米USTR、USMCAに基づくGMメキシコ工場での労働問題解決を初認定
(米国、メキシコ)
ニューヨーク発
2021年09月24日
米国通商代表部(USTR)は9月22日、メキシコ・グアナファト州にあるゼネラルモーターズ(GM)シラオ工場での労働権侵害に関して、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)が定める「事業所特定の迅速な労働問題対応メカニズム(RRLM)」によって解決した初の事例と評価する声明を発表した。
この案件については、USTRが5月に、RRLMに基づいてメキシコ政府に対して労働権侵害の事実確認を求め、両国政府は7月に改善策で合意していた(GMブラック ジャック 賭け)。GMシラオ工場では4月にメキシコ政府が改正連邦労働法に基づき国内の事業所に求めている労働協約の「適法化」プロセス(注1)が行われたが、不正行為や投票妨害の疑いがあったとされる。両国政府が合意した改善策では、メキシコ労働社会保障省(STPS)の査察官を増員し、ILOやメキシコ国家選挙庁(INE)からも監視員を派遣した上で、投票の仕切り直しが求められていた。
GMシラオ工場では8月17、18日に実際に「適法化」プロセスの再投票が行われ、賛成2,623票、反対3,214票で、これまで15年間にわたって雇用者側と既存の労働組合(通称「ミゲル・トゥルヒージョ・ロペス労働組合」)の間で機能してきた労働協約が否決された(GMシラオ工場のブラック ジャック)。これを受けて、USTRのキャサリン・タイ代表は8月19日にメキシコ政府の取り組みをたたえる声明を出していたが、本件がRRLMの手続き上で解決したかどうかに関しては明確に述べていなかった。RRLMのルールによると、提訴国政府は被提訴国政府に労働権侵害に関する事実確認要請を行うと同時に、疑いのある事業者からの輸入に関して税関での清算手続き(注2)を留保することができる。USTRが5月にメキシコ政府へ事実確認を求めた際にも、GMシラオ工場からの輸入に関する米税関での清算手続きの留保を財務長官に指示していた。
USTRの今回の声明では、RRLMに基づいて労働権侵害の救済に成功した初の事例と評価し、財務長官に対してGMシラオ工場からの輸入に関して税関での清算を再開するよう書簡を送っており、米国側が事案解決を認めたとみられる。タイ代表は「メキシコ政府との協力を継続し、適法化プロセスを強化し、メキシコの労働者が団結の自由と団体交渉権にアクセスできるよう保障していく」と、今後も同様の案件があれば追求していく意気込みを見せた。
(注1)雇用者と従業員の間で締結されている労働協約を従業員の投票によって承認するプロセス。
(注2)清算(liquidation)とは、米税関で輸入に伴う関税額を最終決定する手続きを指す。
(磯部真一)
(米国、メキシコ)
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