さらなるエネルギー価格上限引き上げを発表、消費者保護対策も提示
(英国)
ロンドン発
2022年12月02日
英国のガス・電力市場局(Ofgem、エネルギー部門の規制機関)は11月24日、2023年1月から3カ月間のエネルギー価格上限(energy price cap)の引き上げを発表した。標準的な家庭のガス・電気使用量の場合、年間の価格の上限は4,279ポンド(約70万6,035円、1ポンド=約165円)で、2022年8月に発表された現行の3,549ポンドから約2割の上昇(添付資料図参照)。一方、現在適用されている「エネルギー価格保証」により、標準的な家庭のガス・電気使用量の場合、支払額が年間2,500ポンドに制限されるため、家庭における実質的な負担は変わらない(2022年9月9日記事参照)。「エネルギー価格保証」は発表当初、2022年10月以降2年間の適用とされていたが、財政負担の懸念から見直され、11月17日に発表された秋期経済計画において現行水準での適用は2023年3月までとされた。2023年4月以降の1年間は引き下げ幅が縮小となり、標準的な家庭の場合、年間の支払額は3,000ポンドまでとなる予定(2022年11月18日記事参照)。
次回の見直しは、2023年4~6月分に適用される価格上限で、2023年2月27日に予定されている。
英国調査会社のコーンウォール・インサイトは、今回の上限価格引き上げを加味した「エネルギー価格保証」の18カ月間のコストは420億ポンドと予想。前述の見直し前の水準および期間に基づく政府負担は、企業向け支援(「光熱費救済スキーム」、2022年9月22日記事参照)分などを含めたエネルギー価格対策総額として、10月からの6カ月だけで600億ポンドとされていた。
Ofgem、消費者保護のための市場強化策を提案
また、Ofgemは11月25日、消費者保護を強化し、エネルギー小売事業者が市場の影響に対してよりレジリエントになるように設計する、新しい改革パッケージを発表した。この提案には、エネルギー小売事業者の自己資本比率規制の導入が含まれる。また、小売事業者に対し、再生可能エネルギー購入義務(注、Renewable Obligation)による収入を財務的に分離させることを求め、Ofgemが当該資金の利用を厳密に監視する。2023年1月3日までの意見公募を経て、2023年春から適用の予定。
(注)大規模な再生可能エネルギー発電プロジェクトに対する支援制度。小売事業者に対して、供給電力の一定割合を再生可能エネルギーにより発電されたものとすることを義務付ける。2017年3月31日をもって新規発電プロジェクトの申請は打ち切られた。ただし、打ち切り前に対象となっていた発電については、引き続き同制度が適用されている。
(菅野真)
(英国)
ビジネス短信 95568a2f9f214c0d