エネルギー価格上限、10月から大幅引き上げ
(英国、ロシア)
ロンドン発
2022年08月29日
英国のガス・電力市場局(Ofgem、エネルギー部門の規制機関)は8月26日、10月1日から3カ月間のエネルギー価格上限(energy price cap)を引き上げることを発表した。標準的な家庭のガス・電気使用量の場合、年間の価格の上限は3,549ポンド(約57万1,389円、1ポンド=約161円)で、2月に発表された現行の1,971ポンドから8割増の大幅な上昇となった(添付資料図参照)。
Ofgemは、今回の引き上げについて、世界的な新型コロナウイルス関連規制の撤廃が進む中でガス卸売価格が上昇し、さらにロシアによる欧州へのガス供給削減により、記録的なレベルまで急騰した状況を反映したものと説明した。10月から適用される価格上限の内訳のうち7割を占める2,491ポンドがエネルギー卸価格で、4~9月期の同価格(1,077ポンド)の2.3倍となる。
なお、Ofgemは上限見直しの頻度を、半期ごとから四半期に1度に変更すること(2022年5月17日記事参照)を8月4日に決定しており、次回変更は2023年の1月に行われる。
英国調査会社のコーンウォール・インサイトは既に次回以降の価格上限予測を発表し、次回(2023年1~3月期)は5,386ポンド、2023年4~6月期は6,616ポンドと見込み、エネルギー危機は収まる兆しを見せていないとする。Ofgemは、市場が不安定なままだとして、次回の価格上限予測は現時点で提供していない。
政府は、生活費の上昇に対する家計支援策として、2022年10月から2023年3月までの光熱費を400ポンド割り引くことを決定している(英政府、ブラック ジャック ゲーム)。8月11日には、ボリス・ジョンソン首相、ナディム・ザハウィ財務相、クワシ・クワルテング・ビジネス・エネルギー・産業戦略(BEIS)相、主要エネルギー会社の業界団体がエネルギー価格上昇への対応に関する会合を開催し、消費者支援について政府と企業が緊密に連携することで合意した。
インフレが急速に進み、国民生活を圧迫する中、今回のエネルギー価格上限の引き上げはさらなる打撃となる。Ofgemのジョナサン・ブリ―リー最高責任者は、今回の発表に際し「新首相は10月と2023年以降の価格上昇の影響に対処するため、さらなる行動をおこす必要がある」と述べている。エネルギー企業の業界団体エナジーUKも、8月18日に首相宛ての書簡で消費者支援策の拡大を求めていた。
(菅野真)
(英国、ロシア)
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