BW州金属・電機の賃金交渉は8.5%のベアで合意、2023年は他部門でもベア実施へ
(ドイツ)
ミュンヘン発
2022年11月24日
ドイツ最大の労働組合で、金属・電機部門を中心に労働者を組織するIGメタル(IG Metall)は11月18日、ドイツ南西部バーデン・ビュルテンベルク州の金属・電機部門の賃金交渉について、経営者側団体のズートベストメタル(Südwestmetall)と合意に至った。
新たな労働協約では、賃金は計8.5%引き上げるが、2023年6月に5.2%、2024年5月に3.3%と、2段階に分けて行う。また、物価上昇を踏まえた一時金について、2023年2月までに1,500ユーロ、2024年2月までに1,500ユーロ支給する(注)。労働協約の有効期間は2022年10月~2024年9月までで、有効期間中にエネルギー価格高騰に関して緊急措置が必要になった場合、速やかに、かつ柔軟に調整する手続きでも合意した。労働協約は約100万人の労働者が対象。IGメタルは今回の労使合意の内容を見本として、他地域の同部門でも採用することを推奨している。
IGメタルは2022年6月、鉄鋼部門について、6.5%の賃上げ、一時金として500ユーロの支給で合意している。対象地域は北西部〔ノルトライン・ウェストファーレン州、ニーダーザクセン州、ブレーメン市(州に相当)、ヘッセン州〕、東部ドイツ、ザールラント州で、労働協約の有効期間は2023年11月(ザールラント州は2024年2月)までの18カ月間。約9万1,500人の労働者が対象。
また、鉱業・化学・エネルギー労組(IG BCE)は10月、約58万人の労働者が対象となる化学・医薬品部門の賃金交渉について経営者側と合意、2023年1月と2024年1月にそれぞれ3.25%の賃上げを行い、計6.5%の引上げとなる。併せて、2023年1月までと、2024年1月までに、それぞれ1,500ユーロの一時金を支給する。
企業レベルでは、フォルクスワーゲンが11月23日、ニーダーザクセン州とザクセン・アンハルト州のIGメタルと同社の従業員の賃金交渉などで合意し、2023年6月に5.2%、2024年5月に3.3%の賃上げ(計8.5%の賃上げ)を行う。また、物価上昇を踏まえた一時金を2023年2月に2,000ユーロ、2024年1月に1,000ユーロ支給する。従業員約12万5,000人が対象で、労働協約有効期間は24カ月。
ドイツでは、エネルギー価格の高騰などを受けた物価上昇が顕著で、2022年10月の消費者物価指数(速報値)は前年同月比で10.4%の上昇となった。ドイツ政府の経済諮問委員会(通称「五賢人委員会」)は11月9日、2022年通年の消費者物価指数は8.0%、2023年は7.4%の上昇との予測を発表している。他方、景気見通しは悲観的で、2023年の実質GDP成長率はマイナス0.2%との予測だ。このような状況の中、在ドイツ日系企業としても、従業員の賃金水準をどの程度にするかに頭を悩ませているとの声が聞かれる。
(注)ドイツではインフレ対策として、10月末~2024年末までの間、3,000ユーロまでの一時金は税と社会保険料が免除となる時限措置が実施されている。
(高塚一)
(ドイツ)
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