フィンテックの起業が減速、法律施行の影響も

(メキシコ)

メキシコ発

2019年05月30日

フィンテックに関連するメキシコの業界団体であるフィノビスタ(Finnovista)が5月23日に発表した報告書「Fintech Radar Mexico 2019」によると、メキシコにおけるフィンテックのスタートアップ企業数は394社となり、前年8月から60社増加した。事業分野別にみると、レンディング(融資)が81社と7社増え、決済・送金を上回って最大の事業分野となった。大きく伸びたのは、企業財務管理(EFM)、金融機関向け技術サービス、保険、デジタルバンキングなどで、逆にクラウドファンディングは1社減少した(添付資料参照)。

フィノビスタがおおむね1年おきに出す報告書で過去の企業数の増加率をみると、50.6%増、40.3%増、18.0%増と、最新レポートでは大きく減速している。この背景には、フィンテック法の施行(2018年12月28日付地域・分析レポート参照)により、クラウドファンディングや電子決済サービスの提供企業が金融当局の規制対象機関となり、要件を満たして金融テクノロジー機関(ITF)の認可を得ないと操業できなくなったため、新規スタートアップにとって参入のハードルが高まったことがある。今回の報告書でも法規制についてのアンケート結果があり、「法律が大きな障壁となっている」との回答が53%、「法律順守のためのコストが経営の非効率を生み出している」が46%、「規則が厳格」が41%で、「新しい規則を100%満たすことができる」(24%)を大きく上回った。

仮想通貨の利用を制限

法規制は業界の健全な発展を促す上では不可欠と指摘する識者も多いが、中央銀行が3月8日に官報公示した仮想通貨の利用規制は厳し過ぎるという意見が多い。この規則は、仮想通貨の利用を金融機関の内部利用に限定し、外部顧客との間で仮想通貨を利用した決済・取引・両替などの行為を禁止している。例えば、仮想通貨の根幹技術であるブロックチェーンの技術を用いて金融機関内の業務を効率化することは認められるが、外部顧客との資金決済に仮想通貨を用いることはできない。規制理由として中央銀行は、日々進化する難解な技術や、分かりにくい価格評価などが原因で一般利用者に損失が出ることを回避する目的と、マネーロンダリング防止の目的を挙げている。しかし、ブロックチェーンは本来、全ての取引が漏れなく記録されるため、現金よりもマネーロンダリングには向いていないという指摘も多く、過度な規制が国内の技術革新を遅らせる要因になると指摘する識者も多い。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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