バイデン米大統領、ファインデニールPSFに対するセーフガード発動を決定
(米国)
ニューヨーク発
2024年11月13日
米国のジョー・バイデン大統領は11月8日、ファインデニールのポリエステル短繊維(PSF)に対する緊急輸入制限(セーフガード)の発動を決定する大統領布告を発表した。セーフガード発動に関する決定は、バイデン大統領が2022年2月に、トランプ前政権が発動した太陽光発電製品に対する関税割当(TRQ)などの4年間の延長を決定(バイデン米大統領、ブラック)して以来、初となる。
米国国際貿易委員会(ITC)は2024年3月にファインデニールPSFを製造している企業の要請に基づき、セーフガード調査を開始し()、8月に発動を勧告する報告書をバイデン大統領に提出していた(米国際貿易委、無料 ゲーム ブラック)。これを踏まえ、バイデン大統領は、保証金などを支払うことにより一時的に無税で米国に輸入できる輸入制度(TIB、注1)を利用した、ファインデニールPSFの輸入に対する数量制限の発動を決定した。ITCの報告書では、数量制限のほかTRQも勧告されていたが、バイデン大統領は、TIBが国内産業への深刻な損害に大きく寄与していたことや、米国内の繊維メーカーへの影響などを考慮しTRQは実施しないと判断した。数量制限の対象となる品目の関税分類番号(HTSコード)は5503.20.0025で、同布告の発表から15日後の米国東部標準時午前0時1分以降の輸入から適用される。数量制限は4年間設定され、毎年、制限される数量は緩和される。
セーフガード措置は原則として全ての国からの輸入が対象となるが、米国と自由貿易協定(FTA)を結んでいるオーストラリア、カナダ、コロンビア、イスラエル、メキシコ、パナマ、ペルー、シンガポールや米国・中米諸国・ドミニカ共和国自由貿易協定(CAFTA-DR)締結国(注2)、カリブ海経済復興法(CBERA)の受益国(注3)、発展途上国からの輸入(注4)は、セーフガード措置の対象外とした。一方、米国は韓国とFTAを結んでおり、またITCの報告書では、韓国からのファインデニールPSFの輸入は米国産業に深刻な損害を与えていないとしていたが、バイデン大統領は、韓国からの輸入を対象外とするとセーフガード措置の効果が減退とするとして、対象に含めると決定した。
数量制限で定められる具体的な量や、対象外となる発展途上国などは、近日中に官報で公示される見込みだ。
(注1)TIBについては、ジェトロの貿易・投資相談Q&Aの「一時輸入制度」や「小口貨物の通関制度」を参照。
(注2)コスタリカ、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグア、ドミニカ共和国。
(注3)カリブ海のアンティグア・バーブーダ、アルバなど17カ国・領土を原産とする製品を無税で米国に輸入できる制度。
(注4)ただし、ファインデニールPSF の総輸入量に対して、対象となる発展途上国(1カ国)からの輸入が3%を超えた場合や、輸入シェア3%未満の対象発展途上国からの輸入が合計で9%を超えた場合などは、セーフガード措置の対象となる。
(赤平大寿)
(米国)
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