ロンドン市が「超低排出ゾーン」を市内全域に拡大へ
(英国)
ロンドン発
2022年12月14日
ロンドン市は11月25日、「超低排出ゾーン(ULEZ)」(注)に指定する区域を市内全域に拡大することを発表した。新区域の適用は2023年8月29日に開始する予定。
ULEZは、2019年4月にロンドン市内中心部を対象に、大気汚染を軽減して市民の健康を改善することを目的として導入し()、2021年10月に中心部に加えて一部の区域にも適用していた(2021年10月29日記事参照)。ロンドン市は今回の措置により、次のような効果を期待している。
- 既存の措置で、道路輸送に伴って排出される窒素酸化物(NOx)の30%削減に加え、ロンドン郊外の自動車からのNOx排出量を約10%削減
- ロンドン郊外の自動車が排出するPM2.5を約16%削減し、ロンドン全体で1.5%削減
- ULEZの基準を満たさない普通車は1日当たり16万台から4万6,000台に、バンは4万2,000台から2万6,000台にそれぞれ減少
- ロンドン全域への拡大で、自動車による移動が14万6,000回減少し、温室効果ガスやその他の汚染物質を直接的に削減
ロンドン市は併せて、障害者や低所得者、慈善団体、零細企業(従業員10人以下)を対象に、車両の交換や改良を支援する新たな「スクラップスキーム」の実施を発表した。このスキームは以前にも実施しており、1万5,200台以上の車両の切り替えに貢献したとしている。個人向けについては、自動車の廃棄で2,000ポンド(約33万8,000円、1ポンド=約169円)、バイクの廃棄で1,000ポンド、車いす仕様車の廃棄または改良で5,000ポンドを助成する。バスとトラムの年間無料パスを提供するオプションもある。慈善団体や零細企業の場合は、バンの廃棄で5,000ポンド、ミニバスの廃棄で7,000ポンド、バンまたはミニバスの改良で5,000ポンド、バンの廃棄や電気自動車(EV)への切り替えで7,500ポンド、ミニバスの廃棄やEVへの切り替えで9,500ポンドを助成する。
これらの支援に1億1,000万ポンドを拠出する。支援スキームは2023年1月30日から実施し、全ての資金が割り当てられるまで申請可能としている。
(注)一定の排ガス規制を満たしていない車両に対して通行料の支払い義務を課す区域。
(菅野真)
(英国)
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