英政府、北アイルランド向け移送に関する緩和措置延長の文書公表
(英国、EU)
ロンドン発
2021年03月09日
英国政府は3月3日から4日にかけ、グレートブリテン島から北アイルランド向け緩和措置の延長に言及する各種文書を公表した。同措置の延長をめぐっては、2月24日に開催されたEU・英合同委員会の第6回会合の主要議題とされながら結論が出ず、継続検討となる見込みだったが、3日に英国のブランドン・ルイス北アイルランド担当相が緩和措置の延長を表明していた(欧州委、ブラック ジャック)。
ルイス担当相の表明では、食品移送の手続き緩和措置の期限を2021年4月1日から2021年9月30日まで延長するとしていたが、英国環境・食糧・農村地域省(DEFRA)は同日付でスーパーマーケットやそのサプライヤー向けの緩和措置の更新内容の詳細を公表した。更新内容には、緩和措置の期限を少なくとも9月30日まで延長するほか、10月1日以降、バイオセキュリティー(植物・動物検疫)保護の観点から、食品に関する各種証明要件を段階的に導入することが提案されている(注)。
DEFRAはグレートブリテン島から北アイルランドへの食品流通を効率的に行うための新たな電子システムを開発中(2021年2月26日記事参照)だが、英国の食品関係団体は、食品移送手続きの緩和措置が延長されない場合、当該システム導入のために十分な時間が確保できず、実効性がないものになるとしていた。
さらに、英国歳入関税庁(HMRC)は3月4日、グレートブリテン島と北アイルランド間での小包送付に関するガイダンスを更新し、現行の緩和措置を延長する一時措置を採用するとした。現行の緩和措置では、3月31日までを期限として、宅配事業者や郵便事業会社ロイヤル・メールなどがグレートブリテン島から北アイルランドに移送する宅配貨物の税関申告の繰延を可能としている(関連ブラック ジャック ルール)が、今回実施される一時措置では、事業者同士の小包送付に関しては9月30日まで、事業者と消費者間あるいは消費者同士の小包送付に関してはさらなるガイダンスが公表された日から6カ月間の繰延を認めるとしている。
緩和措置をめぐっては、ルイス担当相の声明を受け、欧州委員会のマレシュ・シェフチョビチ(EU機構関係・将来予測担当)が3日に批判する声明を発表、同日夜に英国のデイビッド・フロスト内閣府担当相と電話会談を行っていたが、ルイス担当相の声明どおり、宅配貨物の移動についてもガイダンスが発表されたかたちだ。
(注)(1)生鮮肉製品への衛生証明書添付、(2)乳製品への衛生証明書添付、植栽用植物・種子への植物検疫証明書添付、ワインへのVI-1証明書の添付、(3)野菜・果物への植物検疫証明書および同等宣誓書添付、ペットフードへの衛生証明書添付、(4)混合食品への衛生証明書添付や魚介類への漁獲証明書などその他の証明要件の4段階を取るとしている。
(飯田俊平)
(英国、EU)
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