大統領が不法移民対策の実行をコミット、議会は6月中にUSMCA批准承認の予定

(メキシコ、米国、カナダ)

メキシコ発

2019年06月11日

米国とメキシコ両政府による不法移民対策に関する6月7日の合意を踏まえ()、アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領は翌8日、バハカリフォルニア州ティファナ市での会合で、米国によるメキシコからの全輸入品への関税賦課を避けるために、米国との合意事項を着実に実行すると発言した。この会合は、米国との交渉中に大統領が国民の団結を図るために開催を呼び掛けたもので、2国間合意を祝う色彩の強いものとなった。

同大統領は会合で今後の具体的な対策として、米国国境付近の取り締まり強化、法律の適切な適用、移民の人権の尊重、メキシコと中米の開発計画の推進を挙げた。加えて、メキシコで待機する米国への移民申請者に対して、人道的支援、雇用、教育、健康管理、福祉を提供するとコメントした。交渉合意の立役者であるマルセロ・エブラル外相も「米国による関税賦課を回避でき、国の威信を傷つけることなく、交渉をまとめることができた。もし交渉が決裂していれば、少なくとも90万人が失業し、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA、新NAFTA)の批准も困難に直面したであろう」とコメントした。

ビジネス界は関税賦課回避を称賛

ビジネス界を代表して、ワシントンでメキシコ政府交渉チームを支援した企業家調整委員会(CCE)のカルロス・サラサール・ロメリン会長は6月7日のツイッターで、「忍耐力、慎重さ、そして、戦略がメキシコおよび北米の双方にとって良い結果を導き出した」と記し、エブラル外相、グラシエラ・マルケス経済相と交渉チームを称賛した。

全国経営者連合会(COPARMEX)のグスターボ・デ・オジョス・ワルテル会長も「米国による関税賦課を回避し、交渉を成功させたメキシコ政府にCOPARMEXとしての謝意を表明する。メキシコと、その競争力にとって、そして、北米の貿易統合にとって良い知らせだ」と自らのツイッターに記している。

交渉の立役者の1人であるヘスス・セアデ外務省次官(北米担当)は、交渉合意の直後に、「USMCAの国内批准はより一層確実なものになった」とコメントした。メキシコ政府は5月30日にUSMCA法案を上院に送付し、批准承認を求めている。今回の交渉合意を受けて、リカルド・モンレアル・アビラ上院政策調整委員会委員長は6月10日、USMCA法案を上院は6月18日、または19日に批准承認する予定だと発言した。

(稲葉公彦)

(メキシコ、米国、カナダ)

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