シーメンス・エナジー、ベルリンにグリーン水素の電解槽生産拠点を開所

(ドイツ、フランス)

ベルリン発

2023年11月29日

ドイツのエネルギー技術大手シーメンス・エナジーと、フランスの産業ガス大手エア・リキードは11月8日、ベルリンで新工場の開所式を行った(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。式典にはドイツのオラフ・ショルツ首相、シーメンス・エナジーのクリスチャン・ブルッフ最高経営責任者(CEO)、合弁パートナーのエア・リキードのフランソワ・ジャコウCEOをはじめ、両国政界の要人らが出席した。

新工場では固体高分子(PEM)型水電解スタック(注)を量産する。同工場は、シーメンス・エナジーが74.9%、エア・リキードが25.1%を出資した合弁事業だ。

シーメンス・エナジーの電解槽製造の責任者であるトーマス・バグス氏によると、年間生産能力は当初1ギガワット(GW)で開始し、2025年には3GWまで拡大する計画だ。3GWの電解設備容量でグリーン水素を年平均で30万トン生産できる。新工場の生産能力は世界最大級になるという〔「ベルリン=ブランデンブルク放送(rbb24)」11月8日〕。

新工場は、ベルリンにあるシーメンス・エナジーの既存のガスタービン工場の敷地に、約3,000万ユーロを投じて新設された。ベルリンで生産された水電解スタックは、ドイツ西部のノルトライン・ウェストファーレン州ミュールハイム・アン・デア・ルールのシーメンス・エナジーの工場やパートナー企業のプロジェクト拠点で組み立て、完成品の電解槽を生産する。供給先は、エア・リキードがフランスのポール・ジェローム・シュル・セーヌに建設中のグリーン水素の製造設備()などとなる。

ドイツ政府は2023年7月に改定した国家水素戦略で、2030年までに国内の水素生産能力を10GWとする目標を掲げている()。今回の新工場もこの目標達成に資するものだ。

シーメンス・エナジーは、ドイツ政府が推進する再生可能エネルギーへの移行を推進するためのサプライヤーとして、経済・気候保護省が重要視している企業だ。同社は、スペインの風力発電子会社シーメンスガメサ・リニューアブル・エナジーの経営不振などにより、銀行保証の獲得が困難となっていた。このため、ドイツ政府は11月14日、同社に75億ユーロの政府保証を提供すると発表した。シーメンス・エナジーは21日の投資家向け説明会で、好調なガスサービス、グリッド関連技術、製造業向けトランスフォーメーション支援の事業は中期目標を達成し、風力発電事業は2026年度中に黒字転換する見通しを示した。

(注)水と再生可能エネルギー由来の電力からグリーン水素を製造する電解槽の中核コンポーネント。

(小川いづみ、中村容子)

(ドイツ、フランス)

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