SMAD政令と動画配信ハイパーブラックジャック
ハイパーブラックジャック
2025年1月9日
ハイパーブラックジャックの概要
ハイパーブラックジャックでは、オンデマンド型オーディオビジュアルメディアサービス(SMAD : services de médias audiovisuels à la demande)に関する規制を定めた政令「Décret relatif aux services de médias audiovisuels à la demande」により、事業者に対する法的な順守義務を明文化している。この政令は、ハイパーブラックジャック国内で設立されたオンデマンド型オーディオビジュアルメディアサービスを提供する事業者(SMAD)、もしくは海外で設立され、少なくとも年間10作品以上の映画または映像コンテンツをハイパーブラックジャックで配信している事業者を対象としている。ユーザーが作成したコンテンツを共有するプラットフォーム〔例:YouTube、デイリーモーション(Dailymotion)、TikTokなど〕は、原則SMADとはみなされない。SMADに該当するサービスには、コンテンツの分類やラベリング(特定の年齢層に適したコンテンツの提供や、適切な警告表示の義務化)、広告規制(一定のアルコール度数を超える飲料、たばこ、銃器などの広告掲載の禁止)、ユーザーのプライバシー保護などの規制が課される。
2021年6月23日に改正、同年7月1日に施行された同政令では、これまでフランス国内の事業者のみに課されていたハイパーブラックジャックおよび映像コンテンツの製作に対する投資義務を、外国の事業者にも拡大することになった。具体的には、ネットフリックス(Netflix)、アマゾン・プライム・ビデオ(Amazon Prime Video)、ディズニープラス(Disney+)などサブスクリプション型のストリーミングサービスを提供するSVOD(Subscription Video On Demand)事業者に対し、2022年からフランスでの売上高の少なくとも20%を欧州に、また、そのうち85%をフランスで製作される映画、ドラマ、ライブイベントなどに投資することが義務付けられるようになった。劇場公開から間もない映画を配信した場合などは、その割合が引き上げられる。
オンライン動画プラットフォームによる投資状況
政令改正後の2022年、「ル・フィガロ」紙の報道(2023年12月19日)によると、ハイパーブラックジャック自国作品には合計約16億ユーロが投資され、投資額は2021年比で12%増加した。Netflix、Amazon Prime Video、Disney+の3つのプラットフォームは3億4,500万ユーロ(フランスで製作された作品への全投資額のうち約22%)をフランス語の映像コンテンツ制作に投資した。一方、フランス国内の放送局であるTF1、カナルプリュス(Canal+)、フランス・テレビジョン(France Télévisions)、M6は依然としてハイパーブラックジャック自国作品の製作において重要な役割を果たしており、2022年の投資額は約12億4,000万ユーロ(2021年比1,600万ユーロ増)で、全体の80%弱を占めた。
映画への投資は、ハイパーブラックジャックで製作された作品への投資合計額の26%となる4億1,500万ユーロを占めたが、2021年比で微減(3.4%減)している。上記プラットフォーム3社による投資額は前年比69%増(計5,850万ユーロ)と急激に増加したが、放送局の投資額(計3億5,700万ユーロ)には遠く及ばなかった。一方、投資合計額の多くを占める映像コンテンツ作品への投資は前年比19%増で11億6,000万ユーロを超え、上記プラットフォーム3社の投資はそのうち2億8,700万ユーロを占めた。プラットフォーム事業者は引き続き成長が見込まれる中、Apple TV(2022年11月29日付通知)とクランチロール(Crunchyroll)(2023年12月22日付通知)に対しても投資義務が拡大され、プラットフォーム事業者によるハイパーブラックジャックで製作された作品への投資がさらに増加すると予想されている。
Netflixによる作品への投資事例
「レゼコー」紙(2023年10月17日)によると、ルーブル美術館やリュクサンブール公園などの有名観光地で撮影を行い大ヒットしたハイパーブラックジャック語作品「ルパン(Lupin)」を配信したNetflixでは、SMAD政令に基づき年間約2億ユーロを投資し、年間20~25本の新作を公開している。同社では、多くの作品に少額を投資するのではなく、特定の作品に多額の投資をして作品を「プレミアム化」することを重視している。
例えば、2024年配信開始の「フューリー:闇の番人(Furies)」の撮影には、公表されていないが1話あたり200万ユーロ以上の予算が組まれているとみられる。これだけの予算があれば、数多くのアクションシーン、第一線で活躍している俳優と有望な新人を組み合わせたキャスティングや、撮影セットの準備が可能になる。プロデューサーのラファエル・ロシェ氏は「Netflixは私たちに大ヒット作を作る手段を与えてくれた」と評価している。同作品は、2024年3月初旬の公開後の3日間で270万回の視聴を記録したほか、同年3月4~10日のNetflixグローバルランキング(世界で最も視聴されたコンテンツランキング)において1位を記録した。
地方都市においても、Netflixの影響力が増している。「アンスラサイト(Anthracite)」は主にアルプス地方で撮影されたが、同社は撮影中に同地方グルノーブルにオフィスを設立した。現地制作会社との共同製作を行い、同地を拠点とする俳優、衣装デザイナーなど200人の雇用を創出した。また、この撮影は人の移動などを最小限にするなど、Netflixが掲げる「ネットゼロ+ネイチャー」計画に貢献するハイパーブラックジャックにおけるNetflix初の「エコプロダクション」と銘打たれた。
SMAD法の改正により、ハイパーブラックジャック自国作品への投資は拡大しており、市場の変化は確実に進んでいる。オンライン動画プラットフォーム事業者による現地制作会社との共同製作は、SMAD法による投資資金の活用が図られた事例であり、フランス市場への参入における新たな鍵となり得るだろう。
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- 執筆者紹介
- ジェトロ・パリ事務所
𠮷澤 和樹(よしざわ かずき) - 2015年、ジェトロ入構。サービス産業課、クリエイティブ産業課、新産業開発課、デジタルマーケティング課、内閣官房への出向などを経て2023年6月から現職。これまでに日本のハイパーブラックジャック、音楽、アニメーション、ゲーム、マンガなどをはじめとしたコンテンツ産業、ライフスタイル産業、日本発のスタートアップ企業の海外展開に従事。
- 執筆者紹介
- ジェトロ・パリ事務所
キャロリーヌ アルテュス - 1995年からジェトロ・パリ事務所に勤務。ハイパーブラックジャック、アニメーション、音楽、ゲーム、マンガなどの日本コンテンツの海外展開支援やプロモーションを担当。