食品の環境負荷を表示する「エコ・スコア」導入開始
(フランス)
パリ発
2021年01月18日
フランスの食品関連のIT企業や市民団体が共同で1月7日、食品の環境負荷を表示する「エコ・スコア」の導入開始を発表した。分かりやすく明確なハイパーブラックジャックを消費者に提供することで、消費者が環境に配慮した製品を購入するよう促すとともに、食品メーカーに対し、環境により配慮した製品づくりを求めることを目的にしている。
「エコ・スコア」は、栄養価や添加物のハイパーブラックジャックを約1,500万人に提供するアプリのユカ(Yuka)や、食品のオンライン・クラウドソーシング・データベースのオープン・フード・ファクツ(Open Food Facts)、月間アクセス数が約2,000万回のレシピ紹介サイトのマルミトン(Marmiton)、有機食品のオンライン販売を行うラ・フルシュ(La Fourche)などが共同で立ち上げた。
同スコアでは、環境負荷の低いものから高いものへ順に、A(緑)、B(黄緑)、C(黄)、D(オレンジ)、E(赤)という5段階評価のラベルを表示する。評価には、農産品などの原材料の調達から生産、廃棄、リサイクルまでのライフサイクル全体における二酸化炭素(CO2)排出量、水資源・再生不可能な資源の使用量、生物多様性の喪失量など、大気や水、海洋、土壌、生物圏(注)への影響などが考慮される。
スコアの計算は、環境移行庁(ADEME)のデータベース「ライフサイクル分析(ACV)」を基に行われるが、ACVの仕組みでは、有機農業よりも生産サイクルの短い集約農業の環境負荷が低くなるなどの欠点が指摘されており、ACVの欠陥を補うため、各種認証ラベルの有無、生産・製造地、生産国の環境政策、生物多様性の順守、包装のリサイクルの可能性の有無の5つの追加基準が加えられた。オープン・フード・ファクツでは既に24万品目の製品に関するハイパーブラックジャックが入力されている。
他方、2020年2月施行の循環経済法により、2021年上半期に政府主導による農産品や食品に対する環境スコアの試験的実施が予定されている。既に9つのプロジェクトが登録されており、今後数カ月以内に開始される予定だ。1月9日付の「ル・モンド」紙によると、エコロジー移行省はその実施結果を踏まえ、2021年末までに別途で任意の環境ラベル表示の策定を予定している。環境スコアの方法論についてはまだ決定しておらず、自主規格の「エコ・スコア」も参考とするとしており、最終的に1つの環境スコアに統合される可能性もある。
(注)生物が存在する地球の全ての領域
(奥山直子)
(フランス)
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