バイデン米政権「2021~2024年サプライチェーンレビュー」報告書を発表、通商法の更新を提案
(米国、中国)
ニューヨーク発
2024年12月20日
米国のバイデン政権は12月19日、「2021~2024年サプライチェーンレビュー」報告書を発表した。ジョー・バイデン大統領は、「サプライチェーン強靭(きょうじん)化諮問委員会」に対し、4年ごとに報告書を提出するよう指示していた(2024年6月18日記事参照)。今回が初の報告書となる。
バイデン政権が同日に発表したファクトシートによると、サプライチェーンを強靭化する上で、過去4年間で、大きく次の3点が行われた。
- 混乱への対応:バイデン政権は、新型コロナウイルスの感染拡大によってサプライチェーンが混乱していた最中に発足したため、サプライチェーン混乱対策タスクフォース(SCDTF)を立ち上げ、連邦政府、州政府、民間企業などとの連携を強化し混乱を解消した。
- インフラと製造業への投資とコスト削減:米国政府が2021年1月以降に行った投資が、1兆ドル超の民間投資を促進し、工場新設、製造業の雇用創出に貢献した。
- 非市場的政策と慣行(NMPP)への対応:国家による過剰な補助金など、公正な競争環境を阻害するNMPPへの対応として、一部品目の関税率を引き上げた。こうした関税率の引き上げは、不公正な貿易慣行から米国企業と労働者を保護すると同時に、インフラ投資雇用法(IIJA)、CHIPSおよび科学法(CHIPSプラス法)、インフレ削減法(IRA)に基づく米国内での投資を保護する。
これらのうちNMPPへの対処について、米国通商専門誌「インサイドUSトレード」(12月19日)は、「(同報告書は)中国のNMPPに対応するには米国の通商法は時代遅れで不十分であると主張し、次期政権と新議会が検討すべき多数の改善策と新たなツールを提案した」と総括した。報告書では、1974年通商法201条および301条、1962年通商拡大法232条(注1)は、「対抗措置を課すための重要な独自の権限を規定しているが、これら含む関連法における矛盾や不明瞭性は、米国政府がNMPPに効果的に対応する能力を制限する可能性があり、改定を検討すべき」と記されている。例えば、201条と301条は、第三国経由の積み替えなど米国の輸入制限措置への迂回に対処するよう改定できると記載された。そのほか、現在の通商法のほとんどは、国内産業への損害が証明された後にしか対抗措置を発動できないため、NMPPから影響を受ける前に発動できるよう改定すべきとも提案されている。ただし、301条と232条に基づく追加関税措置はWTOの紛争解決パネルで違反との裁定が出ている(WTOパネル、ブラック ジャック、2023年1月30日記事参照)。今回のバイデン政権による提案は、あらためて米国政府のWTOに対する姿勢が問われる内容といえそうだ(注2)。
なお、ファクトシートでは、今後もサプライチェーンを強靭化していくためには、米国への投資を継続し、同盟国などとの連携を強化していくことが重要だとも記載されている。
(注1)201条は、WTO協定上で認められたセーフガード措置の発動を規定している。直近の事例は関連ブラック ジャック トランプ。301条は、外国の通商慣行が不合理・差別的である場合などに、輸入制限措置を発動できると規定している。現在は301条に基づいて、中国原産品に対して追加関税が課されている(米USTR、ブラック ジャック)。232条は、ある製品の輸入が米国の安全保障を損なう恐れがある場合に、当該輸入を是正するための措置を取れると規定している。232条に基づいて、鉄鋼とアルミニウム製品に対して追加関税が課されている(バイデン米大統領、ブラック)。
(注2)WTOの紛争解決制度は、米国による新委員の選任拒否によって機能停止に陥っているほか(タイ米USTR代表、ブラック、米USTRのタイ代表、無料)、米国はWTOによる電子商取引テキストに不支持を表明している(関連ブラック ジャック 勝ち)。
(赤平大寿)
(米国、中国)
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