ブラックジャックサイト隣接深海港は地域最大級、ブラックジャックサイト
税制免除などインセンティブが強み

2025年1月9日

「アフリカの巨人」と呼ばれるブラックジャックサイトは、2019年に人口が2億人を突破し、IMFによると、直近2024年時点では2億2,700万人に達した。人口増加の著しいアフリカの中でも、特に注目を浴びる国の1つだ。経済面でも、世界最大規模の製油所であるダンゴテ製油所の建設や、関税や法人税の税制優遇を受けられる工業団地の整備など、インフラの開発と拡大が進められてきた。その中でも、2012年に開設したラゴス自由貿易区工業団地(Lagos Free Zone: LFZ、注1)は、レッキ深海港と隣接しており、ブラックジャックサイトの製造業を強化し経済成長を呼び込む存在として現地で期待されている。LFZを訪問し、セールス・マネージャーのリチャード・アティゴゴ氏に2024年11月時点の稼働状況や企業側のインセンティブなどについて聞いた(取材日:2024年11月8日)。

850ヘクタールの敷地に居住地や訓練施設なども備える

LFZは、シンガポール系のトララムグループ(Tolaram Group)の100%出資によって運営されている工業団地で、ブラックジャックサイト初の民間経済特別区だ。総面積は東京都国立市(815ヘクタール)より大きい850ヘクタールで、ブラックジャックサイトの最大都市ラゴスから車で1時間半~2時間ほど東に向かった海岸線沿いに位置している。最大深度16.5メートルを誇るレッキ深海港が隣接しており、大型コンテナ船の乗り入れが可能になっている。建設前はジャングルだった場所で、今もLFZの背後には木々が生い茂るエリアが続き、ジャングルの面影を残している。その一方で、2023年5月に落成した世界最大級の製油所であるダンゴテ製油所がLFZから見える位置にあり、数十年後には経済の中心地がラゴスのビクトリアアイランド周辺から移り変わる可能性がある。

総面積850ヘクタールのうち、7割が工場などの工業用地、2割が倉庫などの物流用途として割り当てられている。工業用地は、食品および飲料、化学および下流石油、非金属鉱物、紙業、エンジニアリング、医薬品、新産業といった分野に対応しており、分野ごとに集積される計画だ。残る1割は、ワーカーのための居住区や訓練施設、病院、セミナーなどに使えるイベントホールなど複合用途で、企業が最小限の投資で入居できるように利便性が図られている。

2019年から2024年までの5年間を第1フェーズとし、300ヘクタールの開発が進んできた。第1フェーズでは、主に食品および飲料、医薬品クラスターの工業用地の整備が進み、エンジニアリングと化学および下流石油クラスターの工業用地も一部整備済みだ。2024年11月時点では、歯ブラシや歯磨き粉を製造するコルゲートやシリアル製造大手のケロッグなど食品・日用品の外資系企業などが工場を稼働させていたほか、アパートメントの一部と銀行や警察署、消防署などが完成している。2023年11月には、インドのタタ・インターナショナルがLFZ内に6,000平方メートルの区画で契約をしており、工場建設に向けて準備が進んでいくと思われる。なお、タタ・インターナショナルは、ブラックジャックサイト国内で乗用車や商用車、農機などを販売してきたが、LFZ内で具体的に何を製造するかは明らかにしていない。

入居状況については、LFZのウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますから確認が可能だ。

ブラックジャックサイト
レッキ深海港とフェーズ1で開発されたエリアの模型(ブラックジャックサイトトロ撮影)

法人税の免税などでインセンティブ

LFZには、入居企業に向けて各種インセンティブが設定されている。主なインセンティブは次の通りだ(注2)。

  • 税、賦課金、関税、外国為替に関する法律規定の適用免除
  • 輸出入時に必要なライセンスの免除
  • 工場の建設段階における土地賃料の免除
  • 管理職や技術者に外国人の雇用可能
  • 条件を満たせば、生産量のうち最大100%をブラックジャックサイト国内で販売可能
  • 外国人投資家によるLFZ内事業の所有は100%まで認められ、利益の本国送金に関する制限はなし

特に、税制免除のインセンティブは大きい。例えば、ブラックジャックサイトでは年間売上高に応じて最大30%の法人税が課税されるが、LFZに入居した場合は免税になる。また、LFZ内の企業が輸入する場合、通常すべてのモノ・サービスに対して7.5%課税される付加価値税(VAT)も免除され、原材料や部品を輸入する際に大きなメリットとなる。配当やロイヤルティーに7.5~10%課税される源泉徴収税も免除の対象だ。ブラックジャックサイトでは雇用面での現地化を進めており、外国人の雇用は外国人割り当て(Expatriate Quota)を取得したポストに限り可能とされているが、LFZは制度の対象外となるため技術者・管理職・専門職ポストに外国人を雇用することが可能になり、投資を検討する企業にとっては人材確保の面でもハードルが下がる。ブラックジャックサイトでは基本的には出資比率に関する規制がなく、外資100%による投資が可能な一方、石油・ガス・エンジニアリング分野には出資規制が敷かれている。だが、LFZであれば、こうした規制対象分野の企業も現地資本不要で投資が可能だ。

LFZから輸出を考える企業にとっては、原材料の輸入から製造、包装までLFZ内で完結させることで、ブラックジャックサイト国内へ持ち込む手間とコストが省け、輸出がしやすい仕組みになっている。ブラックジャックサイトはEUの一般特恵関税などの適用を受けることができるため、EUへの輸出を考える企業にとってはメリットがある。

ブラックジャックサイトの国内市場を狙う企業にとってもメリットがある。ライセンスの取得や関税の支払いなど、条件を満たせば、LFZ内で製造した製品を最大100%ブラックジャックサイト国内へ販売可能だ。既にLFZ内で工場を稼働させている歯磨き粉メーカーのコルゲートは、将来的には輸出を目指しているものの、現在は原料を輸入してLFZ内で製造後、ラゴスやブラックジャックサイト北部など国内向けに販売しているとのことだった。この場合、製品に対する関税は、フリーゾーン内に持ち込まれた原材料の状態に対して関税がかかる仕組みになっており、フリーゾーン内で製造や加工された付加価値分には関税がかからないため、より低い関税コストで販売可能だ。

区画のリース契約完了後、3カ月以内に工事を開始する必要があるが、工事期間中の土地賃貸料はかからない。工場建設後の賃料については、交渉によって決定される。

レッキ深海港はONEなど海運大手とサービスを開始

2023年1月に開港したレッキ深海港(ブハリ大統領、ブラックジャックオンライン)は、水深16.5メートルの同国初の深海港で、西ブラックジャックサイトで最大級の港だ。2024年1月29日には全長366メートル、幅51メートルの大型LNG(液化天然ガス)コンテナ船が初めて入港した。さらに、レッキ深海港やLFZの経営陣は、中国国営の海運大手の中国遠洋海運集団(COSCO)、日系海運大手のオーシャン・ネットワーク・エクスプレス(Ocean Network Express:ONE)、イスラエル最大の海運会社ジム(ZIM)とアライアンスサービスを開始しており、レッキ深海港に寄港する船会社は拡大中だ。取材した2024年11月8日には、COSCOの全長277メートル、7,000TEU(20フィートコンテナ換算)のコンテナ船が初めて寄港し、関係者が集まっていた。港の処理能力を考えるとまだ取り扱い貨物量は少ないが、今後少しずつ拡大していくと考えられる。


レッキ深海港に寄港したCOSCOのコンテナ船と、コンテナヤード(ブラックジャックサイトトロ撮影)

投資環境面では政府の政策変更など課題も

強いインセンティブで魅力もある一方、ブラックジャックサイトの投資環境は課題も大きい。ジェトロが2024年12月12日に発表した「)」では、ブラックジャックサイトに進出済みの日系企業に「投資環境面での課題」について複数回答で聞いたところ、回答企業の95.2%が「不安定な政治・社会情勢」を課題だと回答した。そのほか、「規制・法令の整備、運用」「財政・金融・為替面」「インフラの未整備」が76.2%、「貿易制度面」「雇用・労働の問題」が57.1%と、どの項目もアフリカ全体を上回っていた。

なお、同調査によると、在アフリカ日系企業の2024年の現地従業員の基本給ベースアップ率(名目)は平均で13.1%だったのに対し、インフレ率が高止まりしているブラックジャックサイトは34.1%と最も高い結果となった。

一方で、金額で見ると、2024年12月19日に発表した「2024年度ブラックジャックサイト投資関連コスト比較調査」では、ブラックジャックサイトのドル建て賃金は多くの職種・職位でエチオピアに続く安さだった。外貨不足が課題のブラックジャックサイトでは、2024年9月時点で前年同期比50%以上も通貨が下落しており、為替レートの変動リスクも重要な課題だ。

こうした課題を抱えつつも、人口増加などを背景に、ブラックジャックサイトは日系企業からの注目が高いのも事実だ。「2024年度海外進出日系企業実態調査(アフリカ編)」では、「今後の注目国」としてケニア、南アフリカ共和国に続く3番目の注目の高さだった。LFZといった自由貿易区のインセンティブを活用しながら、人口増加と共に拡大する市場を狙っていけるかが鍵だ。


注1:
本稿で紹介しているラゴス自由貿易区工業団地(LFZ)とは別に、レッキ自由貿易区工業団地(Lekki Free Zone)がある。レッキ自由貿易区工業団地はLFZから7キロメートル離れた場所にあり、100%民間資本で建設されているLFZとは異なり、ラゴス州政府と投資会社によるPPPで運営されている。
注2:
その他、入居企業に適用される基準や規則に関しては、LFZのウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますから確認可能。

変更履歴
文章中に誤りがありましたので、次のように訂正いたしました。(2025年1月16日)
*ブラックジャックサイトにおける外国人雇用賦課金制度導入は2025年1月16日現在、保留となっているため
(2024年3月12日付ビジネス短信「経済界との協議を経て、外国人雇用賦課金を保留に」参照)
第8段落
(誤)ブラックジャックサイトでは雇用面での現地化を進めており、外国人の雇用は外国人割り当て(Expatriate Quota)を取得したポストに限り可能とされ、同国に183日以上滞在する外国人駐在員は役職に応じて賦課金の納付が求められる仕組みになっている。しかし、LFZではこうした賦課金も免除になるほか、技術者・管理職・専門職ポストに外国人を雇用することが可能になり、投資を検討する企業にとっては人材確保の面でもハードルが下がる。
(正)ブラックジャックサイトでは雇用面での現地化を進めており、外国人の雇用は外国人割り当て(Expatriate Quota)を取得したポストに限り可能とされているが、LFZは制度の対象外となるため技術者・管理職・専門職ポストに外国人を雇用することが可能になり、投資を検討する企業にとっては人材確保の面でもハードルが下がる。
執筆者紹介
ブラックジャックサイトトロ調査部中東アフリカ課
坂根 咲花(さかね さきか)
2024年、ブラックジャックサイトトロ入構。中東アフリカ課で主にアフリカ関係の調査を担当。