米鉄道労使交渉、大統領緊急委員会が解決に向けた勧告を大統領に報告

(米国)

ロサンゼルス発

2022年08月22日

米国内鉄道で労使交渉が継続する中、大統領緊急委員会(PEB)は816日、問題解決に向けた勧告を大統領に報告PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。連邦政府機関の全国仲裁委員会(NMB)による仲裁が不調に終わったため、ジョー・バイデン大統領は7月15日にPEBを創設していた(2022年7月20日記事参照)。

米鉄道業界では20201月から、30を超える主要な国内鉄道会社を代表する全米鉄道労務会議(NRLC)と、それら鉄道会社の従業員約115,000人で組成される12の労働組合との間で労使交渉が続いており、賃上げが主な争点とされている。この点につき、報告書は、202071日にさかのぼる5年間で複利24%の賃上げと、同期間中の毎年1,000ドルの特別ボーナス支給を勧告した。これは、労働組合が求めた31.3%の賃上げを下回るが、鉄道会社側の17%の賃上げを上回る水準。このほかにも、報告書は、従業員が支払う月額保険料の上限の撤廃などについて勧告している。

米国やカナダ、メキシコの主要な貨物鉄道会社などで構成されるアメリカ鉄道協会は、今回の勧告を「解決に至るための有益な基礎を提供している」と評価し、「鉄道業界は、従業員に長年の懸案だった賃上げを提供し、鉄道サービスの中断を回避するために、PEBの勧告に基づく合意を提案する用意がある」と述べ、交渉妥結に前向きな姿勢を示している。

今回の報告書の提出を受け、労使双方は勧告内容を検討し、合意に向けて交渉を継続することになるが、提出後30日間で合意に至らない場合は、ストライキやロックアウト、雇用条件の一方的な変更などを行うことが可能になる。米国では、西海岸港湾の労使交渉とともに(2022年7月15日付地域・分析レポート参照)、米国内鉄道の労使交渉の行方もサプライチェーン上のリスクとして意識されている。11月に中間選挙を控えるバイデン政権にとって、物価のさらなる高騰を招きかねないサプライチェーンの混乱は何としても回避したい事態で、労使交渉の円滑な妥結に向けてバイデン大統領の指導力が問われている。

(永田光)

(米国)

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