ロンドン市、10月25日から「超低排出ゾーン」を拡大
(英国)
ロンドン発
2021年10月29日
ロンドン市は10月25日、「超低排出ゾーン (注1)」に指定される区域拡大の適用を開始した。2019年4月に導入された当初の超低排出ゾーン()から東西南北に拡大し、カムデンタウンやハックニー、ケンジントン、ペッカム、アクトンなどの地域が新たに含まれることになった。ロンドン市によれば、対象区域は従前の18倍となり、区域内外の大気汚染の改善につながるとしている。
ロンドン市は、今回の超低排出ゾーンの拡大と2021年3月に導入された大型車に対するロンドン全域の低排出ゾーンの指定により、2021年に道路輸送に伴い排出される窒素酸化物の30%削減が期待できるとしている。また今回の拡大は、気候変動に対応し、ロンドン市で2030年までに炭素純排出ゼロを達成するという目標への重要な一歩となるとした。
なお、ロンドン交通局(TfL)は、超低排出ゾーンを通じて得た通行料はバスや地下鉄、自転車専用道路などロンドン市内の交通網の改善や、市内の大気汚染の改善などの用途に再投資するとしている。
ロンドン市内のディーゼル車は近年で大きく減少
ロンドン市によれば、超低排出ゾーン導入に向けた動きが始まった2017年2月時点では排ガス基準を満たす自動車の割合はわずか39%だったが、現在は87%まで上昇したとしている。また、クリーンシティーズキャンペーン(注2)が10月22日に発表した調査結果によると、ロンドンでは超低排出ゾーン導入後の2017年から2020年にかけてディーゼル車が12万7,500台減少したとされている。これは、ロンドンを除く地域の6倍超のペースとしている。
英国全体でみても、ディーゼル車の登録台数は減少している。英国自動車製造者販売者協会(SMMT)によると、2021年1~9月の新車登録台数を燃料別にみると、ディーゼル車が前年同期比43.8%減、ガソリン車が13.7%減になったのに対して、バッテリー式電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、ハイブリッド車(HEV)はそれぞれ87.9%増、2.0倍、43.6%増となった。
(注1)市内中心部に乗り入れる、一定の排ガス規制を満たしていない車両に対して通行料の支払い義務を課す区域。
(注2)2030年までの都市交通のゼロエミッション化を推進する、欧州のNGOなどによる団体。
(オステンドルフ・七海・ありさ)
(英国)
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