ブラック ジャック コツ
(ドイツ)
デュッセルドルフ発
2022年11月11日
ドイツ連邦政府は11月2日、天然ガスと地域熱供給の12月の緊急支援に関連する法律の改正案を発表した。対象となる家庭や企業の12月のガス料金の支払い免除や、エネルギー供給や熱供給会社への支援を予定する。ガスと地域熱供給に関する専門家委員会が10月に政府に提出した報告書を踏まえた内容だ。
政府は今回の緊急支援の背景として、ロシアのウクライナ侵攻が緊迫していたエネルギー市場の状況を劇的に悪化させ、2022年の極端な物価高騰を招く要因となったことを挙げた。消費者や企業は、ガス価格やエネルギー源をガスに頼る地域熱供給が高コストになることを想定し続けなければならず、増加する負担を早急に軽減する支援が必要だった。また、緊急支援は社会の結束や経済の安定にも重要だとした。加えて、緊急支援は、2023年初春に導入する予定のガス価格上限設定までの橋渡し措置という位置づけでもあるとした。
具体的な支援の内容として、(1)ガスに関しては、年間ガス消費量150万キロワット時(kWh)以下の中小企業は12月のガス料金の支払いを免除する。商業発電や熱源として利用するガスは対象外。一般家庭と賃貸住宅のオーナーはガス消費量にかかわらず、支払いを免除する。ただし、使用したガスの料金全額を免除するのではなく、免除金額は、2022年9月時点の年間消費量を基に予測する1カ月分の消費量と、12月のガス価格に基づいて算出される。(2)地域熱供給に関しては、契約構造がガスと異なるため、免除する金額は9月に支払った金額の1.2倍の金額となる。免除対象者はガスと同じ。
今回の緊急支援により、約1,500社のエネルギー・地域熱供給事業者が影響を受ける。これらの事業者は主要取引銀行を通じて、ドイツ復興金融公庫(KfW)に対して、顧客が支払いを免除されて事業者に支払わなかった12月のガス料金や地域熱供給料金相当の金額を請求できる。
政府は12月の緊急支援に89億ユーロ拠出する見込み。同改正案は11月10日に連邦議会(下院)、11日に連邦参議院(上院)を通過する見込みで、成立後は速やかに公布、施行の予定だ。
なお、12月の緊急支援は負担軽減の第1歩で、政府は今後、ガスと電力価格の上限設定の導入に向けて取り組む予定。政府は改正案の閣議決定と同日に、ガスと電気の上限価格設定や住宅手当の改革などについて連邦政府と州政府が合意した内容も発表している。
(ベアナデット・マイヤー、作山直樹)
(ドイツ)
ビジネス短信 9f535bf969b262d7