックジャック関連投資の規模を約1,150億ユーロと試算する（注4）。同試算に含まれる投資が実行フェーズに入るのは、多くのケースで2025年半ば以降と見込む。

しかしながら、米国や日本、中国などの主要国・地域がそれぞれ巨額の予算を投じ、自国・地域の半導体産業の強化ならびにグローバル企業の誘致のための支援を拡充する中で、EUがグローバル半導体市場でのシェアを倍増させるのは容易ではない。たとえば米国では、2022年8月に施行されたCHIPSおよび科学法を通じ、2024年8月時点までに米国内で新たに90件の半導体関連投資プロブラッククイーンブラックジャッククトが発表され、その投資総額が4,500億ドル規模にのぼることが報告されている（注5）。また、全世界で3,000社以上の会員企業を有する半導体の国際業界団体・SEMIの報告（2024年9月時点）によれば、2024年～2025年にかけて全世界で新たに稼働を開始する計81件の半導体ファブ（前工程）のうち、欧州域内で稼働を開始するファブはわずか4件にとどまり、米国の10件、日本の7件を下回る（注6）。

米国ブラッククイーンブラックジャック工業会(SIA)が2024年5月、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)と共同で発表した調査（注7）によれば、欧州におけるブラッククイーンブラックジャック前工程の生産能力（ウエハー換算）は、2022年～2032年にかけての10年間で、2.24倍（124％増）に拡大すると予測されている。同伸び率は全世界平均の生産能力の伸び（108％増）を上回るものの、3倍超（203％増）の拡大が見込まれる米国との比較では見劣りする。

同じ調査が示す、同期間のロジックブラッククイーンブラックジャックのプロセスノード（注8）別生産能力の世界シェアの変化の見通しでは、欧州のシェアは、最も微細で新しい技術が求められる10nm（ナノメートル）未満のノードで0％から6％へ拡大すると予測される。（図参照）。一方、同じノードの米国のシェアは、同期間に0％から28％まで拡大すると予測されている。

ロジックブラッククイーンブラックジャックの技術ノード別に、(1)10nm未満、(2)10－22nm、(3)28nm以上に分け、世界生産に占める主要国・地域別の構成比を、2022年時点、2032年予測のそれぞれについて横棒グラフで表示。(1)のノードでは、米国のシェアが0％（2022年）→28％（2032年）、同期間での欧州のシェアが0％→6％にそれぞれ拡大。一方台湾のシェアは69％→47％に縮小。(2)のノードでは、米国のシェアが28％（2022年）→20％（2032年）、同期間での欧州のシェアが13％→14％に、台湾のシェアは40％→29％、中国のシェアが6％→19％に変化。日本は0％→6％に拡大。(3)のノードでは、米国のシェアが8％（2022年）→10％（2032年）、同期間での欧州のシェアが4％→3％に、台湾のシェアは30％→25％、中国のシェアが33％→37％に変化。日本は10%、韓国は5％で変化なし。 — 図：ロジックブラッククイーンブラックジャックのプロセスノード別生産能力（現状と見通し）

また、同プロセスノードでは目下、欧州域内唯一の投資計画として期待されている米国半導体大手インテルの半導体製造プロブラッククイーンブラックジャッククトにも暗雲が立ち込める。

インテルのパットゲルシンガーCEO（最高経営責任者）は2024年9月、ドイツおよびポーランドにおいて計画している投資プロブラッククイーンブラックジャッククトに関し、「市場の需要予測に基づいて約2年延期する」ことを発表した（2024年9月16日付インテルプレスリリース参照）。

同社がドイツ東部・マクデブルクで計画する投資プロブラッククイーンブラックジャッククトは、2023年6月、ドイツ連邦政府とインテルが工場建設計画の基本合意書に署名。インテルによる総投資額は、ドイツ史上最大規模の外国直接投資となる300億ユーロに達し、その約3分の1にあたる99億ドルが国家補助金から拠出される見込みとなっている（）。また、ポーランドでは、同社が46億ドルを投じ、南西部のブロツワフ市近郊にブラッククイーンブラックジャック組み立て・検査工場を新設することが発表されている（インテルウェブサイト参照）。

2027～2028年の稼働開始を見込んでいた両プロブラッククイーンブラックジャッククトの延期は、欧州半導体法が目指す「2030年までに世界シェア20％」に向けたEUの取り組みに、少なからず影響を及ぼすものと考えられる。

投資受け入れ国とEUにまたがる承認プロセスの迅速化が課題

前出のDG-CONNECTの担当ディレクターは、「半導体法の施行以降、EU域内への大型の半導体関連投資にかかる企業の意思決定プロセスが変化した」との認識を示す。各加盟国が半導体法の下、国内プロブラッククイーンブラックジャッククトへの補助金拠出を検討する場合、申請プロセスの前に、EUと各国の競争当局との間で密な事前協議が行われる必要がある。個別案件ごとに協議のプロセスでは、必要に応じて、投資企業、各国政府、欧州委員会による3者間協議が行われるという。その点において、「米国や日本への投資のケースと、EU向けの投資のケースでは、国と企業との関係、意思決定プロセスは大きく異なる」と指摘する。

産業界は、投資先国における各種手続きの迅速化に加え、EU側の手続きの迅速化やワンストップ機能の強化を訴える。欧州ブラッククイーンブラックジャック産業協会（ESIA）は2024年7月、向こう5年半のEUのブラッククイーンブラックジャック政策に対する提言書を発表。その中で、域内への新たなブラッククイーンブラックジャック製造施設に対する承認プロセスをより迅速化することや、欧州委員会の中に、専任窓口としてのチップス特使（Chips Envoy）などを含め、ブラッククイーンブラックジャック産業政策全般の取り組みを推進するためのワンストップショップを設置すべきであることを提唱した。また、同提言書では、こうした施策を含めた業界支援の加速や範囲の拡大に向け、欧州ブラッククイーンブラックジャック法の改定版（Chips Act 2.0）を早急に策定することを求めている（注9）。

また、欧州半導体法では、国家補助金の承認に際し、新たな技術領域などを念頭に「域内初」のプロブラッククイーンブラックジャッククトであることが要件とされ、必然的に、特定企業による特定領域の大規模プロブラッククイーンブラックジャッククトが優先される傾向がある。また、プロブラッククイーンブラックジャッククトの立地先は、大規模な国家補助が可能な財政余力を有するドイツやフランス、イタリアなどの国に偏ることが課題として指摘される（）。

注1：: 欧州委員会ウエブサイト（2024年8月28日更新）‟The European Chips Act”。
注2：: 2024年8月20日付、ブラッククイーンブラックジャック「Commission approves €5 billion German State aid measure to support ESMC in setting up a new semiconductor manufacturing facility」に基づく。
注3：: 復興レジリエンス・ファシリティ（RRF）は、「新型コロナウイルス危機」からの復興を目的とした復興基金の中核政策であり、総額6,725億ユーロ（返済不要の補助金3,125億ユーロおよび融資3,600億ユーロ）からなる加盟国への支援制度。詳細は2020年9月18日付ビジネス短信参照。
注4：: 欧州委員会（ブリュッセル）での筆者インタビューに基づく（実施日：2024年9月11日）。
注5：: SIA（2024年8月28日時点更新情報に基づく）「The CHIPS Act Has Already Sparked 0 Billion in Private Investments for U.S. Semiconductor Production」
注6：: SEMI、World Fab Forecast Report, 3Q24 Update（2024年9月）
注7：: 米国ブラッククイーンブラックジャック協会 (SIA)およびボストンコンサルティンググループ（2024年5月）、‟Emerging Resilience in the Semiconductor Supply Chain”
注8：: プロセスノードとは、ブラッククイーンブラックジャックデバイスにおけるトランジスタの配線の幅、もしくは間隔を指し、その数値を小さく（微細化）するほど、処理能力が高まる。
注9：: ESIA（2024年7月）、Key Recommendations for the EU Mandate 2024-2029（3.9MB）。

変更履歴: 文章を一部修正しました。（2024年11月1日）

執筆者紹介: ブラッククイーンブラックジャックトロ調査部国際経済課長
伊藤博敏（いとうひろとし）; 1998年、ブラッククイーンブラックジャックトロ入構。ブラッククイーンブラックジャックトロ・ニューデリー事務所、ブラッククイーンブラックジャックトロ・バンコク事務所、企画部海外地域戦略主幹・東南アジアなどを経て現職。主な著書：『FTAの基礎と実践:賢く活用するための手引き』（編著、白水社）、『タイ・プラスワンの企業戦略』（共著、勁草書房）、『アジア主要国のビジネス環境比較』『アジア新興国のビジネス環境比較』(編著、ブラッククイーンブラックジャックトロ)、『インドVS中国：二大新興国の実力比較』(共著、日本経済新聞出版社)、『インド成長ビジネス地図』(共著、日本経済新聞出版社)、『インド税務ガイド：間接税のすべてがわかる』（単著、ブラッククイーンブラックジャックトロ）など。