ロシアとウクライナの衝突、国際貨物列車の中欧班列にも影響
(中国、ロシア、ウクライナ)
上海発
2022年04月18日
中国江蘇省政府は4月11日、同省発で中国と欧州・アジア(中央アジア・ASEAN)を結ぶ国際貨物列車の運行本数が2022年第1四半期(1~3月)に前年同期比71.2%増の534本になったと発表した。3月に欧州路線(中欧班列)の運行本数が大幅に減少したものの、中央アジアとASEAN向け路線は増加したという。中欧班列の欧州路線の運行本数減少について、商務部国際貿易経済合作研究院国際市場研究所の白明副所長は、中欧班列がロシアとウクライナを通過するため、両国間の衝突は列車の運行に影響すると説明した(「新京報」4月13日)。
企業間でも、ロシアや戦闘地域を通過する陸路輸送の回避が顕著となっている。欧州最大の貨物輸送代理会社の1つで、スイスに本社を置くキューネ・アンド・ナーゲルは、4月15日時点でロシアを通過する欧州発着の鉄道貨物を受け付けていない。ドイツの国際物流企業DHLも3月9日、ロシアとベラルーシ向けのサービス提供の停止を発表している。デンマーク物流大手DSVも、4月15日時点で医療物資や人道支援を除き、ウクライナ内およびロシアとベラルーシ発着の全ての輸送モードでサービスを停止している。
中国交通運輸協会国際班列コンサルティングサービスセンターの楊傑氏は、中欧班列の輸送線路は、現時点で物理的には寸断されておらず、貨物の安全も確保できるものの、貨物輸送大手企業が自発的または政府の圧力により、中欧班列の業務を一時停止すると発表している点が課題になっていると指摘。また「中国の貨物輸出のほとんどはFOB(本船渡し条件、注)を採用しているため、上海発の中欧班列の貨物のうち、少なくとも50%は欧州側の貨物代行会社がイニシアチブを取っている」と説明。これらの企業がロシアを回避するルートを採用する傾向が強くなれば、中欧班列の貨物量は著しく減少すると述べた(「網易」3月25日)。
(注)FOBでは、貨物輸送の運賃と保険料は輸入者が負担する。FOB、CFR、CIFは本来、海上輸送と内陸水路輸送への適用に限定されるが、長年の取引習慣により、コンテナ輸送にもかかわらず、依然としてFOB、CFR、CIFを使用するケースが多い。
(尹世花)
(中国、ロシア、ウクライナ)
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