欧州の化学と風力の業界団体、エネルギー危機解消へ電力市場改革の優先課題を提起

(EU)

ブリュッセル発

2022年12月09日

欧州化学工業連盟(Cefic外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますと欧州風力協会は127日、欧州委員会に送付した、電力市場改革における優先事項を提言した書簡PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を公表した。改革案は2023年に入って早期に提案される予定だ。

Ceficはプレスリリースで、化学業界の脱炭素化に必要な多くの技術の活用には、再生エネルギー(以下、再エネ)の安定的かつ安価な確保が必要だとした。また、再エネやグリーン水素への投資支援につながるEUレベルでの電力市場改革が必要だと訴える風力発電業界と協力する意義があるとした。

両団体は同書簡で、EUおよび加盟国が再エネに係る許可手続きの簡略化を検討している(2022年11月17日記事参照)ことは、短期的には発電量の増加につながる可能性があると評価。しかし、欧州のエネルギー危機の長期化や高水準にある欧州のエネルギー価格の影響を、欧州のバリューチェーン全体が受けていると指摘。さらに各加盟国が独自の危機対策を行うことが、EUのエネルギー市場の市場原理を弱体化させ、欧州単一市場をも歪曲(わいきょく)させ得るとした。だが、エネルギー危機が収束すれば、気候中立の達成には産業部門からの排出削減に向け電化を推進する規制枠組みが必要であり、電力市場改革は重要な転機になるとした。そして、同改革の優先事項として、(1)欧州の産業競争力強化を視野に入れた、持続可能で安定的かつ競争力がある電力システムの設計、(2)電力網の整備の加速、(3)電力取引において短期卸電力市場を中心とすることを維持、(4)長期小売り供給契約の推奨、(5)再エネ供給の多様性の確保、(6)容量メカニズム(注)についてEUレベルでの制度設計と域内での限定的な運用を挙げた。

両団体は(5)について、再エネは供給量が不安定だが、電源構成比を増やすには需要家側に多様な選択肢が与えられることが必要だとし、市場ベースのソリューションを促進する必要があるとした。

また、(6)の容量メカニズムは、市場参加者とエネルギー供給事業者の役割と責任をEUレベルで明確に定義し、域内市場に限定して運用すべきとした。また、新たな電力貯蔵設備の増設や、電力負荷の集中といった課題を見越してメカニズムを設計し、全ての市場参加者にコスト負担が公平に分散する仕組み作りの重要性を訴えた。

(注)電力量(kWh)ではなく、将来の供給力(kW)を取引する仕組み。あらかじめ必要な供給力が確保されることで、新たな電力源となる発電所の建設が進み、電力価格の安定にもつながるとされ、多くの国で導入されている。

(滝澤祥子)

(EU)

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