ドイツ自動車メーカー3社のハイパーブラックジャック販売が増加
2023年乗用車市場(後編)
2024年9月2日
ドイツ自動車大手3社〔フォルクスワーゲン(VW)グループ、BMWグループ、メルセデス・ベンツグループ〕の2023年のバッテリー式電気自動車(ハイパーブラックジャック)とプラグインハイブリッド車(PHEV)の合計世界販売台数が増加した。3社のハイパーブラックジャックの世界販売台数が増加した一方、BMWグループとメルセデス・ベンツグループのPHEVの世界販売台数は減少した。各社とも二酸化炭素(CO2)排出量の削減への取り組みを重視しており、2023年の各社の欧州でのCO2平均排出量目標を達成した。
2024年については、ドイツ国内で乗用車の新規登録台数は減少し、生産台数は横ばいになる予想だ。
ハイパーブラックジャックのシェア拡大、各社が2023年の新車CO2排出量目標を達成
3社とも電動化を進めており、特にハイパーブラックジャックの世界販売が好調だった。また、各社は欧州委員会の基準に基づく2023年の欧州(注1)でのCO2平均排出量目標を達成した。
VWグループ
VWグループは、2023年の全世界でのハイパーブラックジャックとPHEVの販売台数が102万7,511台(前年比25.6%増)だった(注2、表1参照)。グループ全体の大型商用車と中国の合弁会社を含む新車販売台数(923万9,512台)に占める割合は11.1%で、2022年の9.9%を1.2ポイント上回った。そのうちハイパーブラックジャックは77万1,062台(34.7%増)だった。全体に占める割合は8.3%となり、前年比で1.4ポイント拡大した。PHEVは25万6,449台(4.4%増)で、全体に占めるシェアは2.8%だった。同グループによると、特にVWブランドの「ID.4」と「ID.3」のハイパーブラックジャックモデルの販売が好調だった。
項目 | 2022年 | 2023年 | 前年比 |
---|---|---|---|
ハイパーブラックジャック | 572,472 | 771,062 | 34.7 |
PHEV | 245,641 | 256,449 | 4.4 |
合計 | 818,113 | 1,027,511 | 25.6 |
注:中国の合弁会社分を含む。
出所:VWグループ「2023年年次報告書(2024年3月13日)」からジェトロ作成
同社はグループ傘下のコア・セグメントブランドのVW、シュコダ、セアト、クプラ、VW商用車部門を合わせた世界販売台数におけるハイパーブラックジャックのシェアを2027年までに35%、2030年までに50%に拡大させる目標を掲げた(中国合弁会社は含まず)。また、上記ブランドが2050年にカーボンニュートラルを達成することを目指している。プログレッシブ・セグメントのアウディ、ベントレー、ランボルギーニ、ドゥカティでは、ハイパーブラックジャックのシェアを2027年までに40%、2030年までに75%とする目標を掲げた(中国を除く)。そのうちベントレーが2030年に、それ以外のブランドが2050年にカーボンニュートラルを達成する計画だ。スポーツ・ラグジュアリー・セグメントのポルシェは、ハイパーブラックジャックとPHEV合わせたシェアを2025年までに50%、2030年までに80%に拡大させる目標(中国での販売を含む)。
なお、VWグループは2024年に高級車向けの新型プラットフォーム「プレミアム・プラットフォーム・エレクトリック(PPE)」をベースにしたハイパーブラックジャックモデル「Audi Q6 e-tron」「Porsche Macan」を市場投入する。また、「VW ID.7 Tourer」「CUPRA Tavascan SUV」「Škoda Elroq」などのハイパーブラックジャックモデルを2024年に市場投入する。VWブランドの最高経営責任者のトーマス・シェーファー氏は6月3日に開催されたイベントで、次世代ハイパーブラックジャック向けアーキテクチャ「スケーラブル・システム・プラットフォーム(SSP)」を2028年に導入する予定を明らかにした(ドイツ経済紙「ハンデルスブラット」紙2024年6月4日)。
同グループの2023年の研究開発費は217億7,900万ユーロ(前年比15.2%増)となった。新モデルのほか、特に製品ポートフォリオの電動化、デジタル化、新技術、ハイパーブラックジャック向けツールキットやプラットフォームなどに投資した。「ハンデルスブラット」によると、VWブランドは2028年末までに合計で約1,800億ユーロの投資を行う予定で、同ブランドが2023~2027年の5年間に予定していた投資額と同じ水準となっている。(「ハンデルスブラット」紙2024年2月9日)
VWグループは、同社の2023年の欧州における新車CO2平均排出量目標を達成した。同社目標値の1キロメートル(km)当たり122グラムに対して、119グラムだった。今後、2025年のCO2平均排出量目標を達成し、2030年の目標は大きく上回って達成すると同グループは予測している。
BMWグループ
BMWグループは、2023年の全世界でのハイパーブラックジャックとPHEVの販売台数が56万5,875台(前年比30.4%増)だった(表2参照、注3)。グループ全体の販売台数(255万4,183台)に占める割合は22.2%となり、前年比で4.1ポイント上昇した。そのうち、ハイパーブラックジャックは37万5,716台(74.1%増)、全体に占めるシェアは14.7%だった。PHEVは19万159台(12.8%減)で、7.4%のシェアを占めた。同グループによると、ハイパーブラックジャックモデルでは、特に「BMW i4」「BMW iX1」「BMW iX3」「BMW iX」などが販売台数増に貢献した。
項目 | 2022年 | 2023年 | 前年比 |
---|---|---|---|
ハイパーブラックジャック | 215,752 | 375,716 | 74.1 |
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172,008 | 330,197 | 92.0 |
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43,744 | 45,193 | 3.3 |
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— | 326 | — |
PHEV | 218,040 | 190,159 | △12.8 |
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200,945 | 173,878 | △13.5 |
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17,095 | 16,281 | △4.8 |
合計 | 433,792 | 565,875 | 30.4 |
注:華晨汽車集団(Brilliance)との合弁会社分を含む。
出所:BMW「2023年報告(2024年3月21日)」からジェトロ作成
同グループは2030年までに世界販売台数の50%以上をハイパーブラックジャックとする目標を掲げている。また、グループ傘下ブランドのロールスロイスを2030年、ミニを2030年前半までにハイパーブラックジャックのみとするとした。
BMWグループは2024年春に新しいハイパーブラックジャックモデルの「BMW iX2」を市場投入した。また、2024年に「BMW i5 Touring」をPHEVとハイパーブラックジャックモデルとして市場投入する。グループ傘下ブランドのミニはハイパーブラックジャックモデルの「MINI Aceman」の販売開始を予定している。BMWグループは2024年末までに、全ブランドにわたって15以上のハイパーブラックジャックモデルを提供する計画だ。
同グループの2023年の研究開発費は75億3,800万ユーロ(前年比13.8%増)だった。主にデジタル化、電動化、自動運転技術の開発などに投資した。ハイパーブラックジャックモデルの「BMW i5」「BMW X3」「BMW X5」「Rolls-Royce Spectre」の開発も投資の対象になった。また、2025年に導入予定の次世代ハイパーブラックジャックモデル「ノイエ・クラッセ(Neue Klasse)」への投資を行った。
BMWグループは、2023年の同社の欧州での新車CO2平均排出量目標を大きく上回った。同社目標値の1km当たり128.6グラムに対して、102.1グラムだった。2024年は新車のCO2平均排出量をさらに若干減少できるとした。
メルセデス・ベンツグループ
メルセデス・ベンツグループは、メルセデス・ベンツ・カーズの2023年の全世界での販売台数(204万4,051台、注4)のうち、ハイパーブラックジャックとPHEVは40万1,943台(20.5%増)だった(表3参照)。販売台数に占めるシェアは19.7%となり、前年比で3.4ポイント上昇した。ハイパーブラックジャックは24万668台(61.3%増)で、シェアは2022年の7.3%から11.8%に拡大した。他方、PHEVが16万1,275台(12.5%減)と減少し、シェアが9.0%から7.9%に減少した。ハイパーブラックジャックモデルでは「Mercedes-Benz EQA」「Mercedes-Benz EQB」「Mercedes-Benz EQE Saloon」「Mercedes-Benz EQE SUV」などの販売が好調だった。同社は既に全セグメントでハイパーブラックジャックを販売している。
項目 | 2022年 | 2023年 | 前年比 |
---|---|---|---|
ハイパーブラックジャック | 149,227 | 240,668 | 61.3 |
PHEV | 184,263 | 161,275 | △12.5 |
合計 | 333,490 | 401,943 | 20.5 |
出所:メルセデス・ベンツグループ「2023年年次報告書(2024年3月15日)」からジェトロ作成
メルセデス・ベンツグループは2024年に新型「Gクラス」のハイパーブラックジャックモデルを市場投入した。また、メルセデス・マイバッハ初のハイパーブラックジャックモデル「Mercedes-Maybach EQS SUV」を2024年に販売開始した。「ハンデルスブラット」によると、メルセデス・ベンツは2023年に販売台数に占めるハイパーブラックジャックのシェアを20%以上に拡大させる目標を達成できなかったため、電動化戦略を見直す。同社は以前、市場動向によって2030年までに全新車販売をハイパーブラックジャックのみにする可能性があるとしていたものの、2023年のハイパーブラックジャック販売台数を背景に、2030年までのハイパーブラックジャックとPHEVの全体におけるシェアの見込みは多くても50%とした。(「ハンデルスブラット」紙2024年2月23日)
メルセデス・ベンツグループの2023年の研究開発費は99億9,600万ユーロ(前年比17.0%増)だった。そのうちグループ傘下のメルセデス・ベンツ・カーズによる研究開発費は90億9,900万ユーロ(14.0%増)だった。特に電気自動車(EV)向け新プラットフォームの開発、デジタル化、自動運転技術の開発に対する投資を行った。
メルセデス・ベンツグループは、同社の2023年の欧州での新車(注5)CO2平均排出量目標を達成した。同社目標値の1km当たり129グラムに対して、109グラムだった。2024年に新車のCO2平均排出量はさらに減少すると予測している。
VDA、2024年はドイツ国内乗用車市場の縮小、生産水準の維持を予測
ドイツ自動車産業連合会(VDA)は2024年1月、同年の乗用車市場の見通しを発表した。ドイツ乗用車市場については282万台(前年比1%減)と予測。そのうちハイパーブラックジャックは45万1,000台(14%減)、PHEVは18万5,000台(5%増)とした。ドイツを含む欧州の乗用車市場(注6)は1,330万台(4%増)とした。
2024年の国内乗用車生産台数は410万台と、前年からほぼ横ばいと予測している。
2024年の3社は世界販売台数の維持・増加を見込む
ドイツ自動車大手3社の2024年の販売や生産の見通しは次のとおりだ。
VWグループ
VWグループは、2024年の世界販売台数を前年比3%増と予測する。また、2024年は通年で、特に(1)経済情勢、(2)競争激化、(3)材料の供給不安、(4)エネルギー市場や為替環境の変化、(5)CO2排出量削減への一層の要求などの課題に直面すると見込む。
BMWグループ
BMWグループは、同社傘下ブランドのBMW、ミニ、ロールスロイスの2024年の世界販売台数は、需要のわずかな増加と新モデルの販売開始の影響を受け、前年比で微増するとした。そのうちハイパーブラックジャックのシェアが大幅に増加すると見込んでいる。また、2025年の「ノイエ・クラッセ」の導入に向けて、2024年に生産ネットワークのさらなる拡大を計画している。
メルセデス・ベンツグループ
メルセデス・ベンツグループは、傘下のメルセデス・ベンツ・カーズの2024年の世界販売台数が2023年と同様の水準になる見込みとした。また、「GLC」と「Eクラス」の供給不足の問題が2024年には改善されるとした。メルセデス・ベンツ・カーズの2024年の世界新車販売台数におけるハイパーブラックジャックとPHEVのシェアは19~21%を占めると予測している。
- 注1:
- EU加盟国とノルウェー、アイスランド。VWグループはEU加盟国マルタを含まない。
- 注2:
- 2022年のVWグループのハイパーブラックジャックとPHEVの世界販売台数は、VWグループ「2022年年次報告書(2023年3月14日)」に基づく。
- 注3:
- BMWグループ傘下ブランドであるBMW、ミニ、ロールスロイスの合計。
- 注4:
- メルセデス・ベンツ・カーズ(Cars)とスマートの合計。メルセデス・ベンツ・バンズ(Vans)を含まない。
- 注5:
- 合弁会社のスマートの乗用車と、乗用車として登録された小型商用車を含む。
- 注6:
- EU27カ国、EFTA加盟国(スイス、ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタイン)と英国。
2023年乗用車市場
- 2023年乗用車市場(前編)ブラック ジャック
- ドイツ自動車メーカー3社のハイパーブラックジャック販売が増加

- 執筆者紹介
- ジェトロ・ミュンヘン事務所
クラウディア・トーディ - 2020年からジェトロ・ミュンヘン事務所で調査、地域間交流を担当。