米財務省、IRAに基づく国産部材ボーナスクレジットに関するガイダンスを発表

(米国)

ニューヨーク発

2024年05月20日

米国財務省は5月16日、インフレ削減法(IRA)に基づくクリーンエネルギー製造税額控除(歳入法45、45Y、48、48E関連)に関して適用される国産部材ボーナスクレジット(追加的な税額控除)に係るガイダンスを発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。国産部材ボーナスクレジットは、再エネ電力やクリーン電力に係る投資や製造を行うにあたり、オンライン ブラック ジャック施設・設備の建設に際して使われる鉄鋼/鉄が全て米国製であり、かつ工業製品については米国で採掘・生産・製造された構成材のコストが一定割合以上である場合に、最大10%(注1)のクレジットを付与するというもの。本ボーナスクレジットに関しては、2023年5月にガイダンス案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(通知2023-38)が示されていたが、オンライン ブラック ジャックの追加などパブリックコメントを受けていくつかの修正が加えられた。主な内容は次のとおり。

(1)オンライン ブラック ジャック

本ガイダンスの対象となるプロジェクトとして、太陽光発電、陸上風力発電、洋上風力発電、系統蓄電池、水力発電の5項目が明示されるとともに、各プロジェクトにおいて必要となる構成材が鉄鋼/鉄、工業製品のいずれに分類されるのかという点が明示された(添付資料表参照)。また、水力発電は、2023年5月のガイダンス案では対象とされていなかったが、パブリックコメントを受けて追加された。

(2)調整パーセンテージ要件

オンライン ブラック ジャックに供される工業製品が国産部材として認められるためには、全て米国で製造されているか、調整パーセンテージ要件が一定水準を超えている(みなし米国製造)必要がある。調整パーセンテージ要件については、製品あるいは製品を構成する部品ごとのコストに基づき算定される(注2)。また、今回のガイダンスでは、オンライン ブラック ジャックの種別に応じて、各製品または部品をどのようにウエート付けし、コスト算定するのかを明示した選択的セーフハーバーが提示された(注3)。現時点では太陽光、陸上風力、系統蓄電池に関するセーフハーバーのみが明らかにされており、今後、洋上風力発電などほかのオンライン ブラック ジャックについても別途提示される予定だ。

なお、本ガイダンスの発表を受け、アメリカン・クリーン・パワー協会(ACP)は声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表し、「このインセンティブは米国のクリーンエネルギーサプライチェーンを強化するために不可欠なもの。昨年5月の提案以来、業界が提起した問題に対して政府が思慮深く取り組んだことを称賛する」「クリーンエネルギーの導入を加速し、米国の労働者に新しい雇用を創出し、米国のエネルギー安全保障を強化するために、永続的で明確かつ実行可能なガイダンスを必要としている。本日のガイダンスの発表は、これらの目標に向けた重要な一歩」として評価している。

(注1)ボーナスクレジットが上限まで適用されるためには、(1)1メガワット(MW)未満のエネルギー製造に係るもの、(2)当該プロジェクトの建設が2023年1月29日よりも前に開始されたもの、(3)プロジェクトがIRAの賃金・見習い要件を満たすもの、のいずれかの条件を満たす必要がある。これらの条件を満たしていない場合には、ボーナスクレジットは2%となる。

(注2)例えば、製品1(部品1A:30ドル、部品1B:45ドル、製品1のユニットコスト100ドル)、製品2(部品2A:30ドル、部品2B:50ドル、部品2C:100ドル、製品2のユニットコスト200ドル)からなるプロジェクトがあったとし、このうち部品2Cのみが米国外で製造されていた場合には、次のような計算がなされる。製品1については、ユニットコストが全て米国産として算定されるため100ドル分が米国産となる。製品2については、米国外で製造されたものが含まれているため、ユニットとしては米国産として見なされず、部品2Aと部品2Bの計80ドル分のみが米国産となる。このため、米国産と見なされる額(100ドル+80ドル)/プロジェクト総額(300ドル)=60%が調整パーセンテージとなる。

(注3)例えば陸上風力発電では、次のウエート付けがなされている。

  1. 風力タービン(ブレード:ウエート31.2%、ローターハブ:同9.9%、ナセル:同47.5%、パワーコンバーター:同8.9%、製品製造:同0.9%)
  2. 風力塔フランジ(材料:同0.8%、製品製造:同0.8%)
  3. タワーおよび基礎(全て米国製の鉄鋼/鉄により構成されている必要がある)

プロジェクトの中でブレードのみが国外で製造され、ほかは米国内で製造されている場合、1.風力タービンは製品ではなく部品として算定されるため、ローターハブ、ナセル、パワーコンダクターを合わせた66.3%、2.風力塔フランジは製品として算定されるため、材料、製品製造を合わせた1.6%となり、プロジェクトにおける国産比率は1.と2.を合計した67.9%となる。

(加藤翔一)

(米国)

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