イタリア経済開発相がイスラエル訪問、エネルギー問題など協議

(イスラエル、イタリア、欧州、ロシア、エジプト)

テルアビブ発

2022年05月06日

イスラエル経済産業省は4月24日、イタリアのジャンカルロ・ジョルジェッティ経済開発相がイスラエルを訪問し、オルナ・バルビバイ経済産業相と会談したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。また、イタリア経済開発省はツイッター(4月25日付)で、ジョルジェッティ大臣がカリン・エルハラル・エネルギー相とも会談したと発表した。

いずれの会談でも、再生可能エネルギーやグリーンエネルギーについて協議したもようだ。イタリアは「EastMed」(東地中海で産出される天然ガスを欧州市場に送るパイプラインの建設計画、注)で、パイプラインの欧州大陸側の受け入れ国の1つと目されてきた経緯があることから、同計画の今後の方策についても話し合われた可能性がある。

テルアビブ大学のジョシュア・クラスナ研究員は、同ガス問題に関するレポート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの中で、これまで天然ガス輸入の多くをロシアに依存してきた欧州のガス危機の代替策について言及している。「EastMed」には当初から技術的・経済的実現性に疑問が呈されてきたが、欧州委員会がフィージビリティースタディーに資金拠出をするとともに、2021年11月に「EastMed」をプロジェクトリストに加えており、出資の最終判断が2022年中にもなされると報告している。

パイプラインと並んで、欧州へのガス供給方法として検討されるLNG(液化天然ガス)船での輸送については、東地中海地域で現時点で唯一稼働しているエジプトの液化プラントの活用のほか、イスラエル鉱区の1つリバイアサンでは浮体式洋上LNGプラント(FLNG)の導入も検討されているという。エジプトのLNG輸出能力は、現状でEUの輸入需要の5%に匹敵するが、エジプトが輸出能力を達成できるかどうかは、変動する国内需要に左右されずに十分な余剰を維持できるかにかかっている。

国際エネルギー機関(IEA)のレポート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、EUはロシアから2021年に1日当たり平均約3億8,000万立方メートルの天然ガスを輸入している。欧州のこのような大きなガス需要に対して、前述のテルアビブ大学のレポートでは、最も楽観的なシナリオでも、エジプト産にイスラエル産を加えた輸出能力が短期的には約100億立方メートルあまりにとどまるなど、地中海のガスのみでは不足する可能性を指摘しているため、「EastMed」計画の今後の影響についても注視が必要だ。

(注)「EastMed」については、以下の記事も参照。2020年1月にギリシャ、イスラエル、キプロスの3カ国がパイプライン建設に関する政府間協定を締結(ギリシャ、イスラエル、キプロスの3カ国、ガスパイプラブラック)、2021年1月にイスラエル政府が東地中海ガスフォーラム(EMGF)への加盟を正式に閣議決定(2021年1月6日記事参照)、2022年1月に米国がこれまでの方針を転換し、ガスパイプライン建設への支援を凍結()、2022年3月にガス供給ルートについてトルコがイスラエルに接近した可能性(2022年3月14日記事参照)など。

(吉田暢)

(イスラエル、イタリア、欧州、ロシア、エジプト)

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