2023年の賃金、8割以上の企業が引き上げ予定
(ドイツ)
ミュンヘン発
2023年01月05日
ドイツの主要経済研究所の1つ、ifo経済研究所は12月23日、国内企業の2023年賃金水準見通しなどに関するアンケート調査結果を発表した。このアンケートは人材サービス大手のランスタッドと共同で2022年第4四半期(10~12月)に実施、約630社の人事担当者が回答した。調査対象の産業部門は製造業、サービス業、商業(卸・小売業)。
同アンケートでは、2023年の賃金を「引き上げる」と回答した企業は81%。産業別では製造業で86%、サービス業で80%、商業で74%だった。賃金上昇率(見通し)は全体平均で5.5%増。商業で5.9%増、サービス業で5.6%増、製造業で5.0%増だった。
物価上昇を踏まえた一時金(注1)については、「支給を予定」42%、「支給するか未定」44%、「支給しない」14%だった。税と社会保険料が免除になる上限3,000ユーロの範囲内で、実際の支給額をどこまでにするかは、全体加重平均で上限3,000ユーロの70.8%までとなった。産業別では製造業が78.7%まで、企業規模別では従業員500人以上の大企業が83.7%までと、全体平均より高かった。
2023年、労働協約に基づく賃金水準は大きく上昇
ドイツのハンスベックラー財団経済社会研究所(WSI)は12月13日、労働協約に基づく2022年の賃金上昇率(速報値)を発表した。全体平均では2.7%増で、2021年またはそれ以前に締結の労働協約では2.6%増(1,200万人が対象)、2022年に締結の労働協約では2.9%増(740万人が対象)の上昇だった(注2)。
WSIは、2022年は労働協約に基づく賃金上昇率が物価上昇率(注3)と比べて低かった要因として、(1)2022年は多くの産業分野で労働協約の有効期間中のため、労使の賃金交渉がなかったこと、(2)高い賃上げ率と物価上昇を踏まえた一時金支給で2022年内に妥結した産業分野でも、その協約内容は2023年以降に実施されることを挙げた。
一方、WSIは、労働協約に基づく大幅な賃上げが2023年に実施されるとした。その主因として、(1)化学分野、金属・電機分野などでの新協約による賃上げと一時金支給の実施(2022年11月24日記事参照)、(2)公務、ドイツポスト、食品製造・加工分野などの労使交渉で大幅な賃上げの新協約締結が見込まれることを挙げている。
ドイツでは、エネルギー価格の高騰などを受けた物価上昇が続く一方、景気見通しは不透明だ。在ドイツ日系企業としても、従業員の賃金水準をどの程度にするかに頭を悩ませているとの声が聞かれる。ジェトロが2022年9月に実施した「2022年度ブラック ジャック トランプ やり方進出日系企業実態調査(欧州編)(2.2MB)」では、2023年度のベースアップ率見込み(名目、平均)について、在ドイツ日系企業の回答平均(回答企業数226社)は4.19%となっている。
(注1)ドイツではインフレ対策として、2022年10月末~2024年末の間、3,000ユーロまでの一時金は税と社会保険料が免除となる時限措置が実施されている。
(注2)ドイツの労働協約では、賃金に関しては2年分など中期的な取り決めが多い。
(注3)例えば、ドイツ政府の経済諮問委員会は2022年11月、同年通年の消費者物価指数は8.0%、2023年は7.4%の上昇との予測を発表。
(高塚一)
(ドイツ)
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