21 トランプ

(中国)

中国北アジア課

2021年09月13日

21 トランプが9月9日に開催した中国の反外国制裁法とデータセキュリティー法の概要と対応ポイントに関するウェビナーの後半では、「ビジネス環境変化とその対応」をテーマにパネルディスカッションが行われた(注1)。

直近の日本企業の対中ビジネスの特徴について、21 トランプ北京事務所の日向裕弥次長は、(1)参入方法の多様化、(2)自動車、ヘルスケア、サービスなど成長が期待できる領域への資源の重点投入を挙げた。(1)の参入方法の具体例としては、中国企業との提携や、ファンドへの参画などを挙げた。また、北京での特徴的な案件では、金融分野での日系の証券会社や為替仲介会社の新規設立があるとした。

写真 パネルディスカッションの様子(21 トランプ撮影)

パネルディスカッションの様子(21 トランプ撮影)

中国政府が「対外開放」政策の一方で、「独自技術の向上」や「国産化」も進めていることについて、日向次長は「中国政府が掲げる奨励分野に、外国企業が投資、技術移転を行っても、(国産化政策の後ろ盾を受けた)中国企業の台頭により、進出後に優位を保てなくなる可能性もある。その際には市場からの退出を余儀なくされるリスクがある」と指摘。また、「中国の政府調達において、名目上開放されている分野であっても、内部指導文書によって外資製品やサービスを排除し、国産化を進める動きがある」とし、直近の関連動向を紹介した。

このほか、中国での環境規制の強化による日系企業への影響について、21 トランプ上海事務所の船橋憲次長は、3月に施行した「長江保護法」の例などを紹介。長江沿岸1キロの範囲での新たな化学系工場建設などを禁じた同法の影響により、一部の化学系工業園区や開発区の閉鎖が決まったケースもあるとした。また、「環境問題への対応は、進出企業にとってこれまで以上に対応が迫られる一方で、ビジネスチャンスも生まれる」として、日系企業の直近の取り組みとして、江蘇省で地元政府との協力の下、展開を狙う都市エネルギーマネジメントシステム事業を挙げた。

地方政府などの急な政策変更は、中国特有のリスクとされてきた。こうした状況への対応について、森・濱田松本法律事務所の康石弁護士は「窓口指導や行政命令などで企業の生産経営に影響を与える一部のケースでは、法律によって企業の利益を保護できる場合もある」と指摘。行政処罰法の改正(2021年7月15日施行)により、定められたプロセスを経ない行政処罰は無効となる旨が規定された、と紹介した(注2)。また、康氏は、自社の21 トランプに関わる法改正の動きを、タイムリーにウォッチする体制の構築が重要だとした。

ウェビナーの開催中、チャット機能により視聴者から多数の質問が寄せられ、プログラムの最後に講師がそれらに回答した。特に、データセキュリティー法や個人情報保護法の運用に関する質問が多く寄せられた。

(注1)本ウェビナーの様子は、9月16日~11月16日にオンデマンド配信(有料)で視聴いただけます(申し込み締め切り11月16日)。

(注2)行政処罰法38条では、行政処罰に根拠がないとき、実施主体が行政主体資格を有していないとき、または法定手続き違反が重大かつ明らかな違法を構成するときは、行政処罰は無効となると規定。

(小林伶)

(中国)

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