米財務省、IRAに基づく技術中立的クリーンエネルギー税額控除に関する規則案発表

(米国)

ニューヨーク発

2024年06月07日

米国財務省は5月29日、インフレ削減法(IRA)に基づく技術中立的クリーン電力クレジットに関する規則案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。同規則案は、クリーン電力の生産に関する税額控除の内国歳入法(IRC)45Y、クリーン電力の生産施設への投資に関する税額控除のIRC48Eに関するもの。2025年1月1日より前に建設が開始され、温室効果ガス(GHG)の純排出ゼロを達成するクリーン電力施設が対象となる。風力、太陽光、水力、潮流・海流、原子力、地熱、一部の廃棄物による発電がゼロエミッション技術として明確化されているが、技術の種別にかかわらず、クリーン発電として同じ税額控除(注)が適用される。

同規則案では、IRC45Yに関して、主に次の内容を規定している。

(1)一般細則(1.45Y-1条)

クレジットの算定に必要となる各種用語に関する定義や、対象施設が熱電併給システムを導入している場合の熱のクレジット算定上の取り扱いなどについて定めている。

(2)適格施設(1.45Y-2条)

電力調整装置などクリーン発電施設と一体として認められ得る設備の範囲に関する定義や、IRC48Eによる投資税額控除をはじめとするIRAに基づく他の税額控除との併用はできないことなど、クレジットの対象となる適格施設に関する細則を定めている。

(3)GHG排出率(1.45Y-5条)

発電に当たってのGHG排出率に関する定義を定めている。GHG排出率の算定は、発電に当たってのライフサイクルで見た場合のGHG排出量を用いるとしており、例えば、発電自体ではGHGを排出しない燃料電池発電でも、燃料の生成で化石燃料由来の電力を用いる場合は、これも排出率としてカウントされることとなる。このため、燃焼またはガス化を利用して発電する場合には、ライフサイクル分析を通じてGHG排出率がネットゼロであることを証明する必要がある。

48Eに関しては、電気・熱・水素の貯蔵施設が適格施設として認められるための条件(1.48E-2(g)条)や、5メガワット(MW)以下の低出力発電施設は系統に接続するための投資も対象として含まれること(1.48E-4(a)条)などを規定している。

同規則案については、8月2日までパブリックコメントを受け付けており、その後、公聴会と必要な修正を経た上で最終化される。同税額控除に関して、財務省は、2035年までに電力部門の炭素排出量を2022年比で43~73%削減する効果を持つとの米国調査会社ロジウム・グループの分析を紹介している。 脱炭素の観点でIRAにおける最も重要な措置となる可能性がある一方、11月の大統領選、連邦議会選の結果によっては、議会審査法(2024年5月30日付地域・分析レポート参照)を用いて廃止されるリスクがあるとも指摘されている(政治専門紙「ポリティコ」5月29日)。今回の規則案を含め、IRAの中にはいまだ最終規則となっていないものが複数存在し、今後どの程度のスピードで規則制定手続きが進められるか注目だ。

(注)45Yは0.3セント/キロワット時(kWh)、48Eは投資額の6%がベース控除額となる。その上で、賃金・見習い要件や国産部材要件()、エネルギーコミュニティー要件(関連ブラック ジャック ブラック)を満たす場合には、それぞれボーナスが加算される。

(加藤翔一)

(米国)

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