財政赤字は拡大の一途、中期予算方針を発表

(南アフリカ共和国)

ヨハネスブルク発

2019年11月11日

南アフリカ共和国のティト・ムボウェニ財務相は10月30日、今後3年間の政府予算の方針を定める中期予算方針を発表した。同相は冒頭、「経済の状況はおもわしくない」と警戒感を示した上で、2019年の実質GDP成長率の見通しを、2月発表の1.5%から0.5%に下方修正するとした。世界経済の低迷を背景に、投資と輸出が減少したことを理由に挙げた。一方で、市場からの信頼の回復、効率的な国営企業の運営などを通じて、2022年までにGDP成長率は1.7%まで上向くとの見方を示した。

2019/2020年度(2019年4月~2020年3月)の歳入は、経済成長率の下方修正とそれに伴う個人所得税、法人税、付加価値税などの減少を理由に、2019年2月の予算案時点から、525億ランド(約3,885億円、1ランド=約7.4円)減少する見通しを示した。これにより、2019/2020年度の経常赤字はGDP比5.9%と、同予算案時点で発表した4.7%から悪化する見込み。公的債務(グロス)も、2019/2020年度は前年度のGDP比56.7%から60.8%へと拡大し、2022/2023年度には71.3%まで上昇するとの見通しが示された。ムボウェニ財務相は、徴税強化を目的として、南ア歳入庁(SARS)の構造改革に、追加で10億ランドを投じる考えを示した。

同相はまた、危機的な経営状況が続き、国庫の補填(ほてん)により財政を圧迫している電力公社エスコム向けに、2019/2020年度は490億ランドの予算を確保しているとした。同社を発電、送電、配電の3事業に分離することを通じて、経営の効率化を図り、2021/2022年度までに財政支援を330億ランドまで減少させる見通しを示した。この中期予算方針発表の前日に、プラビン・ゴーダン公共事業相は、この分離を2020年3月に始めると発表していた(「ビジネス・デイ」紙11月4日)。

今回の財政赤字拡大の見通し発表を受け、大手格付け会社のうち唯一、「投資不適格級」としていない米国ムーディーズは11月1日、南ア政府の長期債務格付けを、現地通貨建ておよび外貨建てともに投資適格最低の「Baa3」の「ステイブル」から「ネガティブ」への格下げに踏み切った。なお、ムーディーズが投資不適格級までは格下げしなかったことを受け、通貨ランドは中期予算方針発表直後の1ドル=15.17ランドから11月4日朝には1ドル=14.78ランドまで持ち直した。

(高橋史)

(南アフリカ共和国)

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